クロリスside 気づいた事実
正直、意外といえば意外だった。
この洞窟は実は私…おっと。女神が作った場所じゃない。
女神の砕けた存在核の一辺が変化した聖剣、その4本目が勝手に作り出したものだ。
あれは少しヤンチャなのだ。
自分の影と戦わせて乗り越えさせる…そんな試練を勝手に受けさせるわけだが…勇者たちの力をつけるにはちょうどいいだろうとそのままにしてある。
その結果が今私の足元にある。
少しだけ気になることがあって少しだけ覗くつもりだった。
そこで試練に失敗したと思われるレーナを見つけた。
彼女は泣いているように見えた。
その時になって私はようやく思い出したのだ…彼女がただの少女だということを。
今までの彼女の行動…そして私の力が完全には及ばない唯一の人間ということもあってどこか特別視してしまっていた。
そう…ただの人間なのだ彼女は。女神は加護を与える際に与えるべき人間をちゃんと選んだ。
その時は深くまでは見ていないので転生者だということは分からなかったがレーナの事もその時に見ていたはずなのだ。
そしてそのうえで加護を与えなかった。特別な素質を持った人間ではなかったのだ彼女は。
なのに私はいつのまにかレーナに勝手に期待して…押し付けてここまで導いてしまった。
そのせいで今、彼女は泣いていた。
本当なら泣かなくていい理由で、本来ならば背負わなくていいものを背負わせてしまって。
彼女に会うたびに毎回思う。
「私は本当に…何をやっているのでしょうか」
もがけばもがくほど何かがおかしくなっていく。
ただ私はこの世界を…この世界に住まう生命たちを守りたいだけなのに。
全てが中途半端な…非情になり切れない私はやはり世界にかかわるべきじゃないのかもしれない。
そんな意味のない自責の念を抱きながらレーナの頭に手を優しく撫でる。
本当なら他の皆のところに連れて行ったほうがいいのだろうが勇者たちはまだ試練の途中だ。
そしてもう一方のほうは…私は「あの子」と顔を合わせるわけにはいかない…いやどの顔を下げて合いに行けばいいのかわからない。
だから私はこの場で彼女を自分の太ももに寝かせた。
楽な体勢で少しでも休めるように、楽になるように頭を撫でる。
こうして触れるとわかる…彼女は少し震えていた。
ここの試練は具体的に何が行われたのかは私にもわからない。
あれは本人の中で完結しているためだ。何が起こったのかは受けた本人にしかわからない。
だから彼女が抱えている物は私にはわからない。
「う…うぅん…」
うっすらとレーナの瞳が開いた。
「まだ少しだけ時間はあります…もう少しまどろみの中で心を落ち着けましょう」
「うん…」
少しだけ「力」を使う。
いま彼女は半分寝ている状態だ。特に抵抗する様子もなく私の太ももを枕におとなしく撫でられている。
不謹慎ながらそんな彼女の事を少し可愛いと思ってしまう。
これも私のどうしようもない悪癖の一つだ。この世界の人間は皆私の子供のようなものだから…どうしてもいわゆる母性と呼ばれるものを抑えきれない。
「よしよし…レーナちゃんはいい子ですね~」
「・・・」
いけない、つい口に出してしまった。
静かにしないと休めないですよね。
「…私は…いい子なんかじゃ…ない」
レーナがそう口にした。
その言葉にはどんな思いが込められているのか…私にはわかるはずもなかった。
だからせめて少しだけ寄り添おう。
「だいじょうぶ…だいじょうぶですからね~」
頭を撫でながらぽんぽんと優しくお腹の辺りを叩く。
こんなことしても結局はただの私の自己満足だ…何もなりはしない。
どれもこれも全ては私が招いてしまったことだ…私が不甲斐ないばかりに悲しまなくていい人がたくさん悲しんだ。
そしてそれを終わらせるためにさらに悲しみを自分の手で生み出そうとしている。
「ごめんね…レーナちゃん」
そこで私はあることに気づいた。
彼女の存在核になにか不思議な違和感を感じたのだ。
この感覚は以前にも…確かあの時は女神の加護のコピーを自分の存在核に刻んでいたはず…また何か刻んだの…?
私は以前の様にレーナの存在核に触れてみた。
そして、
「これは…!なんでこんなものを…?」
そこにあったのは不可解としか言えないものだった。
女神の加護の複製というのならまだわかる。あれはコピーなんてものができるのなら使い道はいくらでもあるからだ。
でもこれは…。
その時、私の頭に一つの考えが浮かんだ。
ずっと謎だったレーナがやろうとしていること…でもそんなことあるはずない。
きっと私の考えは間違ってる。
だって…、
_その方法でみんな笑って終われる結末なんて訪れるわけないのだから_
それどころかあの時、あなたが言っていた「頑張った人に報われてほしい」という願いさえ叶っていない。
だからきっと違うはずだ…彼女にはきっと別の考えがあるのだろう…。
「違いますよね…?」
「・・・」
レーナは何も答えなかった。
でもそれは今ここで考えてもどうにもならない事なのだろう。
だから私はまたいつものように願う。
皆の行く末が幸せな結末でおわれますように。
その後、レーナが目覚めるまで私は彼女の頭を撫で続けるのだった。




