第37話 ビーネさんに愚痴ってみた
魔法が使えない自分だとけっこうな危険度だったし、ゼロエロも魔法を使わずに倒せるのはすごいと感心していたが、それはつまり魔法を使えば簡単に倒せた、と思っていたのだろう。
確かに魔力切れがないのだから、ゲームで言う最大火力攻撃魔法をバカスカ撃てば勝てる。
物理は急所に当てることを求められるが魔法はそういうのではなさそうなので、物理特化の近接攻撃者とはくらべるのもおこがましいのかもしれない。
「うーん、戦い方をもう少し考えないとかなー」
俺がぼやくとゼロエロが尋ねた。
『どうした? 急に殊勝になったの』
「いや、あんな大物を魔法バカスカ撃つだけで勝てるのなら、俺も距離をとりながらお前にバカスカ撃ってもらえばよかったって考えたからさ」
『……まぁ、バカスカ打てるかと言えば難しいの。お主が言うように詠唱するのでその時間がかかる。それに、あれだけ素早い敵だと避けられるかもしれん。遣い手によるな』
ゼロエロが急にしおらしく答えた。
ゼロエロも、『数発』『同じ箇所に』『必ず当てれば』倒せると確信している。
――確かに的なら一発で木っ端みじんだが、魔法抵抗力があり動く標的にはそこまでの効力はない。そして、魔物の種類によるが、基本的には大きい体軀の魔物は抵抗力も高い。そのため、遠くから大勢で囲んで一斉に撃つのが定石なのだと、あとから聞いた。
……そんなこと知らない俺は現在、ビーネさんに例の袋を見せていた。
「開けてびっくり、猫が出てきてさぁ!」
俺が憤ったように語るとビーネさんが笑いだす。
「ヒムロ氏を驚かせるとは、そうとうな猫ですな」
「まさか生き物入れる奴がいるとは思わなかったから。……なぁ、生き物入れるのってアリなの?」
俺に問いに、ビーネさんが呆れた様子で答えた。
「ナシ、というより道徳的に猫を袋詰めすることがありえんのだが」
そして、慌てて弁解する。
「くれぐれも誤解しないでほしい。我が国で、人間と共存している生物をむやみに虐待することは、一般的にあり得ない。だが、する人間が一人もいないとは残念ながら言い切れない。もちろん虐待すれば処罰される。例外が魔獣で、基本的に魔獣は討伐対象だ。なぜなら魔獣は人間を襲うからだ」
ここまで聞いて、「あ、よかった。自分と同じ考えだった」と思った。
「魔獣は我々とは違う繁殖の方法……生態系は非常に難解でハッキリとは言えないが、自然発生のようだと考えられている。この辺りは災害対策局の方が詳しく、我々遺失物管理局は基礎知識しか知らないが、何らかしらの条件により発生するそうだ。生まれたときから成獣で、既存の生物を模倣した形をしている……と、これ以上は今度災害対策局で解説してもらうといい。言いたいのは、猫を時間停止の袋に入れた人物は猫を生き物としてではなく単なる物扱いをし、道徳観念が欠如している、それは、この国の一般的な人物ではないが、入れられたのが古代だとすると……そういったモラルが欠如していた可能性もあり得る」
ビーネさんが長々と語った。
何かしらの理由はあるかもしれないが、と言いつつ最後に付け加えた。
「もしも心配だったら、災害対策局で猫を診察してもらうといい。あそこは害獣駆除も行うのでそれなりに生物に詳しい」
「そうする。あと俺、害獣とそれ以外って区別がつかないからそれも教わってくる」
俺が返すと、ビーネさんが真剣な顔つきで深くうなずいた。
「事件が起きてからでは遅いので、ぜひともそうしてほしい」
確かに。
殺人事件になるかもしれないもんな。




