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無断でチチに触れるとは!②

◇7月


サークル終わり、飲み会の帰りにカズヤに呼び出された。


なんだろう?珍しいな。


なんかもじもじしている。


酔っ払っているのか、顔がすごく赤い。


「俺、美咲のこと好きなんだけど。付き合わない?」


「えっ……」


どうしよう。


大学に入学してからすでに三回、男子から交際を申し込まれている。


ただ、よく知らない人と付き合うのは嫌だったし、そもそも全員LINEで『付き合おう』と言ってきた時点で考慮の余地すらなかった。


結果的には断って良かったと思う。


だってお断りのLINEをしたら、


『冗談冗談(笑)ちょっと言ってみただけ(笑)』


だなんて、誤魔化したりするしょーもない男達だったもの。


サブレやアフロ先輩だったらこんなダサいことはしないと思う。


正面から向き合って大きな声で「好きだ!」とか言いそうな気がする。


ちょっと想像して笑ってしまった。


「ふふっ」


「?」


おっと。今はカズヤだった。


んー。悪くない。出会ってから二ヶ月でだいぶカズヤも変わった気がする。


最初はなんか嫌なやつって感じだったけど、今は一緒に刃◯やワン◯ースの話で盛り上がれるし、時々キモいことはあるけど、基本的には良いやつだと思う。


それに、直接告白できるってだけで、これまでの三人よりは全然まともな気がする。


んんんーーー。


試しに付き合ってみるのも悪くないかな?


何より直接「好き」って言われたのは初めてだから、ちょっと嬉しかった。


「……じゃあ、付き合ってみる?」


別にカズヤのことは好きではないし、候補にも入っていなかった。


でも、付き合ってみたら好きになるとかいう話も聞いたことがある。


恋愛なんて、案外そんなものなのかもしれない。


そんなふうに思ってた。


◇一週間後


夏休みに入る直前の土曜日。


私にとっては彼氏との初デート。


カズヤにとっても初めての彼女とのデートってことになるみたい。


カズヤはこの一週間毎日LINEをしてきた。


『おはよう』


『お昼は何食べた?』


『おやすみ♪』


本当にくだらない話ばかりだ。


サークルのある日でも、ない日でも、会う日も会わない日も、とにかく即レス即対応だ。


私もLINEやメールはすぐに返す方だから、くだらない話が永遠に続いていたけど、別に嫌じゃなかった。


恋人っぽくてちょっと楽しかった。


今日はお互い、恋人との初デート。


デートと言っても、サークル終わりに二人で恵比寿の焼肉屋。


それだけ。


『みんなといつも一緒に高田馬場』でやっていることが『二人で恵比寿』になればデートなの。


へんよね。


でもそれも大学生っぽくって良いの。


お店はカズヤが予約してくれた。


なんか肉にウニが乗ってたりするみたい。


お友達と行く焼肉は、いつも四千円で食べ放題とかのお店だから、楽しみだった。


高級な感じの木でできた扉を横にスライドして入店。


「本日コースでご予約の中村様ですね。ご案内いたします」


そうだった。カズヤは中村だった。


しっかりと区切られた個室。


二人用にしては大きなテーブル。


煙がかからないようにカバーのついた小物入れ。


ホスピタリティがすごい。


「なんかすごいお店だね!」


「お、おお!なかなか良い感じだな!」


「来たことあるの?」


「まぁ、何回かね」


絶対嘘だ。


「すごいね!私はこんなの初めてだよ♪」


「そう?今日は俺が焼くから美咲ちゃんは食べることに集中して!」


「えー!私も焼いてみたい♪」


なんて話をしていると、料理が来た。


キムチとナムルの盛り合わせ。


前菜だ。


コースの焼肉はお肉がすぐに来ないみたい。


でも、すぐに次が来た。


ユッケ。


真ん中の卵黄を割ってかき混ぜて食べるみたい。


初めて食べる生肉は……。


なにこれ!美味しい!


