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終わりの運命

村から数キロ離れた場所、そこで魔物を迎え撃つ。

私の後ろにはたくさんの人がいる…ここを通すわけにはいかない。


「と、かっこつけてみたものの…はてさてどうなることやら」


今この瞬間もとんでもない破壊音と共に耳を貫かん勢いで咆哮が聞こえている。

相当ヤバそうな魔物だ。

もしかしたら私史上一番やばいまであるかもしれない…けれどもやるしかない。


やるしかないのだ。


「来るならこいっ!!」


そんな私の叫びに答えたわけではないだろうけど、瞬間それが姿を現した。

まじかで見ると威圧感がすごい。

先ほどとお目で見た通りやはり金色の体毛とタテガミのついた巨大なゴリラだ。

顔はどちらかというと獅子ににているかもしれない。


「グオォォオオオオオオ!!!」


そんなある種のテンプレチックな叫びをあげながら魔物が私にその右拳を突き出してきた。

出会いざまにいきなり!?しかもはやい…!!!


「くぅっ!!」


聖剣を盾に攻撃を何とか受け止めようとするもとんでもない力でそのまま吹っ飛ばされた。

このままじゃ木に激突する…!

とっさに風属性中級魔法、ウインドバーンを発動して逆方向に爆風を起こし勢いを殺す。


そしてそのまま態勢を整えつつ…


「ライトニング!」


様子見と牽制にてきとうな魔法を魔物にお見舞いする。

さてどうなる?


「グオォォオオオオオオ!!」


うん!よくわからん!

でも痛みを感じた様子はないし、見た感じ外傷もないように見える。

つまり遠くからちくちく魔法をうっていく作戦は使えないわけね。

あんまりやりたくはないけれど接近戦を挑むしかない…。

さっきのパンチの威力を見るに一撃でも貰えば終わりだ。気合を入れろ私…!


「行くぞ!」

「ガァアアアアアアアア!!」


どうやら向こうも私を敵と認識したらしく、不用意に暴れることはせずにこちらとにらみ合いを続けている。

だがしかし


「私は行くって言ったら行くんだよ!!」


あえて空気も何も読まずに突撃!

こういうのは雰囲気にのまれたら負けだと思っているタイプです。

魔物が再びその拳を突き出す。

拳だけで私の身体の半分くらいある…凄い大きさだ…でも当たらなければいいのよ!

ただ一直線に飛んでくるだけのパンチなんて避けるのに苦労はしない。


「エアステップ!」


私ご用達の困った時のエアステップである。

魔物のパンチを紙一重でかわし、腕を聖剣で切りつける。


「かっっっった!!!!?」


感想はそれだった。勝ったじゃない、硬いだ。

めちゃくちゃ硬くて刃がほとんど通らなかった。

正攻法じゃ無理だこれ!だとすれば狙うのは…


「グオォォオオオオオオ!」


魔物が開いてるほうの腕を私に伸ばしてきた。

それはまずい。もし掴まれでもしたら一瞬でつぶれたトマトの出来上がりだ。


私もとっさに手をかざして魔法を発動させる。


「ライトニング!!」


魔物の手のひらに雷属性初級魔法がさく裂する。

手のひらなら多少は効果があるか?とおもったがやはり若干皮膚が薄いらしく傷を与えることに成功した。

しかし致命傷には程遠い。

だが痛みを与える事には成功したらしく、魔物は腕を抑えて悶えていた。

ここでたたみかける!!


「やぁああああああああ!!」


魔物の身体を利用して私は飛び上がりその頭上をとらえる。

皮膚が硬すぎて致命傷を与えれないのなら、そもそも皮膚がない場所を狙えばいい。それは眼だ。

皮膚に覆われてないむき出しの器官。


そこに聖剣を突き立てようと構えたとき、魔物のその瞳が私を見た。


_やばい。

私の直感がそう告げた。

その直感を信じて慌てて身体を捻る。瞬間、魔物の背中から「腕が生えた」

まさかの隠し腕である。こいつは四本腕の魔物だったのだ。


そして新たに生えた腕が、飛ぶ虫を払うようにその腕を振り回す。

直感を信じたおかげでそれを避けることはできたのだが…態勢を立て直した魔物がもともとの腕でパンチの追撃を放ってきた。

ダメだ、空中では避けられない!


