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5-1 足がかり

「ひとまずはエルフ族とは協力を得ることができたな」

「これもひとえに主のおかげかと」


 エニグマは一件落着といった様子で玉座に腰を下ろし、天井を見上げた。天井には華美な装飾などなされておらず、ゲームの時の通りにシャンデリアがぶら下がっているくらいである。


「……殺風景だな」

「っ! でしたら今すぐに装飾品を――」

「いや、必要ない」


 ある意味新しいゲームにアビスホールの住民で挑むという意味において、自分の部屋が殺風景なのは「MAZE」における初期のダンジョンを想起させるように思える。

 エニグマは、エルフ族の村を押さえることが出来た事を最初の一歩にして、この世界において新たなる目標を立てようとしていた。


「……決めた」

「一体何をお決めに?」


 普段は深読みの得意なアビゲイルですら、今回ばかり主の言葉の意図をくみ取ることができなかった。


「……決めた、とはどういう事なのだあるじよ」


 決めた、との一言だけ。それは様々な考えを否応なしに想起させてしまう。もしや自分達の様な下々の者には言えないことなのであろうか。はたまたこれまでの行いに主があきれる部分でもあったのであろうか。考えれば考えるほどに幼いアリアスの思考はマイナスへと働いていく。


「ま、まさかわらわ達の働きが足りないから捨てるとでも言うのか!? 嫌だぞそんなの! もっと役に立つから、そばに――」

「待て待て待て、そういう意図は全くない」


 おろおろと慌てだすアリアスを宥めるように、エニグマは手を前に差し出して言葉を制する。


「決めた、というのはこの世界で俺が何をするのかということだ」


 エニグマは終わると思っていたゲームが新たなステージへと突入し、そして現実になったという実感を経た上で新たな目標を立てることとなる。


「このダンジョンを、アビスホールをこの世界における最高の危険地帯だと知らしめてやる」

「ほう……! 我が主よ、それは素晴らしいお考えかと」

「流石はわらわのあるじ、そうでなくては」


 最初に主の言葉の意図を理解できたのはアビゲイルとアリアスであった。アビゲイルはこれからも主と共にこの最高のダンジョンにいられる誉れに感激し、そしてアリアスは主と共にこれからも暴れられる事を、この世界に挑戦状を叩きつけられることを心より喜んだ。


「さて、最初の足掛かりの為に向かうところは決まっているな?」


 エルフ族から得た情報。そこから最初に向かう場所は既に割りだしている。


「プルーティア帝国。最初に落とすにしては少し豪勢な名前だと思わないか?」


 エニグマの言葉の通り、「MAZE」ではできなかったことをエニグマは今成し遂げようとしている。ひたすらに佇んで己を守り続けるのではなく、侵食を始める迷宮ダンジョン。エニグマの大きな野望は、この瞬間に産声をあげたのであった。

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