転生
初投稿ということで至らない点が多々あるとは思いますが、生暖かい眼差しで読んで下さいm(_ _)m
異世界と呼ばれる世界がある。
それは科学の発達した世界であれば、魔法が発達した世界、
あるいはその両方が発達した世界など、様々だ。
それらの世界は常に隣り合いしかし、基本的に交わることは無い。
だが、神の悪戯か世界の意志か、ごく希にそれらの世界が繋がる時がある。
その時、その繋がりに巻き込まれて別の世界に移動させられてしまう人がいる。
世界は元は居なかった存在を受け入れる為にその存在の精神はそのままに、肉体をその世界に適応した新たな存在として生まれ変わらせる。
この世界に来てから六年が経った。いや、正確には”生まれてから”だな。俺こと立花刀夜は、知らぬ間に転生を果たしていた。死にかけていた訳でもなく、神の声が聞こえた訳でもない。本当に唐突に転生していた。目を覚ました時に見たのは、見知らぬ異様に高い天井だった。訳が分からず辺りを見回そうにも、首がすわっていない為に動けない。そこでようやく自分が赤ん坊になっていることに気づき、取り乱した。と言っても、言葉は話せないから泣き叫ぶ格好になったのだけど。流石に六年も経てば慣れてくるが、時々”向こう”の事を思い出して淋しくなるのは、どうしようもない。
☆★☆
「98、99、100ッ!!ふぅ~、終わった。
だいぶ感覚が戻ってきたかな」
遠くから七の鐘が聞こえてくるのとほぼ同時に構えを解く。
朝日が差し込む中、体が自由に動かせるようになった1年前からの日課になっている、100本素振りを終えたところだ。
"むこう"では1000本が普通だったけど、今の体で1000本素振りなんかやったら体を壊してしまう。
元居た世界の俺の家、立花家は戦国時代から続く由緒ある家柄で、先祖である立花道雪は有名だろう。
俺は祖父からその由緒正しい立花流武術の稽古を付けてもらっていた。
一応、祖父から免許皆伝を言い渡されるほどの腕前ではあったけど、流石に5年のブランクは腕を鈍らせるのに十分過ぎたようだ。
別に、必ずやらなくちゃいけないって訳じゃないけど、これからどうなるか分からないし、自分を守れるぐらいの力は有ってもいい、と思って素振りを毎朝・晩やっている。
落ち着くのもあるけどね。
お陰で大分感覚が取り戻せて、技もいくつかは出来るようになった。
元通りとまではいかないけど、そこはじっくりと取り戻していこうと思う。
しっかり鍛えていけば、そこら辺に居るようなチンピラ―居るか分からないけど―には遅れを取りはしないはずだ。
最初は、突然素振りを始めた俺に両親共に驚いていたが、「これも先祖の血なのか」と言って好きにさせてくれている。
母さんは何やら嬉しそうな様子だったが、父さんは家業より剣術の方に興味を示した事に、少し残念そうだった。
「坊ちゃま」
素振りが終わったところで、タイミング良くタオルが差し出される。
見ると、我が家のメイド長、ツァリさんがいた。
「ツァリさん、ありがとうございます」
「恐れ入ります、トーヤ様」
振っていた木刀をツァリさんに渡し、タオルで掻いた汗を拭く。
この国で素振りに使うのは普通、木剣らしい。
最初の内は木剣で素振りをしていたけど、どうにも手に馴染まなくて結局、木刀を用意してもらった。
けど、木刀を素振りに使うのはイルクツク同盟内のクルツ国だけだったらしく、ツァリさんに理由を聞かれて少し焦った。
何となく、と言って無理やり通したけど、納得はしてないだろうなぁ。
「朝食の用意が出来ております。着替え終わりましたら、食堂へお越しください」
「分かりました」
立ち去る俺に一礼するツァリさん。今では普通に接しているが、最初の内は慣れないくすぐったさがあった。
そうそう、ツァリさんなんだけどこの人、無茶苦茶強い。
俺が素振りを始めると同時に、両親から指導役としてツァリさんが任命された。
始めは見ているだけだったのが、模擬戦に始まり、対人戦の指導、今では魔法の指導もして貰っている。
そして、何回も模擬戦をしているのだが、一回も勝てない。今の全力で挑んでいるが、軽くあしらわれてしまう。
それも、無手で。
一体どうしてこんな人がメイドをしているのかと考えてしまうほどの腕前だった。
魔法の才能も一流らしくて、基礎の基礎から丁寧に教えて貰っている。
これもまた1年前から毎日、午後に―午前はツァリさんの仕事があるから出来ない―父さんが取り寄せてくれた魔法書を読んで、分からないところをツァリさんに教えてもらっている。
週2・3日―この世界でも一年は365日、一週間は7日で週末は休みだった―の割合でそれまでに学んだ魔法の実習と改善を繰り返している。
