10話 「何か」と言葉
9話の続き。
今までの話の整理をする回。
「何か」のコピー能力は目で見ることで模倣ができることが判明した。
そのコピーする眼が常に働いているとすれば、いろいろな姿に変身できるのではないか?
リョーはそう頭を巡らせていた。
ご飯を食べ終わり、 俺は自室のベッドに寝っ転がっていつも通りスマホを見ていた。
「何か」は今日のご飯を思い返しているのだろうか、頭をゆらゆらさせて目をつむっている。
「何か」のことが気にならないのかと思うかもしれないが、実際あまり気にならないものである。
それに、「何か」と仲良く遊んだり楽しむことができるかといわれると、そうとは言い難い。
実のところ、「何か」は喋らずモノに触れられずで一緒に何かをすることはほとんどできない。
深夜徘徊や散歩のような、相手との関わりに重きを置いていないことならまだ可能かもしれないが...
わざわざ暗い道を歩こうとは思わないし、歩くことなら通学路で充分である。
どうせならノノや小田谷のところに行けばいいと思うのだが、「何か」はイマジナリーフレンド、つまり自分だけが見える何かなのである。
そんな都合よく人に転送などはできない。
そんなわけで今はスマホで漫画を読んでいるわけだが、どうやら「何か」も漫画が気になるらしい。
ひょっこりとベットのほうに顔を出してきた。
今読んでいるのは、美大生の話。主人公は美大に合格して、キャンパス内でいろいろなことを発見しながら自分の絵を探している。大学はそんなに自分と向き合うことができるのか、この主人公ぐらいひたむきに生きるべきか、いろいろなことを考えさせられる漫画だ。
「何か」を見る。面白そうに眺めてはいるが、よく分かっちゃいないだろう。しかし、絶対に興味を持っている。そう顔が言っているように見えた。
周りで自分の好きなことを好きなように語り合える友達はほとんどいない。
もし、「何か」が文字を理解できる力があるなら、いつまでも語り合える友達がここに誕生するのではないか...?
こんなことを思いついてしまったら、さっきから考えていたことを試してみたくなる。
言語を覚えるならまずは文字に触れることが第一だ。
リュックサックから高校の現代文のテキストを取り出して渡す...のではなく、直接自分で開いて「何か」に見せた。
ちょうど開いたページは森鴎外の「舞姫」。
初めての日本語としてはちょっと難しいかもしれないが...まあ、とりあえず読んでみてもらおう。
「何か」と俺はベッドに座り、教科書のほうに顔を動かした。
目で文字を追っているが、途中から斜め読みが始まった。
斜め読みが始まると、あっという間に目線が左端にまで達して、すぐに終了の眼差しを送ってきた。
なんだか誇っている顔をしている。
「・・・」
俺はなんとかほめているようなそぶりを見せてゆっくりと下を向いた。
俺にはわかる。これは読み終わったのではない。目が文字を素通りしているだけだと。
この読み方を知っている。
そう、眠い時に起こる英文の読み方だ。
文章を読んだ気にさせる魔法の読み方。
これでは全くと言っていいほど身についていない。
やはりこのやり方は野蛮すぎていた...これでわかるのなら、言語を勉強するのにここまで苦労あしないはずだ。
・・・「何か」には自分で学んでもらうしかない。それまでは、ただ見守ることが大切なんだろうなと、親でもない一高校生がそんなことを考えてまたベッドに横になった。
それからは、「何か」は学校に一緒に行ってはクラスで一番真面目に授業を受けている、ように見えた。
休み時間中も「何か」は自分から離れすぎない、机3つ分くらいの距離をうろうろしては耳を傾けていた。
そして、教科書を読みながら黒板の字を何度も見返していた。
ノノやハマダへの近況報告も順調だった。
そして、みんな口をそろえて「何か」は子供のようだと言っていた。やはり考えていることは自分も含めて同じようだった。
しかし、言葉を発さないところは少し気がかりだった。
知識を吸収しているのであれば、それをアウトプットすることも必要なのではないかと考えていたが、今だそのような素振りを見せない。
イマジナリーフレンドなのだから、そもそもとして話すかどうかすら分からない。
まあ、気長に待ってみるとするか。
そろそろインプットにうってつけの行事が行われることだし。
そのあとでまた考えてみよう。
最近、授業を横目に「何か」を眺めていることが増えた。
それを見て、自分も少し真面目に授業を受けるようになったのもなんだか不思議な気分だ。
そして、「何か」を見ていると必ず入ってくる視線がある。
小田谷は俺を見て面白そうに、しかし時々遠くの何かを見ているような気がして、その目をなかなか合わせられずにいた。
ハマダは今日も授業中にぐっすりと寝ている。このままだと11月の期末考査は俺の圧勝かもしれないと心の中でつぶやく。
今日も少しずつ、東京に吹く風がひんやりとする寒さをつれてやってきた。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
突然ですが、聞きたいことがあります。
「何か」の顔の設定を変更しようと思っています。
具体的に言うと、「何か」の顔を見知らぬ女の子という設定に変えようと考えています。
自分そっくり顔の人と初対面でここまで親密にかかわれるでしょうか。
もし、自分の顔をもつもう一人の誰かがいたら気味悪く思うはずです、多分。
自分の中で、主人公は自己肯定感が低い人だと思っています。
そうすると、今までの内容だとかなり違和感があるように感じます。
ここまで仲良くはできないはずです。
この回では今までの設定で書いていますが。
設定を変更することでより話は面白くなると思っています。
近日、文章を少しずつ変更しようと考えています。
1から作り直すことも考えていますが、まだ最終的な決断はまだできていません。
何も聞かずに変えてしまうのは今まで読んでくださった方に失礼だと思い、後書きでこのように書きました。
何か思う部分があれば書いていただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。m(__)m




