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18_王国の希望

大量の書類に囲まれながら、寝食を忘れ執務に追われている。レバン平原の戦いで、父や兄上、主要な貴族を失って、王国は完全に機能不全に陥った。


私がその穴埋めのための人事を決め、適所に配置し終わったのが先週、配置した人員が満足いく仕事をしているか確認しつつ、軍の再建案をオランド卿に渡したのが、昨日、今週は国内貴族、商会、外国等と交渉をしなければならない。


私が後・・・3人は欲しいわね。勿論、戦場に文官が行ったわけではないけど、決定を下す立場の人間が軒並み亡くなったのが痛い。すべての裁可を私が判断する必要が出てしまった。


執務室の部屋がノックされた。


「入って」


オランド卿が入ってきた。彼は先王の補佐を務めていた優秀な男で、齢60を超えているのに、衰えを全く感じられない肉体をしている。勿論、髪が白髪になっていたり、見た目上の変化はあるのだけど、覇気は衰えていない。彼に再建案を渡したのは昨日の朝、読み終わって意見具信にきたのなら、脅威の速さね。あまり老骨に鞭を打つような事はしたくないけど、王国には時間が無かった。


「何の様かしら?」


「姫様、少しは休まれなければ」


書類に半分埋まっている鏡で自分を見た。酷い顔だった。目の下に酷いクマがが出来ているし、明らかに体調が悪そうに見える。仕方ないレバン平原の戦いの報が王都に届いてから、殆ど寝ていないのだから。


「私が休めば、王国が滅びるわ、心配しないで・・・と言っても難しいかもしれなけれど、今はやるしかないの・・・。それで再建案は見たかしら?」


「軍としては、現状、考えられる最高の出来かと思います」


「軍としては?」


「収穫前のこの時期に2万の新規徴兵をすれば収穫に影響が出て大量の餓死者が出てしまいます」


「わかってるわ。でも、進行してくるゴブリンを向かい討たなければいけないわ」


レバン平原では2万の兵を失った。今王国で戦える兵は2万しかいない。ゴブリン軍と戦うには最低でも4万の兵が欲しい・・・。


「また、決戦ですか・・・」


「5、3、2」


「王国の地域による穀物の生産割合ですかな?南部5割、中部3割、北部2割」


「流石、爺、復帰ボケはしてないようね。ゴブリンを迎撃せず中央を奪われれば、王国北部でしか収穫が出来ない。王国300万は昨年の2割の収穫で冬を越すことになる」


「どちらにせよ、餓死者が出る。であれば、決戦しゴブリンを南に追い返す方に賭けると」


「そうよ、それに勝算が全く無いわけでも無いの」


「厳しい戦いになると思われますが」


「厳しいわよ。でも、レバン平原の戦いのおかげで、勝算が見えたの」


「姫様が兄王子を褒めるとは」


レバン平原の戦いには父王も参加していたけど、父は文治に優れていたけど、戦争に向かない平時の王だった。そのため戦の指揮は長男のガーランドが代行した。私と兄の不仲は周知の事実で、ここ5年会話もしていない。そんな私がレバンの戦いを褒めたのだ、爺が驚くのもしょうがない。


「合腹だけど・・・ね。兄上は騎兵を率いて敵の中央に突撃したそうよ」


「・・・定石では無いですな」


普通、騎兵は両翼に置き、その機動力で敵の側面や後方を脅かすものだ。騎兵で中央突破を狙い突撃するなど、旧帝国以前の愚かな蛮族の戦い方だ。


「最初は、馬鹿だ馬鹿だと思っていたけど、ここまでか?と思ったけど、敵の構成を見れば悪く無い攻撃だとわかったわ」


「構成?」


「ゴルグの部族は中央に配置されていたの」


「倒した1万は殆どゴルグの部族だったと言う事ですか!?」


「そうよ。2万の犠牲を払ったけれど、意味はあったわ」


「ゴルグの部族は南の山脈を超えた後は、斥候によれば2万弱のはず、ゴルグは連れてきた子飼の兵の半分をレバンで失ったのですな」


「ゴブリンは部族の連合軍よ。1番強い部族が王として率いる、先の戦いの後、ゴルグが南に下がった理由がわからなかったけど、子飼いの兵を半分失って求心力を落としたのも理由の一つだと思うわ」


はぁ~、ゴルグは南で帝国とも戦っていると聞く、そちらの方面で帝国がゴルグの軍に大勝利でもしていないかしら・・・。まー、そんな事を期待してもしょうがないのだけど。


「それについては、吉報が、レバン平原で兄君と共に中央突撃をした騎士の一騎が、敵の中央を突破して南を大きく迂回し先ほど王都に帰ってきました」


「獅子奮迅の武勇ね。誰かしら?」


「姫様もよくご存じのエレナです」


「彼女ね・・・」


「それでエレナが言うには、ガーランド王太子の最後を見たと」


「・・・・どんな最後だったの」


「若君はゴルドの胸に見事、槍を突き刺したのですが、惜しくも反撃で討死に・・・」


「ゴルドに手傷を負わせたのね。尊敬できる所なんて一つも無いと思っていたけど、立派な最後だったのね」


部屋に沈黙が流れた、私が兄の死を悲しむことになるなんてね。


「では、私は」


爺は部屋を退出した。さて、気を取り直して仕事に戻るとしましょうか、兄の死を無駄には出来ない。積まれた仕事の中からどれに取り掛かるか考える。エレナにも褒章を考えないといけなわね・・・。それに決戦に勝ったとしても・・・、多くの男手を失った戦後をどう乗り切るか・・・。


「ん?キール商会のメーメルから、謁見希望・・・」


彼女は利発で愛想が良く、話していると楽しい気分になる。気分転換に先に彼女と会おうかしら。ずっと激務続きなのだから、好ましい案件から取り掛かる位の贅沢は許されるだろう。

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