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1_メアとの出会い

気がついたら、浜辺に座りこんでいた。


どうして俺がここに座っているのかわからない。記憶に霧がかかったようだ。


ただ、あまりにも綺麗な快晴の空を眺めていると、そんなに悪い気分でも無いと思えたんだ。まー、現実逃避なんですけどね。


なぜ浜辺にいるのかわからないけど、生きていくにはまず、周りを探索するとしよう。そう思い立って俺は浜辺を歩き始めた。海岸線を歩き続ければ、いずれ港が見つかるか、漁をしている漁師が俺を見つけてくれるかもしれない。


何時間か、海沿いを歩くと、元の場所に戻って来てしまった。地面には俺が座っていた跡が残っている。どうやらここは、とても小さな島の様だった。次に島の中心に向かって歩き始めた。島の内側は木が生い茂った森になっていて、歩くとは枝が服に引っ掛かり、非常に歩きにくかった。足元も不整地で、気を付けなければすぐに転んでケガをしてしまいそうだった。


周囲の植生的に、ここは亜寒帯の地域だろうか?針葉樹が生い茂っていて、卒業旅行で、北海道旅行をした時の風景を思い出した。


「それにしても、喉が渇いたな・・・」


思わずそんな言葉が口を出た。もう炎天下を何時間も歩いている。季節は夏だろうか?東京の様な暑さじゃないが、それでも熱くかんじるのは、この島の湿度のせいかもしれない。水を飲まず歩き続けているので、そのうち熱中症になりそうだった。目を瞑り水の音がしないか、聞き耳を立てたが、水の音は聞こえてこなかった。


俺は、完全にインドアタイプで、誘われなければ外出しない、半分引きこもり人間だ。こういう時に、どう行動して良いかわからなかった。我ながら情けない。


そのまま何の当ても無く歩いていると、次第に日が暮れていった。


取り合えず、寝る場所を、急いで探さないとと焦っていると、遠くに光が見えてきた。俺は夏の虫の様に、光に近づいていくと、そこには古い遺跡があった。


全体としては、中南米の古代遺跡の跡地を連想させられる。中央には、異教の祭壇の様なものがあり、そこには灯りが灯っていた。どうやってあの石は輝いているんだ?夜光石みたいなものか?昼間蓄光した光が、今輝いているのだろうか。


もう周囲は暗くなっているし、灯りの前で、夜を明かそうと近づいた。遺跡の中央に近づくと、さっきまで五月蝿かった、虫や鳥の鳴き声が聞こえなくなっていった。そんなシーンとした遺跡に、俺は不気味な雰囲気を感じた。


祭壇の前に着くとそこには、2頭身の黒いマスコット人形の様なものが転がっていた。なんだこれはと気になって近づくと、それは動き出した。


俺は思わず息を呑み距離を取った。俺の後ずさる音に気付いたのか、それはこちらを向いたきた。


それの見た目は、全身が黒く、2足歩行で、目の位置だけ白く光っていた。観察していると、それは口の様な物を動かした。


「マセキ、クレ」


マセキ?真石?何だそれは?

俺はそんなものを持っていないと思うのだが・・・。


「すまない。それが何かわからない。多分持っていないと思う」


「オマエ、フク、ポッケ、アル」


マスコットにそう言われて、自分のポッケに手を入れると、確かに小さな紫色の石が入っていた。それを取り出してマスコットに見せる。


「これのことか?」


「ソウダ、クレ」


宝石の様にも見えるけど、現状、俺が持っていても仕方が無いし、あげずに、この生き物に噛み付かれるのも嫌なので、大人しく差し出してみた。


「ウマ」


マスコットは石を、口?に放り込むと、笑みを浮かべた。いや、そう見えるだけかもしれないが。


「お前は一体何なんだ?」


「オマエ、ナニ?」


まあ、そうだよな。人に誰それを聞く前に、自分が先に名乗るべきだな。でも、異教の祭壇の前の謎の存在に、本名を名乗るのも呪い的なものが怖かったので、ゲームで良く使っていたアカウント名で答えることにした。


