『異物混入』
(注)以下は新聞記事の抜粋です。しかし、この記事は通常とは異なる経緯で入手したものであり、既に該当箇所のみが切り抜かれた状態でした。事実と異なる可能性を否定できないため、特定可能な情報は伏せ字にしております。
[●●新聞朝刊 202●/●/●●より抜粋]
先日、●●は自社が製造・販売している○○○○に異物が混入したことを認めた。問題が発覚したのは2週間前であり、何故ここまで発表が遅れたかの理由について、代表の●●氏は『事実確認に想定以上の時間を要してしまったため』だと説明した。
●●が製造・販売する○○○○は●●の人気商品であり、多くのファンを持つ○○○○の売り上げに影響を及ぼす可能性がある。
今回、混入したのは未調理の皮膚組織と爪であり、何故そのようなものが混入したかについては現在調査中であるとしている。
一部、消費者からは『食品の一部に火がしっかり入っておらず、生っぽかった』との声もある。
SNS上では他にも、『処理があまい』や『普段から加工が満足にされていないことがあった』などの声も寄せられている。
今後の対応が焦点となっていきそうだ。
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(注)以下は入手した該当製品の広告です。こちらも余計な風評被害を避けるため、一部を伏せて載せています。
[○○○○の販売広告]
お待たせしました。
今回、我が社から○○○○を販売いたします。
中々入手が難しく、安定供給に至るまで、かなりの時間を要してしまいました。
本当にお待たせしました。
我が社の○○○○は全て厳選したものを使用しております。我が社の専門家が一つ一つ丁寧に検査をし、合格となったもののみを取り扱っております。その誕生からどのような過程を経て、成長したか、何を見てきたか。その全てを調査したものとなっております。
調理は機械を使わず、全て手作業で行なっております。こちらも職人が一つ一つ丁寧に鮮度の良いものを切り取り、その日のうちに調理をします。
他製品には量産化のため、臭いのきつい製品も存在しますが、我が社は腐らせることなく、また、臭いのしない工夫をしております。
味付けは4種類からお選びいただけます。塩、特製ソース、醤油、餡子です。硬さの調節も個別に承っております。ご遠慮なくお申し付けください。こちらは3段階からお選びいただけます。
個数は4個入り、8個入り、12個入りがございます。全て個別包装をし、専用の箱に詰めさせていただきますので、その分お値段が高くなってしまいます。ご了承ください。
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「すみませーん。警察のものですけど」
警官の一人が戸を叩く。
「おかしいな、休みか?」
「誰かいませんか? 捜索令状が出てるんですけど」
別の警官が辺りを見渡す。
「やっぱりいないか。すみません、立ち会いお願いします」
警官は後ろを振り返って、付き添いで来ていた一人の男に頭を下げる。
「はい」
「えーっと。代表の●●氏に立ち会いを求めて連絡しましたが、応答がありません。よって刑事訴訟法第二百二十二条一項、第百十四条二項に基づき、臨席いただいている○○市役所の佐藤さんを立会人とします」
警官はボイスレコーダーに向かって声を発して、録音する。別の警官は佐藤に小声で何かを囁く。彼は黙って頷いている。
「佐藤さん、この令状が見えますね? こちらを読み上げるので正しいか確認してください」
「はい」
緊張した面持ちで彼は何度も頷く。
警官の方は淡々とした様子でその中身を読み上げ、確認を取った。
「では、関係者の立会人がいませんので、佐藤さんは我々が捜査を適切に行なっているかを見届けてください」
「分かりました」
「はい、じゃあ中に入ります。入口が施錠され、通常の方法での解錠が不可能であるため、鍵を破壊して中に侵入します。佐藤さん、壊すところをしっかりと見ててください」
