ヒトツノギモン
「事故死だってよ。武島のやつ。
何も言えない」
「えっ?」
「警察の話じゃ光創公園の池で、
溺死したらしい。もちろん、
水死体で発見されたそうだ。
自殺の線もあるそうだが、
警察は事故死と公表したらしい。」
ナゼ?
上智にはその疑問しか残らなかった。
周りには先輩達が来はじめていた。
キャプテンも来ていたが、
場を察してくれたのか、
他の先輩達を連れて走りに行った。
よってゆっくり考え、話し合う事が出来た。
あの冷静な武島が事故死?
ありえない。
かと言って自殺?
ありえない。と思う
もし、自殺ならば武島はまだ、
「あいつ」の面影を追っている事になる。
「で、どっちだと思う?。上智?」
「分からない。本当に何も分からないんだ。」
「そうか...悪かった。朝からこんな重い話をして。俺は滝澤と打ってくる。ゆっくり考えろ。」
と立花と滝澤はその場を去った。
考えやすい環境を作り出してくれたのかもしれない。
気が付けば朝日が顔を出していた。
雲一つなく、快晴だった。
授業は全て、自習となった。
警察が関係者に話を聞きたいそうだ。
学校側も必死だ。
責任問題に関わって来るからだ。
きっとテニス部は全員話を聞かれるだろう。
そう思った瞬間先生が、テニス部は、多目的室に来い。と言った。
俺と立花と滝澤は多目的室に足を向けた。
多目的室には既に川口と中井が姿を見せていた。
顔がこわばっている。
緊張しているからだろうか。
連絡があったのは夜七時近くだった。
立花が不思議な点があるから会えないか?と言ってきたのだ。
俺自身、少し疑問があったので
近くの公園で会う事にした。
公園に足を向けたが、
外はもう真っ暗だった。
「おう。来たきた。」
そこにはもう立花がいた。
「ごめんな遅くなって」
「誘ったのこっちだし気にしてない。」
そう言うと立花は、疑問の点について話始めた。
「一番の疑問は武島が、溺れる様な
ミスを犯すのだろうか?
それに自殺にしても不審な点がある。
近くに自殺の名所の崖があるのに、
なぜ、光創公園の池なんだ?」
立花は一度深呼吸し、口を閉じた。
次に上智が口を開いた。
「同じ考えだ。この件は、俺は他殺だと思っている。」
「他殺?」
「ああ。どう考えても武島が、あんな場所で、事故死するなどのミスを犯すとは思えない。
誰か武島が、心許す奴の犯行だと見ている。」
上智の推理に武島は曖昧に首を傾げる。
「俺が、思うに血族、学校の中の奴。
それか、最悪テニス部の誰かだ。」
「えっ!...」
立花が、今度は違うとばかりに声をあげた。
「いや、そんな事はない。テニス部がそんな事をするなんて...
そうだ、あかの他人だよ。
俺らが、知らなくて
武島が知ってる誰かだよ!」
「いや、あいつに知り合いはいない。
あいつは他人に全く興味がないからな」
「...」
その後会話は途切れ、
結局解散となった。
だが、上智の頭の中には疑問しか残らなかった。
空を見上げると流れ星が、一つ
夜空をよぎっていった。