「ルーシア、たぶん人間」


「ワレ、ナ、ウシナッタ、オマエ、キメロ」


俺がこのマスコットの名前を決めるのか?無茶振りだな・・・。悩むけど、実家で飼ってた猫の名前にでもしようか?覚えやすそうだし。


「メアでどうだ?」


「ヨイ」


そう言うとメアは森にテクテク歩いて行った。


俺は、メアの後ろ姿が見えなくなった後も、森の方をしばらく、ぼ~と眺めた後、祭壇の前に座り込んで寝ることにした。無人島を半日歩き回るなんて、慣れない運動で疲れていたせいか、硬い地面でも意外と眠ることが出来た。


日の出とともに目が覚めた。朝日とともに目が覚めるなんて、なんて健康的なんだ。眠気まなこを擦っていると、目の前に、水の入った木のコップと、ベリーが乗った木の皿が置いてあった。


「ノメ、クエ」


昨日出会ったメアが、食べ物を指差していた。メアは腕を持っていたんだな、、、。胴体からにょーんと伸びてきてびっくりした。この食事はマセキをあげたお礼で、用意してくれたのか?ありがたく食べ始めると、またメアは森の方に歩いていった。


「餌付けされている動物みたいな気分だな」


ベリーは甘酸っぱく非常に美味しかった。紫色だったし、毒があったらどうしようとも考えたが、空腹だったこともあり、結局食べた。食後しばらくたっても、お腹が壊れなかったので、大丈夫だったみたいだ。俺はまた、島の探索を再開した。


また日が暮れるまで歩いて遺跡に戻ってきた。するとメアが祭壇の前にいた。


「ふっ増えてる!?」


メアが3体いた。仲間だろうか?


「ココ、スワレ」


祭壇の前には、椅子とテーブルが用意されていた。俺が言われた通り大人しく座ると、メアが代わる代わる配膳を始めた。


木のコップには紫色の水、木の皿には、焼き魚、パンの様な物、野菜が載っていた。


「メア、これはどうしたんだ?」


「トッテ、ツクッタ」


それはそうなんだろうけど、その過程を知りたかったんだが、頂いている立場で、あれこれ詮索するのも何なので、大人しく用意されたものを食べ始めた。


塩味の効いた焼き魚は、油が乗っており、とても美味しかった。魚についてあまり詳しくないけど、旬の物なのかもしれない。汗をかいて失ったエネルギーが補充され、体が喜んでいるのを感じる。パンや野菜も普通に食べれた。紫色の飲み物は、昨日食べたベリーを絞ったジュースの様だった。


食事を終えたので、メアに確認したいことを聞いてみる。


「誰がメアなんだ?」


「ミンナ、ワタシダ」


「メアは、個々では無く集合意識的な生物なのか?」


「ソウダ」


「どうやって増えたんだ?」


「マセキ、クッタ」


「そうか、、、なぜ食事と家具を用意してくれたんだ?」


「イラナイノカ」


「いや非常に助かっているけど」


「オマエ、シュゾク、カチカン、ワカラナイ」


話し方は片言だけど、メアはかなり高度な知性を持った生き物の様だ。もしかしたら、この世界における人間的な立ち位置の生き物かも知れないなと思いながらさらに聞いた。


「マセキを1個あげただけで、ここまでしてくれるのか?」


「チガウ、マセキ、ヒトツデ、ココマデ、シナイ」


「では、なぜ」


「ジョウキョウ、シニカケ、イノチ、オンジン」


なるほど、あの時、メアは死にそうだったのか、それで助けた俺にここまでしてくれるのか。


「ちなみに、これっていつまでしてもらえるんだ?」


我ながら少しゲスな質問ではあるが、いつから自活しなきゃいけないのかわからないと、これからの計画の立てようもないので聞いたみた。


「エイエン」


「え?」


「セカイ、オワルマデ」


命の恩、激重だった。


いや、人間社会でもこうあるべきなのかもしれないが、メアが永遠に俺に恩返しをし続けてくれるのは、正直予想外だった。


まあ、俺とは違う生き物なのだから、そういう考え方もあるのかと納得した。取り敢えず俺は、命の危機からは解放された様だった。


メア達は、達って言うのもおかしいのかもしれないが、メア達は森にまた歩いて行った。


今日の探索の結果だが、昨日、浜辺を回った時は、内陸の方ばかり見ながら歩いて気づかなかったが、海の先に陸地が見えた。


そこが、ここと同じような島なのか、それとも大陸なのかわからないが、ひとまず希望が生まれた。もしかしたら、そこには人間が住む町があるかもしれない。まあ、恐ろしい怪物が跳梁跋扈する地獄かも知れがな。