「カズヤ!ユッケ美味しいね♪」


「うまい!」


「生肉なんて初めて食べたよ!」


「ハハハ!俺もだよ!サブレなんていつも『ビールと肉と女は生がいい!』って言ってるのにな」


「意味わからなかったけど、ちょっと分かっちゃったかもね♪」


「ビールと肉はわかった。あとは女だな……」


「キモいよカズヤ!」


「なんで!?」


サブレが言うとキモくないけど、カズヤが言うとキモいのはなぜだろう。


やっぱり顔かな。


でも、面白いし、ユッケは美味しかった。


くだらない話をしていると、いよいよ焼くタイプのお肉が出てきた。


まずはタンの盛り合わせ。


そして……。


なんかすごい綺麗な赤身のお肉だ。


トンビ、ランプ、シンシン、イチボ。


?


お肉って……。


タン、ロース、カルビ、ハラミ、ホルモンじゃないの?


よくわからない。


とりあえず焼くのはタンからかな?


トングがない。


……。


カズヤが自分の使っているお箸を使って赤身肉を焼こうとしている。


すると店員が。


「お客様。お肉はこちらで焼かせていただきますよ」


「あ、はい」


カズヤ、このお店に来たことある設定はどこに行ったのかな?


ちょっと笑いそうになってしまったけど、気づかないふりをしてあげる。


「お店の人が焼いてくれるってすごいね!こんなの初めて!」


「でしょ!いい焼肉屋は店が焼いてくれるんだよ!」


男は「こんなの初めて!」って言っておけばとりあえず喜ぶってお姉ちゃんが言ってた。


本当だったみたい。


それからは店員さんがお肉を良い焼き加減で焼いてくれた。


良いお肉だからかもしれないけど、焼肉って、焼き方で全然違うんだね。


ランプとかシンシンっていうのは、お肉の部位らしい。


同じ赤身でも部位によって柔らかさとか味が違うのは楽しい。


私はトンビが好きだったな。


インスタでよく見るウニの乗ったお肉は、別に一緒にしなくても良いんじゃないかなと思った。


……。


私も後でインスタに載せよーっと♪


良い焼肉屋で映える(ばえる)お肉を食べたらインスタに挙げるのはもはや義務なのだー。


お会計は……。


私がトイレに行っている間に、カズヤが済ませてくれるなんてことはなかったけど、全然良い。


私はお酒を飲まなかった。カズヤはビールを一杯だけ。


それでも会計は二万を超えていた。


いつも行く焼肉なら二、三回は行けると思う。


でも、お食事の満足度はこちらの方が圧倒的だ。


迷いどころだねー。


なんてことを考えていたら、カズヤが少し多く払ってくれた。


私は七千円のお支払いで良いみたい。


以前、カズヤが「大学デビューのために貯金をほとんど使い果たした」と言っているのを聞いたことがある。


それで入学当初だけは小学生用の運動靴だったみたい……。


今はちょっとかっこいい革靴を履いてる。


『デートは男が全額奢ってくれるのが当たり前』


『ちょっと請求されてでかい顔されるくらいだったら全部出したほうがマシ』


『そもそも女に財布出させる男とか無いわ』


みたいなこと言う人がいるみたいだけど、私にはまだよくわからなかった。


お金が無い中で、少しでもカッコつけようとして頑張っている姿は、普通に素敵だと思う。


ありがと!カズヤ♪


楽しい初デートだった。


良いお肉は美味しかったし、頑張ってカッコつけて空回りしているカズヤには好感が持てた。


「お肉美味しかったねー!」


「うまかった!ウニが乗ってる肉って初めて食ったけど、美味かったな」


ウニ肉、カズヤは気に入ってたらしい。


そして、すでに何回か行ったことがある設定を忘れているみたい。


「美味しかったねー!」


「あの、すき焼き風みたいな卵黄つけて食べる薄くてでかい肉もうまかった!」


「あれも美味しかったし、全部美味しかったね♪予約ありがとうカズヤ♪」


駅が見えてきた。


この交差点を渡れば、あとは電車に乗って帰るだけ。


私は新宿方面行きだけど、カズヤは品川方面だから、駅でバイバイかな。


後で画像を整理してインスタに上げなきゃ……。


突然後ろから抱きつかれた。


「美咲……愛してるぜ」


……。


無理だわ。





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