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転生王女の復讐劇  作者: たま


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3/12

2話 隠された王家の魔法

数ある作品の中から本作をお選びいただき、ありがとうございます。

拙い部分もあるかと思いますが、最後までお楽しみいただければ嬉しいです。

2話 隠された王家の魔法

禁書庫の空気は、外とはまるで違っていた。

重い扉が閉まると、世界の音が遠ざかる。厚い石壁と魔法結界に囲まれたこの場所には、王宮の喧騒すら届かない。

並ぶ本はすべて古い。

中には数百年前のものもあるだろう。羊皮紙は黄ばみ、魔導書の装丁には複雑な魔法陣が刻まれている。

私は小さく息を吐いた。

「……すごい」

純粋な感想だった。

前世の私は、病院のベッドの上で本を読むことしか出来なかった。けれど、ここにあるのは物語ではない。

本物の魔法の知識だ。

「エリオット」

隣でカイト兄様が苦笑した。

「そんなに目を輝かせるとは思わなかった」

「だって、兄様。ここには普通の図書館にない本がたくさんあります」

「まあ、そうだな」

カイトは本棚を見上げながら言った。

「ここは王家の歴史と魔法を保管する場所だからな」

私はその言葉に引っかかった。

「王家の……魔法?」

カイトはうなずいた。

「この国の王族には、代々受け継がれる特殊な魔法がある」

私は静かに胸の奥を押さえた。

ズキン。

また小さな痛み。

まるで何かが反応しているようだった。

「例えば?」

カイトは少し考えてから答えた。

「簡単に言えば……血の魔法だ」

血。

王家の血統。

「王族の血には特別な魔力が宿っている。それを利用する魔法がいくつかある」

私は息を飲んだ。

つまり。

王族にしか使えない魔法。

「でも」

カイトは続けた。

「扱うのは難しい。普通は成人してから宮廷魔術師に教わる」

「じゃあ私はまだ使えませんね」

私はわざと残念そうに言った。

カイトは優しく笑った。

「そのうち覚えればいい」

――そのうち?

そんな悠長な時間はない。

私は十五歳で死ぬ予定なのだから。

「少し本を見てもいいですか?」

「もちろんだ。ただし――」

カイトは指を一本立てた。

「危険な魔導書には触るな」

私は素直にうなずいた。

「はい」

でも、心の中では思っていた。

一番危険な本を探すつもりだ。

カイトは近くの机に座り、別の本を読み始めた。どうやら私を見守るつもりらしい。

私は本棚の間をゆっくり歩いた。

魔導書の背表紙を順番に見ていく。

「元素魔法理論……召喚術……契約魔法……」

どれも興味深い。

でも、私が探しているのはこれじゃない。

胸の奥の痛みを頼りに、さらに奥へ進む。

すると。

一冊の本の前で、足が止まった。

黒い革表紙。

装飾はほとんどない。

ただ中央に小さく紋章が刻まれている。

王家の紋章。

私はそっと手を伸ばした。

触れた瞬間。

――ドクン。

胸が大きく脈打った。

「やっぱり」

私はその本を引き抜いた。

タイトルは古い文字で書かれている。

『王血魔法秘録』

心臓が早くなる。

ページを開く。

そこには、王族しか扱えない魔法の一覧が書かれていた。

結界魔法。

血統召喚。

王命魔術。

どれも強力なものばかりだ。

そして――

ページをめくった瞬間。

私の呼吸が止まった。

「……これ」

そこには一つの魔法が書かれていた。

『魔力封印術』

説明文を読む。

王族の魔力回路を強制的に閉じる禁術。

対象は魔法を使えなくなり、体力も著しく低下する。

長期間続けば、命に関わる。

私はゆっくり本を閉じた。

「……なるほど」

これだ。

間違いない。

私の体にかけられているのはこの魔法。

つまり――

誰かが意図的に私を弱らせている。

その時。

「エリオット?」

カイトの声がした。

私は慌てて振り返った。

「どうした?」

「いえ、本を見てただけです」

カイトは歩いてきて、私の持っている本を見た。

一瞬だけ表情が固まる。

「それは……」

私は首をかしげた。

「兄様?」

カイトはすぐにいつもの優しい顔に戻った。

「難しい本だ。エリオットにはまだ早い」

「そうですか?」

「うん。別の本を読もう」

カイトはそっと本を棚に戻した。

でも私は見逃さなかった。

ほんの一瞬。

カイトの目に浮かんだ緊張。

「兄様」

「ん?」

「この魔法、本当にあるんですか?」

カイトは少し沈黙した。

それから静かに答えた。

「……昔はあったらしい」

昔?

つまり今は使われていない?

「でも安心しろ」

カイトは私の肩に手を置いた。

「そんな危険な魔法を使う人間は、この国にはいない」

私は微笑んだ。

「そうですよね」

でも心の中では、まったく違うことを考えていた。

嘘だ。

この城にいる。

間違いなく。

そして。

もしかすると――

「兄様」

「どうした?」

私は無邪気な声で聞いた。

「この本、誰が書いたんですか?」

カイトは答えた。

「初代王の宮廷魔術師だ」

私は小さくうなずいた。

そして本棚を見つめた。

もし封印魔法が存在するなら。

解除する魔法もあるはずだ。

十年後まで待つ必要はない。

今すぐ運命を変える。

私は胸の奥で小さく呟いた。

「必ず見つける」

私の体を縛る鎖。

そして――

この物語の運命を壊す力を。

禁書庫の奥で、古い魔導書が静かに眠っていた。

まるで。

私がそれを見つけるのを、ずっと待っていたかのように。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

少しでも楽しんでいただけたなら、

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