明日は何をしようか?そんなことを考えながら眠りについた。


朝起きるとメアがいた。6体いた。


「ふっ増えてる!?」


「フエタ」


「1個の魔石でこんなに増えれるのか?」


「イヤ、マセキ、ミツケテ、クッタ」


それだけでは無かった、周りを見渡すと炉の様な物があったり、調理器具のある台所の様なものが増えていた。すさまじい文明の発展スピードだ・・・鉄とか一体どっから取って来たんだ?この小さな島にあるのか・・・?


「スワレ」


昨日の様に配膳が終わると、木の皿には、鳥肉のステーキ、野菜、パンが載っていた。ありがたく頂き出すと、メア達はまた森に歩き出した。


食後、また浜辺を歩いていると、あることに気づいた。海面を見下ろすと、知らない顔が反射しているのだ。


「えっ!?誰だ?」


2日間、この事に気づかなかった自分に驚いた。海面に映る顔は、無害そうな子供の顔だった。それに・・・よく考えると体も覚えている自分の体では無かった。


なんか、背が低い気がする。比べる対象が無いのでわからないが・・・。


こんなすぐ気づけそうな事に気づかないなんて、自分では冷静なつもりだったが、遭難して相当焦っていたのか。


「メアのおかげで、食事が毎日食べれるとわかって、安心して冷静になれたから気づけたのだろうか?」


俺は自嘲気味に笑いながら、そう独り言を呟いた。


日が暮れたので、また遺跡に戻った。


うん、増えてる12体もいる。ねずみ算式に増えてる。一体何体まで増えるんだ?


「また増えたな」


「フエタ、ケド、ゲンカイ」


「どうして?」


「シマ、セマイ」


なるほど、無制限に増えれるわけでは無いよな。たしか魔石が必要とも言ってたしな。


「所でそれは」


「タテタ」


そこには小さなログハウスが建っていた。メア達はテクテク歩きで、扉の前に行くとドアを開けた。中はビジホサイズ位の広さだったが、ベットと机と椅子があり、充分居住可能な環境だった。


壁に謎のオブジェが飾ってあるのは、少々、薄気味悪かったが、、、装飾はメアのセンスなのか?


「メア、凄いな!こんなものまで作れるなんて」


「メア、ユウシュウ」


ベットの上に腰掛けながら、陸地を見つけた事をメアに話そうかと思った。この小さな島で、この発展スピードだ。あの陸地があれば、より豊かな暮らしが、出来るかもしれない。


「メア、そう言えば、海の向こうに陸地が見えたんだ」


しばらくの間、沈黙があった。


「イキタイカ?」


「あー、まぁ、ここに1人でいるのも寂しいしな」


さらに長い沈黙があった。下心が見透かされた様な罰の悪さを感じた。


「ワカッタ、フネ、ツクル」


そういうとメアは外に出て行った。俺は暫く何かまずい事を言ったかもしれないと、考えながら眠りについた。


翌朝、目が覚めるとメアがベットの横で、俺を見下ろしていた。


「フネ、デキタ、イケルゾ」


「無理してないか?船なんて普通一晩で出来るものじゃないだろう?」


「オマエ、フツウ、シラナイ、メア、デキル」


そういうと、テクテク浜辺に歩き始めた。浜辺にはガレー船の様な物が浮いていた。


「凄いな!でも帆がないな」


「メア、コグ、ホ、フヨウ」


「ありがとう、俺も手伝おうか?」


「リズム、ダイジ、テツダイ、フヨウ」


そう言うと、メア達が船に乗り込み始めた。まだ出発するには、この島が名残惜しい気もしたが、この距離ならすぐ戻れるだろう、俺も乗り込んだ。


「クエ」


魚の揚げ物と野菜が挟まったパンを渡された。道中用に用意してくれたのか、至れり尽くせりだな。


俺たちは新天地に向かう。

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