工具を持った別の警官が扉の前に立つと作業を始め、すぐに鍵が破壊される。
「えーっと午後3時42分。開錠しましたので、立ち入ります。佐藤さん、後に続いてください」
6人の警官が中に入り、その後ろを佐藤が続く。警官らは内部を見ても平然としていた。
「じゃあ、入口付近と事務室から確認します」
皆が黙々と作業を始める。
「あー、やっぱり埃かぶってますね。何年も放置されてるみたいです」
「落ちてる紙もただのコピー用紙です」
「警部、もう見るものは無さそうです。全てそれっぽく置いてあるだけです」
「では、工場内に侵入する」
先導した警官が奥に向かう。他の警官らも黙ってその後に従った。工場に続く扉を開けて、ぞろぞろと中に入っていく。
「あー、やっぱり」
警官の一人が声を上げた。
「……じゃあ仕事に取り掛かりますか」
他の警官らは面倒くさそうにしながらも、工場全体に広がって捜索を始めた。
「異臭はしない、と。流石にこの場で殺してはないだろうし当然か」
警官の一人はメモを取る。
「警部、普通に骨が置いてあるんですが、どうしましょうか?」
少し離れたところから一人が尋ねる。
「まあ、回収しておけ。写真は撮っておけよ」
「警部。リストを発見しました。こちらです」
一人の警官が分厚いファイルを持ってくると、それを警部に差し出した。
彼はそれをパラパラとめくる。
中身を流し読みして、軽く頷いた。
「最低限はクリアだ。まあ、一通り見回って、被害者が残ってないか確認しよう」
「警部、血液タンクが見つかりました。どうやら血液型に関係なく、混ぜていたようです」
「……分かった」
「やはり製品のサンプルは見つかりませんね。これでは証拠として不十分かと」
「そうだな。少なくとも殺人の罪で送りたいが、難しいな。現場が分からん」
突然、何かが倒れる音がした。
打撃音と共に悲鳴が聞こえる。
それに気がついた数人の警官がその場にゆっくりと近寄っていく。
ちょうど、一人の警官が誰かを押さえつけているところだった。近くにはその人物が所持していたと思われる包丁が落ちている。
二人の警官が加勢に入った。
彼らは叫び続けるその人物をいとも簡単に拘束すると、警部の前まで連れてきた。
「誰かわかるか?」
本人が全く話を聞かないため、両脇に立ってその人物を取り押さえている警官に尋ねる。
「分かりません。ただ被害者の可能性が高いと思われます」
その女性はなおも叫び続けていた。
あまりにもうるさいので、警官の一人がタオルを持ってきて、彼女の口に押し込んだ。
「こいつは処置をされていると思うか? 片目がまともに開いてないし可能性はありそうだ」
「されてるんじゃないですかね。保護する甲斐はありそうです」
「……な、何をしてるんですか?」
警部が振り向くと、佐藤が立っている。
彼は身を震わせながら、青い顔をして警部の方を見つめていた。
警部は首を傾げた。
「何って、捜査ですよ? 別に違法なことはしてませんよ」
「……被害者ですよね、彼女。何で拘束して、猿ぐつわまで噛ませてるんですか?」
佐藤はうっすら汗を浮かべている。
「佐藤さぁん。ダメじゃないですかあ」
「え?」
「どうしてぇ、逃げようとしてるんですー?」
佐藤はハッと我に返った。
いつのまにか後退りしていた。
「あのですねぇ。佐藤さぁん。立会人がいないとダメなんですよぉ。ちゃんと見ないとー」
ゆっくりと警部は彼に近づいてくる。
被害者の女性は必死に身を捩り、何かを彼に訴えていた。それを二人の警官が側から押さえつけている。
「ひっ……」
佐藤は回れ右をして駆け出した。
女性が必死に助けを呼んでいるのを彼は無視して、走り出した。
「あれぇ? 佐藤さーん」
警部はおぼつかない足取りで歩き出す。
「おーい。探してきて」
警部の掛け声と共に残った警官が佐藤を追って走り出した。
それから警部はぐるんと首を回転させて、女性の方に視点を合わせる。頭が関節に収まらずに左右に揺れている。
そして、笑った。
「○○○○ってご存知ですかぁ?」




