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1話 「何か」

初投稿です。イマジナリーフレンドを題材にしています。

純文学が好きな方におすすめです。

 「何か」を初めて見たのは自室のベッドで寝っ転がりながら、高校生にしては大金であろう5000円をつぎ込んで回し続けても目星のものを渡してくれない10連ガチャへの文句を、手の平に収まるちっちゃな電子板にぶつけていた時のことだった。

スマホに合わせていたピントの向こうでなにかがうごめいているのに気付いた。


突然現れたようには見えず、しかしずっといたという感じでもない。

音もなく、においもなく、ただ椅子や机のように当たり前のようにそこにあるというような、そんな親近感があった。


その「何か」に目を向けるも、はっきりとした輪郭はなかった。

しかし、そこにいるという気配はしっかりと感じられた。大きく息を吸ってそちらに吹きかけるが、全く動じない。

家の中で埃とチリ以外に思い当たる節がなかったが、そのどちらでもないことは何となく感づいていた。


 日付が11月の1日になるまであと5分、睡魔のせいで脳がぼんやりしているだけなのかと思った。

目を凝らして改めてよく見つめる。しかし、「何か」は消えることはなく、タンスや掃除機と同じように、静かにたたずんでいた。


 どうすればいいか、脳内をしばらく巡らせ続け、わからないものには触れて確かめるのが一番手っ取り早いと結論付けると、ようやくベットから起き上がった。

それからゆっくりとその透明な「何か」に手を近づけた。むこうは一向に動く気配がない。

一方的な興味で触れようとすることに多少の戸惑いはあったが、「何か」が反応するかさえ怪しかったし、一時の躊躇で好奇心が収まることもなかった。


手を近づけるにつれ、だんだんと心臓の鼓動が上がるのが分かった。

不確かなものに触れる喜びを久しぶりに感じたからなのか。それともこれから何かが起きるかもしれないという不安と興奮からきているのか。

そんなことを考えているうちに手が触れていた。



「ーーーーーーーー!!」



突然「何か」は全身を震わせたかと思うと、自室の中で自分から一番距離のある、ドアの側面にはりつくように身を寄せた。


「何か」に触れていたと気づいたのは、「何か」が驚いたからで、手の感触として脳からの情報は何もなかった。


ドアに身を張り付け動かなくなったかと思うと、すぐに鋭い視線のようなものを「何か」から感じた。

そのとき、それまであった透明な気配に色がついたような気がした。

言葉としては受け取れなかったが、まるで赤ちゃんのような、表現できない感情を泣き声として伝えるような、そんな切実なにかを伝えるように見えた。

それもあって、こちらはあまり驚くことはなく、むしろ何かを心配するような気持ちになった。


 しばらく見つめた末、小さな子供にそっと尋ねるような優しい声で質問をした。


「おまえは誰だ?」


そう聞いたとき、微かに「何か」動いたのが分かった。しかし、それ以外の反応はなかった。ドアの近くに「何か」がいるという気配だけが伝わってきて、その気配は不思議と居心地の良さを感じさせた。それからまたゆっくりと時間が過ぎ、やがて何もしてこないことが分かると、だんだんと眠気が襲ってきた。

朝起きてまだ「何か」が消えずに部屋にいたのなら、その時また考えよう。そう考えて毛布を肩までかけて横になった。

「何か」は寒さを感じないのだろうか、そんな疑問も横において眠りについた。


 7時20分、スマホのアラームが鳴った。カーテンを少し開けて、陽を浴び、少しずつ脳を目覚めさせる。

少しずつ身体を起こし、大きなあくびをしたとき、「何か」のことを思い出す。

そういえば「何か」はまだこの部屋にいるのか?しかし、見まわした限りいる様子はなかった。


やはりあれは大きな埃だったのだ。今頃リビングのソファーの下でゆっくり眠っているのだろう。

母には念入りに家を掃除するよう話しておこう、そんなことを考えているとベッドの死角で見えなかったところにパジャマが落ちているのに気が付いた。しかも、服に腕が通っているではないか。


また寝ぼけているだけか...?しかし、今パジャマを着ているし、腕も2つ肩からついている。では、このパジャマと腕は何なのか。

おそるおそるパジャマが落ちている足元に目を向けた。



そこにはもう一人の自分が眠っていた。



「ーーーーーーーー!!」



 ベッドからそっとはなれ、自室の中で一番自分から距離のある、ドアの側面にはりつくように身を寄せてもう一人の自分をじっと見つめた。

まさか、あれは「何か」なのか...?でもなぜあの姿に...?疑問が滝のように流れ出てくる。それを何とか食い止めて、深呼吸した。

・・・そうだ、朝ご飯を食べよう。食べ終わった後でまだ眠っていたらその時また考えよう。

「何か」も朝ごはんは食べるのだろうか、そんな疑問も今は捨てて、足早と1階のリビングへ向かうのだった。



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