第36話 魔剣を雑に褒めてみた
俺が外で基礎練をしていると、鳥がやってきた。
テーブルに籠を置くと、そのまま俺に向かってきたので腕に止まらせ、ナッツを食べさせる。
ゼロエロが驚いたように言った。
『信じられんほど懐いておるな』
「ナッツ狙いだと思うけどな。ま、それでもいいじゃん。俺は動物が好きなんだよ」
ご機嫌で俺が返すと、すぐさまゼロエロがツッコんだ。
『お主、さきほどでっかい動物をなんの躊躇いもなく殺してなかったか?』
うるさいなー。
「害獣は、俺の中では動物の分類に入らないんだよ!」
キッパリと言い切った。
鳥から受け取った籠の中には、いつもの音声記録装置の他に、変な壺が入っていた。
音声記録装置を再生すると、
『ビーネだ。この壺を広くて何もないところに置いてくれ。設置してからゼロエロ様に起動していただければ、転移魔法が使えるようになる』
ラクシャリーさんからではなくビーネさんからメッセージが届いていた。
『ふむふむ。識別装置とポータルフラワーを用いた転移魔法じゃな。設置場所も我が設定しよう』
いつになくゼロエロが張り切っている。
なぜここなのか俺にはさっぱりわからないが『ここじゃ!』と言われたところに置く。
『【隔離せよ】』
『【保護せよ】』
ゼロエロが立て続けに魔法を発動した。
『【起動せよ】』
ゼロエロが最後の呪文を唱えた途端、ボン! と勢いよく壺から粉が舞った。
『うむ。成功じゃ。ま、我からしたら容易いのだがな!』
どうやら俺に向かっていばっているようだ。
ほめてほしいのか?
理解した俺は、ゼロエロをほめてやった。
「おー。すごいな、よくできた」
『お主、ぜんぜんわかっとらんじゃろ!? 我だから簡単に出来たのじゃ! 普通はこう簡単にはいかんのじゃ!』
ほめたのにゼロエロはキーキー怒りだしたし。なぜだ。
怒るゼロエロを無視して音声記録装置に、
「ゼロエロが『できた』ってよ」
と吹きこむと、鳥に配達させる。
『お主は、ホンットーに魔法に関心が無いな!?』
「いやあるけどさぁ。俺って使えないし使えない国にいたし、何がすごくて何がすごくないのかサッパリわかんないんだよなー」
『我、けっこうすごいのじゃぞ? 使えない魔法はないのじゃぞ? なのに、お主の敬い度がものっすごく低く感じるのじゃ! 見直してもよいのじゃぞ?』
「あーうん。すごいすごい」
めんどくさいことになったなと考えつつ、棒読みでほめた。
しばらくすると、ボン! と壺から粉が舞う。
すると、舞い飛ぶ粉の向こうからビーネさんが現れた。
「うむ! 無事設置されている。設置場所も良いし……おぉ! 既に隔離魔法どころか保護魔法までかかっておる! さすがはゼロエロ様だ!」
感心したように大げさにほめるビーネさんに、ゼロエロがご満悦になった。
『そうじゃろ? 我、すごかろ? ……なのに我のポンコツ遣い手は、このすごさがわからんのじゃ!』
ゼロエロが最後プンスカしながら俺をディスった。
「魔法の使えない俺に、すごさを伝えようとするのが無駄なんだって」
俺が言い返しつつ、ビーネさんに近寄った。
「ゼロエロ曰く、そこは療養所らしい。一応全部見て回ったけど……ゼロエロ的にはたいしたものはなくて、唯一は音声記録装置で伝えた袋だけみたいだ。あ、危険な魔獣が一匹入り込んでたので駆除済み。ハリーに放り込んで解体してもらってる」
「それは助かった。危険度にもよるが、我々は戦闘のプロではないのでいきなり襲われたら怪我人が出たかもしれん」
ビーネさんが落ち着いて言ったので、いきなり出くわしても怪我人程度で済む実力があるんだな、と俺は思った。
さすが魔法の国。