「ウインドバーン!」


少しでも衝撃を殺すため、魔物の拳と私の間に爆風を起こす。

狙い通り私は後ろ向きに吹き飛ばされることに成功はしたのだが…拳のほうが少しだけ早かった。


「がふっ…!」


身体がばらばらになるかと思った。

それほどの衝撃が私を襲う。勢いを殺して衝撃もできる限り逃がした。

それでもこのダメージ…叩きつけられた先で立ち上がることさえ難しい状態だ。


やばい、ただただやばい。

私は今、本当の意味で死を感じている。

視界の隅で魔物が私に駆け寄ってくるのが見える。

このまま私にとどめを刺すつもりだろう…でも簡単に殺されてやるわけにはいかない。


「こっちとら一回本当に死んでるのよ!この程度で負けるもんですか!!!」


魔物が私にあと数歩というところまで近づいてきて…爆発した。


「ガァアアアアアアアア!?」

「トラップマインよ!さっき殴られた時にとっさに仕掛けておいたのよ!」


そしてここだ。

私はこの戦いが始まる前に準備していた切り札をきった。

それはいつもの私の必殺技だ。


つまりは


「ライトニングセイバー!!!」


聖剣から雷の魔法が解放され、一本の巨大な雷の剣を形作る。

この戦いが始まる前からすでに聖剣に魔法を込めていたのである。

そしてさっきからちまちまと攻撃していたのは確実にライトニングセイバーを通せるところを探すため!

正直まだ明確な弱点は見つけていないけれど、このままでは私がヤバそうだし、目を攻撃しようとした時に隠し腕を出したことからやはりそこには攻撃が通るのだろうと希望的観測で…いや。


「困った時には顔面に一発!これが最適解!!」


これこそ真理だ。

私はライトニングセイバーをその顔に振り下ろした。

魔物がその四本腕で顔を庇う。

さすがのライトニングセイバーでも切り裂ききれない…だが負けるわけにはいかない。

気合いだ…気合は全ての不可能を可能にしてくれる…!


「だぁあああああああああああ!!!なめるなぁあああああああ!!!!」


聖剣を握る手に力を込め、ついでに魔力も込める。

剣を包む雷光が辺りを照らし、燃やしていく。


「ぐ、グギャァアアアアアアアア!!!?」


魔物が苦悶の叫びをあげた。

少しづつライトニングセイバーがその腕を切り裂き始める。

そして雷の剣がその四本の腕を両断した。


そのまま顔面まで刃が届く。


「切り裂けええええええええええええ!!!」

「ゴガァアアアアアアアアアア!!!?」


確かな手ごたえと共に、雷光が辺りを焼き尽くす。

後に残ったのはめちゃくちゃに破壊された森林と、黒焦げになった魔物の死体に…ボロボロの私だった。


「はぁっ…!はっ…きっつ…!」


たまらずその場に座り込んでしまった。

なんとか私のとっておきが効いてくれてよかった…戦いが長引けばかなりヤバかった…。

うっ…何かが喉奥から込み上げて…


「げほっ!うぇぇっ…」


私の口から吐き出されたものは血だった。

いやいやいや…漫画などではよくあるダメージ描写だが血を吐くというのはかなりやばいのだ。

内蔵がやられてるわけだからね…。


こっちは片付いたわけだし向こう側に加勢に行かないといけないんだけど…ちょっとすぐにはきついかもしれない…。

その時、どこからともなくがさりと音がした。


「なに!」


慌てて無理やり立ち上がり音のしたほうに聖剣を構える。


そこに小さな子供がいた。

ボロボロの布を頭からすっぽりとかぶった子供だ…まるでさっきまでの不審者スタイルの私だ。

その子供は私の事をじっと見つめていた。

いや、目元も見えないからよくはわからないけれど視線は感じているので多分見られてるはず…?


「あなたどうしたの?逃げ遅れ?パパとママはどうしたのかな」

「・・・」


しゃがんで目線を同じにして、ゆっくりと問いかけるも子供は何も話さない。

かと思うとその子供は一瞬だけあさっての方向を見ると村のほうに走り出した。


「ちょっと待って!一人だと危ないから…っ!」


慌てて子供を追いかけ、手を伸ばした。


その瞬間だった。


あぁなんで気づかなかったんだろう…、私の他に子供に手を伸ばしてるものがもう一体。

それは巨大な拳。

さっきの魔物は一体じゃない、二体いたのだ。


「エアステップ!っ間に合えぇええええええ!!」


間一髪、子供を抱きとめることに成功する。

でもここからどうする?いや…どうするなんて言ってもこっから取れる手段なんて一つしかない。


「このまままっすぐ走って。そこに村があるから」

「・・・ぁ」


どんっと少し力を入れて子供を突き飛ばす。

その結果、私がどうなるかなんてもはやわかりきったことでしょうとも。


はぁ…もっとスマートに事を運べないのだろうか。

ここが勇者ではないただの脇役の限界ということなのか…


そして無防備な私に魔物の巨大な拳が激突した。

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