第33話 魔獣と戦ってみた
古代遺跡物である何らかの建物の、観音開きの扉を開ける。
「暗いな……」
よく見えない。
中に入ると、扉が自動的に閉まった。
ホラーにありがちな演出だな。
そんなことを考えて一歩踏み出したら、奥から大きな影がヌッと現れた。
「……なぁ。アレって、ここの守護者とか言わないか?」
大きな影を指さしつつ、ゼロエロに尋ねる。
『それはありえん。ここはそんな大層なところではない。恐らく迷い込んだのじゃ』
って答えがゼロエロから返ってきた。
――まいったな。
ゾウかよ、ってくらいデッカい熊型の魔獣が出てきたよ。
「急所が高いな」
身構えつつつぶやいた。
魔獣は俺の姿を認めると、瞬時に敵と認定したらしい。いきなり前足を振りかぶり俺を叩き潰そうとする。
動きを読んでいた俺は横転で回避し、膝をつくと地面を蹴って抜刀。ゼロエロを横薙ぎにして前足を斬りつけた。
「チッ。ちょっと浅かったか」
バックステップで距離を取り、ゼロエロをいったん鞘に納める。
魔獣は吠え、俺をにらむと再び襲いかかる。
傷は浅いとはいえそれなりに痛むらしく、無事な方の手で攻撃してくる。
俺はつかず離れずの距離を保ち、傷をつけた手の側から後方へ動き、攻撃を避ける。
『お主、戦い慣れておるの……。やはりお主のいた世界は魔窟じゃな』
よけいなことを言うなって。
弁解してる余裕なんかまるでないが、こんなデッカい熊と戦ったことなんてないから!
なかなか攻撃出来ない魔獣がしびれを切らし、突進するべく痛む前足も気にせず地面に両足をつけようとした瞬間。
俺は間髪いれず飛びだし、地面を蹴った。
同時にゼロエロを抜き振りかぶり、魔獣の首を袈裟斬りに斬りつける。
『【防護せよ!】』
ゼロエロが慌てたように叫んだ。
着地するとまたバックステップで攻撃しにくい間合いに移る。
魔獣は俺をにらみつけていたが、動けず、そのまま目のハイライトを落としていった。
半ばまで切断された首から、血がシャワーのように降り注ぐ。
そのままだったら血のシャワーを浴びていたけど、ゼロエロの魔法で傘を差したかのようになっていた。
「おぉ、サンキュ」
『こんな無茶をせずとも、我の魔法で仕留めても良かったのだぞ?』
ゼロエロが言った。
「俺は魔法が使えないからなぁ。こういう時、とっさに出てこないんだよ。今みたいに適当に支援してくれよ」
構えなくても出来るんだから、いちいち構えさせるなってことだ。
アレって隙が大きいから、平素の時にしか出来ないぞ。
建物を血だらけにしてしまったなーと思いつつ、魔獣を担いでいったん外に出る。
なんと、ハリーが扉の前まで来て、荷台の扉を開けて待っていたよ。
「おぉ、サンキュー!」
ハリーの荷台に魔獣を放り込んだ。
『お主待望の肉じゃ。ハリーが魔獣を食べやすく加工してくれるそうなのじゃ』
「マジかよハリー。お前気が利きすぎるぞ!」
うまいか判らないけど、肉がたくさん食えるぞ!
魔獣の加工をハリーに任せ、また建物内に入る。
「ゼロエロ、血痕を清浄魔法で綺麗にしてくんね?」
『まったく……。まぁいいけどな』
ゼロエロに頼んで血のあとを綺麗にしてもらった。
「よっしゃ。これで何事もなかった! じゃ、改めて探索するぜ!」
『そもそも、朝の散歩とか言ってなかったか? お主の散歩とは、歩く先々の魔獣を殺しまくることなのか?』
ゼロエロの言葉がなんか言ってるが聴こえないフリをして、仕切り直しで再度探索を始める。
俺は建物内を探索してて思った。
「うーん……。なんつーか、簡素な宿、って感じ?」
『そうじゃ。ここは療養所じゃ』
声に出して呟いたら、ゼロエロが教えてくれた。
「へぇ。つまりは病院?」
『違うぞ。もう助からん病の者を送り込む場所じゃな』
つまり、治療はしないと。
ひととおり探索して、俺は結論を出した。
「ビーネさんか誰か遺失物管理の人に来てもらわないとわかんないな」
建物内には、『俺には普通に見えるが普通じゃないかもしれない物』が溢れている。
ハリーみたいに「これは!?」って大物がない。どうすればいいかわからないので、見てもらうしかないなって考えた。
引き上げようとしたとき、
『……ん? アレを確認した方が良いな』
と、ゼロエロが言い出した。
「どれだよ?」
と、尋ねると、
『入ってきた扉付近にドアがあるじゃろ。その中じゃ』
とゼロエロが答えた。
マジか。わかんなかった。