どうやら俺には魔法の才能が有る、と言うか有りすぎるらしく、下級魔法なら八系統全てを修得済みだ。
中級魔法なら風・雷・火・氷、上級魔法なら雷系統の一部を修得している。
雷系統が得意ということに立花家との微妙な繋がりを感じていたりする。
この事をツァリさんから聞かされた両親はまた驚き、「この子といると毎日が驚きだな」と言われた。
ツァリさん曰く、一般的な6才児は下級魔法で何かしら1系統使えるのが普通で、才能が有ると言われる子供でも中級魔法を1系統でも使えればいい方。
中級魔法を4系統、ましてや1系統ながらも上級魔法を使えるのは、奇跡みたいなものなんだそうだ。
これに関しては俺の精神が異世界の物である、ということしか原因が見当たらない。
いや、もしかしたらこの体が本当に凄い力を秘めていただけ、ということもあるけど・・・
ともかく、俺は両親やメイド長を驚かせる勢いで成長していた。
☆★☆
二階にある自室で汗まみれの稽古着を着替えて、食堂へ向かう。
「やあ、おはようトーヤ」
「おはよう、トーヤ。今朝も頑張ってたみたいね」
「おはようございます。父さん。母さん」
そこには既にこの世界での両親が朝食を食べていた。
俺も席に着くと、シャサさんがすぐに朝食を運んでくる。これも慣れるまでは自分でやろうとして、しばしばシャサさんを困らせた。今でも、ふとした拍子に厨房へ足が向くことがある。
「いただきます」
ハムとレタスと玉子がサンドされたサンドイッチを手に取り頬張る。
「シャサさん!今日もとてもおいしいです!」
「うふふ、ありがとうございます、トーヤ様」
ハインツ家の毎日の食事は、メイドのシャサさんが作ってくれている。
レシピさえ分かれば作れない物は無い、とまで豪語するメイドさんだ。
この世界の食材は殆どが前居た世界と同じだ。たまに知らないものがあるけど、それも意外とおいしい。
シャサさんの腕もあるんだろうけど。
「トーヤ、今日はどうするんだ?」
朝食を食べ終えた父さんが聞いてくる。
「今日もレオンとエリスと鍛練です」
「そうか、身体には気をつけろ。二人によろしく言っておいてくれ」
「はい、分かりました」
レオンとエリスはこの世界での友だちだ。
レオンの父親はスベイルーン王家の近衛隊隊長で、エリスの母親は宮廷魔導師筆頭だ。
立場的によく顔を合わす二人で、家族ぐるみでの付き合いがあったらしい。
だから、二人は幼馴染ってやつになる。
二人との出会いは半年ぐらい前で、レオンと他の子供との喧嘩に仲裁に入ったのがキッカケだ。
後でエリスに聞いたけど、喧嘩の原因は誰も思い出せないぐらい些細なことだったらしい。
ま、子供なんてそんなもんだろ。外見は俺も同じ子供だけど。
それからというもの、レオンとエリスとはよく遊んでいる。
遊びと言ってもレオンとは剣術の鍛錬、エリスとは魔法の鍛練をしている。
これが中々、レオンは鍛錬狂で日に日に強くなってきて、
エリスも母親譲りの魔法能力で、俺の苦手な水系統の魔法だと圧倒される事もある。
全く、退屈しない奴らだ。
「ごちそうさまでした」
「トーヤ、気を付けて行ってらっしゃい」
「行ってきます!母さん、父さん!」
「お気を付けて」
ツァリさんから木刀を受け取り、家を出る。
最近は、早朝稽古→レオン・エリスとの鍛錬→ツァリさんとの魔法練習→晩稽古のサイクルが出来あがっている。
何だかんだと言って充実してる毎日だ。
☆★☆
「行ったか、いい友人を持ったようだなトーヤは」
「そうね。ねえ、ギル」
「なんだい、マリー?」
「私はあの子を、アブソリュートに入れても良いと思うんだけど」
「アブソリュート学院、か。そうだなトーヤの魔法と剣術の才能は目を瞠るものがある。
そうは思わないか、ツァリ?」
「そうですね。坊ちゃまの才能には正直驚いております。
聊か才能がありすぎかもしれませんが、そこは坊ちゃまも心得ている様ですので、アブソリュート入学の件につきましては賛成で御座います」
「ね、ギル。子供の才能を伸ばすのは親の務めでしょ?」
「ふむ・・・そうだな。ツァリ、トーヤに使えるような得物を用意してくれないか?
全て、お前に任せる。金に糸目はつけなくていい。最終的な判断はトーヤに任せるが、一応アブソリュートへの入学手続きも頼む」
「かしこまりました」
ツァリはそう言うと一礼し、屋敷の奥にむかった。
マリアンナはギルバートの発言に一瞬、目を見開くとすぐに微笑みを浮かべた。
商い事ではお金に対して人一倍厳しい夫が、金に糸目はつけなくていい、と言いきったのだ。
多少驚くも、やはり息子は可愛いものらしい。
「あの子がこれからどう成長するのか楽しみね」
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