第34話 伝言をお願いしてみた
見落としていたドアを開け、中に入る。
かなり小さな部屋だ。倉庫っぽい。
両側の壁にオープンラックが置かれ、そこに雑多な物がたくさんあった。
ガラクタ置き場っぽいので、お宝感は満載だな。
『一番奥、一番端の一番上にある袋じゃ。時間停止の魔道具の袋じゃな』
持ってみたら、小さいし軽い。
「これならもやしっ子魔法使いにも持てるんじゃないか?」
俺にはタロウがいるからいらないし。
「コレ、中身は入っているのか?」
『振ってみればよかろ。ただ、壊れ物が入っているかもしれんから慎重にな。その口から入れられれるサイズならどんな物でも入れられるからの』
ゼロエロがアドバイスしてくれたので、ここでは開けず、いったん引き上げてハリーのところに行った。
ハリーのそばに、灰色の鳥がいた。
籠を置いて、お行儀良く止まっている。
そして俺をじっと見ている。
「……あー。ナッツね」
ポケットから出すと放り投げる。飛び上がってキャッチ。
「お前って、同じ鳥か?」
俺が話しかけるとプェッと鳴いた。
否定ではない気がするので同じ鳥なのだろう。
「じゃあ、ちょっと待っててくれるか? コレ聞いたらまた送るから」
タロウから椅子とテーブルを出してもらうとセットする。
『たき火もじゃ!』
と、ゼロエロが催促をするのでたき火もセットし、コーヒーを淹れて飲む。
鳥は俺に懐いたようで、俺の座る椅子の背に止まり、じっとしていた。あるいはナッツがほしいのかもしれない。
音声記録装置の再生をタップする。
『ラクシャリーです。大丈夫よ、ビーネからも聞いているし貴方が許可を出さない限りは彼女に一時的でも所有権が行くことはないわ。
ただ……事情を説明すると、彼女は魔道具技師で、魔道具製作の第一人者の孫、かつ彼女自身もかなりの腕前なの。だから、稼働している古代遺跡物を見て興奮して暴言を吐いたのよ。そして……同じ物を作り出すために貸し出せと言っているの……。私たちの腕力では使えないと説明しているのだけど……ならば貴方に協力してほしいと言っているわ。
――怒らないでね、貴方が受けないと言うのなら私たちもそう突っぱねるから。古代遺跡物の回収作業は貴方にしか出来ないし動かすことも貴方にしか出来ないので、貴方の言葉を優先するわ』
前半を言いにくそうに、後半は慌てたように早口で語っていた。
俺は少し考え、録音をタップする。
「まず、用件を先に言う。ビーネさんがそこにいなかったら連れてきてから続きを聞いてくれ、あるいは伝えてくれ」
ここでいったん区切って、心の中で十秒ほど数える。
「次の古代遺跡物は、一つだけ回収したが、残りは俺だと判断できないので実際にこちらに来てもらいたい。持ち帰りたいというものだけ俺が運ぶ。転移魔法で来られるのならそれで来てもらえばいいし、道は作ったので乗り物でも来られると思う。――次に、その頭のおかしな魔道具技師の件だが……メッセージを送るので、ソイツに直接聞かせろ。いったんここで停止してくれ」
俺はまた十秒ほど数えて、偽兎獣人にあててメッセージを吹きこんだ。
「――おい、真似ッコ自称魔道具技師さんよ。他人の作った発明品をコピってさも自分が作ったように発表する気か? ……ハッ! そんなんが魔道具技師だって威張ってるなんて、なかなか笑える話だよな! 他人の発明を、しかも自分で動かすことすら出来ないモンを、おんぶに抱っこで手取り足取り教えてもらって作るのかよ。お前、プライド無いの? あ、ないからそんな恥ずかしい真似が出来るのか、大声で頼めるのか! 俺なら恥ずかしくて魔道具技師なんて名乗れないね! 改名したら?『他人に手伝ってもらってようやく贋作が作れる腕と頭の悪い子です』ってな!」
深呼吸してから再度語り出す。
「――ってことだ。ラクシャリーさん、性悪贋作家への協力はお断りだ。本人も聞いているだろうけどな。『二度と俺に話しかけてくるな』っつっといてくれ。自分で古代遺跡物を動かせるようになってから俺に挑んでこい、ってな」
停止をタップすると、籠に放り込んだ。
俺は肩の辺りに止まっている鳥を撫でると、ポケットからナッツを取り出し手のひらに乗せて食べさせる。
「んじゃ、よろしくな」
「プェーッ」
鳥は返事をすると、籠を持って飛んでいった。
「うわ、速い」
手をかざして鳥の行方を見たが、あっという間に見えなくなった。




