第30話 ちょっと休憩してみた
比較的細い木を取り出し、ゼロエロに乾燥してもらう。
『乾かす? 干からびさせるのか? そもそも水分なんぞあるのか? いいけどな……。よくわからんが【乾燥せよ】』
パキパキパキパキ。
ゼロエロが詠唱したとたん、木がひび割れた。
ワーオ。見るからに乾燥している。
「ありがとよ。んじゃ、これを……」
かかと落としで割った。
『……お主の魔王っぷりはじゅうぶんわかったのじゃ。でもコレ……我の魔法で砕いてもよかったのではないか?』
ゼロエロ、震え声で恐る恐る言うなって。
まるで俺が魔王みたいじゃんかよ。
「お前の魔法だと、粉々になるからさ。多少は原型を留めておきたかったんだ。お前で斬っても良かったんだけど、かかと落としなら一回で済みそうだったから」
乾燥してると割れやすいんだよ。魔王だからじゃないから。
割れた木片を集め、一部を重ねて置く。
そしてキャンプ用品を出し、セットする。
ファイヤースターターもあったが、手っ取り早くいこう。
「ゼロエロ、この木片を燃やしてくれ」
『ふむ……。【発火せよ】』
ゼロエロが詠唱すると、柄から魔法が飛び、木片に当たると着火した。
「『ファイヤーボール』じゃないんだな」
「なんじゃそれは?」
俺が呟いた言葉にゼロエロがわけわからん、という声で反応したので、俺は二度と向こうでの魔法の言葉を口にしないと誓った。
俺の前いた世界での知識は、前の世界でも実際に「ある」と信じていたら痛い奴扱いだったけど、ここでも呟いたら痛い奴扱いされるとわかった。
二度と言わない。俺は魔法が使えない世界からきた、それでいい。
「……今言ったことは気にしなくていい。よし、ありがとな。これで湯が沸かせる」
俺の言葉に、今度こそゼロエロが呆れた声を出した。
『湯なぞ、我が魔法で沸かせるぞ?』
だろうな。
だけども俺は首を振った。
「それは違うんだよ、ゼロエロ。あと、たぶん美味くない」
木だって呪文一発で乾燥する。だけど品質は最悪だ。薪に使うからいいけど、木材にするとしたらまったく使い物にならない。
お湯も、呪文一発だとダメだと察知した。
いや俺、味の分かる男じゃないんだけど(どちらかというと大ざっぱらしい)、じいさんから説教を喰らっていたんだ。
レンチンしたお湯と土瓶で沸かした湯とじゃ、味が違うんだって。
ここにくるまでは「何言ってんだ違いなんかねーよ」って思ってたけど、今さらわかった気がした。
ゼロエロは反論するかと思ったが、考え込むような雰囲気だ。
『ふむ……。そういうものなのか。我は当然のことながら人間の味覚などわからんのじゃが、知識としては興味深いの』
俺は、ゼロエロの言いっぷりに笑う。
「そんなたいそうなものでもないんだけどな。ただ、俺のじいさんが言ってたんだよ。なんでもかんでも時短だ効率化だってショートカットすればいいってモンじゃない。手間をかけたり試行錯誤するのもまたいいもんだ、ってさ。……ただし、なんでもかんでも手間をかけて無駄足踏むのも良くないけどな! とも言ってたな」
当時はなんだそのクソいいかげんな話はよ、って呆れたけどな。
折りたたみの椅子とテーブルを出し(どう見ても細い棒なのにスイッチポンで変形する)、ケトルとドリッパーとカップを出す。
ケトルは水を入れて焚き火台に乗せる。
……すると、ハリーが寄ってきて、俺の脇に止まると、サッとカーサイドタープを出してきた!
「マジかよハリーお前、気が利きすぎるだろ」
俺が褒めるようにハリーのボディをポンポン叩くと「ピッピッ」と音を出す。
やっぱ古代遺跡生物だよ。
「よーし! 雰囲気出てきたぜ」
椅子に座り、湯が沸くのを待っていると、
『我の椅子も出すのじゃ! 我もくつろぐのじゃー』
とかゼロエロがワガママを言い出した。
ま、別にいいけどな。
俺が椅子を出すとゼロエロがぴょんっと乗る。
ついでにタロウと釘バット(ツボ押し棒だけど)も一緒に乗せる。
三つが楽しげに左右に揺れているのを見て、なんだろね、と思いつつ、湯が沸いたのでコーヒーを淹れた。
じいさんがコーヒー党だったので、淹れ方を覚えた。
こっちにもコーヒーがあったのはラッキーだったよな。
じいさんはミルもその場でやってた(やらされていた)けど、時間停止の袋なら粉にしてもらったのを放り込んでおいたほうが楽。
コーヒーの匂いが充満する。
懐かしい。こっちでもこの匂いを嗅げてよかった。




