認められない私
もう一人の私に…自分自身に勝つ。
言葉にすればそれだけだ。だけども実行に移すとなると難しい。
さっきから持てる力を使いに使って攻撃してるのだけどぜんぜん当たらない。
そりゃそうだ。だって私なのだから…自分の技くらい見切れるよね。
しかしそうなると手の打ちようがないわけで…。
「ね、ねぇ私?もうじゃんけんとかにしない?」
ダメもとで提案してみるが笑顔で流された。
私なら受けなさいよ!じゃんけんでいいじゃんかよ!私なら受けるぞ!じゃんけん!
もう周り全部ライトニングセイバーで薙ぎ払う?それがいい、そうしよう
剣を上に掲げたところで、ようやくもう一人の私が口を開いた。
「そもそも前提が違うのよ「私」」
「前提が違う?どういうこと?」
「あなたが「知ってる」のは勇者の、カルラの試練でしょう?ここはあなたの試練…内容が違うの」
「へぇ~…」
まさかの転生知識殺し。
ゲームでは勇者カルラを操作してもう一人のカルラを倒すって試練だったんだけど、それはカルラの試練であってここにいる私は別の内容になると…。
「なるほど…じゃあ私は何をすればいいのかしら?」
「簡単よ、この「私」をあなたが受け入れてくれればそれでいい」
…?
意味が分からぬ。受け入れろとは…?
「つまり?」
「私があなたにとって何なのかわかる?」
いいえわかりません。という意志を込めて見つめてみる。
するともう一人の私は苦笑いの表情をしてその胸に手を置いた。
「「私」はあなたが目をそらしてきたもの…あなたが認めない「私」」
「私が認めない私?」
難しい話になってきた…さっぱり何の話か分からない。
「いいえ、あなたは分かってる。でもあなたは「私」を見ない…受け入れない」
「えっと…ごめん本当にわからな、」
「_あなたの望みはかなわない_」
もう一人の私が言ったその言葉。
それは何故か私の心に鋭いナイフの様に突き刺さった。
「なに…?何のこと言ってるの…?」
「何のこと?わかってるでしょうに。あなたが、「私」がやりたいこと…皆が笑って終われるハッピーエンドを…そんな望みはかなわないって言ったの」
「かなうよ!だってそのためだけに私はいろいろやってきた!努力してきた!準備だってほぼ終わってる!このままいけば…」
「そうだね、「そのやろうとしてる事」は成功するかもね、」
そこでもう一人の私は言葉を切った。
そう、成功するはずなんだ。そのためだけに私はこの世界での人生を費やしてきたのだから。
それで終わり、ゲームみたいに皆が泣く終わりじゃなくて、皆が笑って終われるハッピーエンドだ。
なのに、なのにもう一人の私は口を開こうとしている。
何かを言おうとしている。
私はそれが、
「でも…」
「うわああああああああああ!!」
私は叫び声をあげながらもう一人の私を切りつけた。
なぜそんなことをしたのか分からない。
ただ何となく…そう、なんとなくその言葉の続きを聞きたくなかったから。
私の剣がもう一人の私を切り裂いた。
いや、刃は通ったのだが感触はなかった。斬ったと思ったらもう一人の私は黒い霧のようなものに変わって消えてしまったのだ。
「でもあなたが望む結果は訪れない」
耳元で「私」の声が聞こえた。
「…っ!!」
振り返りながら横なぎに剣を振る。
手ごたえはなく、剣は空を斬っただけだった。
「だって「私」はひとつ決定的に間違ってしまったのだから」
だけども「私」の声は止まない。
「何を言ってるのかわからない!私は間違ってなんかない!絶対に皆をハッピーエンドに…!」
「嘘。だって「私」がここにいるもの。「私」はあなたで、あなたは「私」…私が知っていることはあなただって知ってる」
私はもう無我夢中で剣を振り回していた。
この言葉を聞きたくない、これ以上知りたくない…いや、気が付きたくない。
「あなたの方法じゃ望む結末にはたどり着けない。絶対に」
「そんなことない!私は!…私は!…っ!」
そんな私の頭をガっと誰かの両手が掴んだ。
そして無理やり目線を合わせられたそれはやっぱり「私」で…。
「だってあなたはとっくに_」
「やめろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
私の絶叫と共に空間にひびが入った。
それはどんどん広がっていき、崩れ落ちていく。
バラバラと崩壊する世界の中で最後に見たもう一人の…いや「私」はとても悲しそうな顔をしていた。
気が付くと私は先ほどまでいた元の洞窟の中に投げ出されて倒れていた。
身体に力が入らず起き上がる気力もない。
どうやら私は試練に失敗してしまったらしい。
まぁでも問題ないだろう…この試練は結局はカルラたちが突破出来ればいいのだ。
私が来たのはただの興味本位で結果は何も関係ない…だからこれでいい…いいはずなのに私の心はまるで何個もの重りが付けられているかのように重かった。
なんだか眠くなってきた…こんなところで眠るわけにはいかないのに…。
耳元で足音が聞こえた。
誰かが隣にいる…レフィアとアルマかな…情けない姿見せちゃったかな…あぁだめだ…ね…むい…。
意識が途切れる瞬間、誰かが私の頭を撫でた感触を感じた。




