『レベルが上がらない』
死にかけた。
「か、カニが弾き飛ばしからの致命打するとは・・・」
当初は炎の魔法だけで狩りをしてたが
すぐガス欠するので『魔力の剣』を呼び出したのだ。
元々のバニラからある魔力の剣は重さもなく振りやすい。
消費30で40分は持続するスグレモノだ。
『どぅううううん』
調子よくデカいカニを切り刻んでたら
鈍い音とともに振った剣がカニハサミに横に払われた。
世界がモノクロになり超スローになった。
そのままカニが突っ込んで腹に突き刺してきた。
自分が刺されるのを幽体離脱して他人事みたいに見てた。
死にかけた。
超痛かった。
やばいほど、痛かった。
「痛――!!! 『治癒』!『治癒』!!」
回復魔法を掛けながら走って逃げた。
どうやら世界的人気のファンタジーアクションゲームも混じってるようだ。
初見マップだと30秒に1回は死ぬゲームの。
いわゆる死に覚えで進めるゲームだ。
「・・・これ死んだらどうなるのかな」
直前のセーブデータから戻るのが本来のゲームだけど
今起きてる状況が正直よくわからない。
夢から覚めるかもしれないし、本当の死になるかもしれない。
「カニでも喰うか」
部屋に戻ってパリィ貰うまで何匹か狩ったカニを焼く。
うまい。タラバガニって感じの味だ。
マヨネーズもほしいな。街に行けばあるかな。
調味料が塩しかないのは悲しい。
「んー」
カニを食いつつヌルゲーじゃない事に気付いたので悩む。
簡単なのは強いフォロワーに前衛を任せて
自分は後ろから魔法を打ち込む奴だ。
装備にマナ消費軽減をばんばん入れて
100%にするとマナ消費なしで専念できる。
そういうプレイでも接近戦で死ぬのだが
ゲームとしては緊張感があってよかった。
「・・・エロMODがなあ」
女性フォロワーだと言っても油断はできない。
なぜか突起物が生えて夜中に襲ってくる。
ちなみにその突起物は発射も新しい命も作ることができます。
「まあ夢だし深く考えなくて良いか」
カニにえぐられた痛みを忘れることにする。
「そのうちどうにかなるし」
幾らか狩りをしてレベル分の経験値が溜まったようだが
レベルを上げる方法がわからない。
ゲームならTABキーを押してメニュー画面を呼び出せば良い。
TABってどこだ。耳たぶか。
狭いユニットバスに入って汚れを落とす。
歯を磨く。
化粧水で顔をぱちぱちする。
そこらのアメニティはMODで完備されてたのがありがたい。
パジャマもあった。
汚れた踊り子衣装も洗濯しなきゃと脱いだら
脱いだ途端に綺麗になった。
すごい便利。
部屋の物を確認する間にガラス棚と引き出しの奥に
それぞれエロMODアイテムがあったのは秘密だ。
乾いた笑いが出た。
自立する突起物! 瓶詰め触手!
そんでベッドに戻って普通に寝た。
◇
起きた。おっぱいがある。
「・・・」
だんだんとおっさんだった記憶が薄れてる気がする。
体に心が引っ張られるのか。
逆に少女だった記憶が捏造されてる。
子供の頃の記憶とここ最近の記憶だけある。
間はない。
おっさん記憶だと子供の頃は結構いいとこに住んでた。
お手伝いさんとか複数いた。
いまなら姫プレイもできる気がする。
こうも美少女外観だと我ながら身支度に気合が入る。
服MODをタンスにいろいろ入れておけばよかった。
ないものは仕方ない。
パジャマから踊り子衣装に身を包む。
半裸に近いこれはMOD装備で重甲冑並の硬さだ。
朝ごはんをたべた。
今日も周辺探索をがんばろう。
狩りに出かける前に机に向かう。
「日記にメモしておこう」
おっさん以外の記憶も消えるかもしれない。
MODやら覚えてる事を思い出せるだけ書いた。
字もなんか可愛らしい字になってた。
まあ夢なんて良いとこで目が覚めるものだがな。
◇
半年が流れた。
結局、夢は覚めなかった。
いろいろ諦めて、第二の人生を生きることにした。
選択肢がないともいう。
レベルは1のままだ。
いまだにレベル上昇のやり方が分からない。
TABキーとかわからない。
幸いスキル熟練の方は使ってれば上昇するようで
当初より体が楽になった。
「雪ばっかだなあ」
半年経っても雪景色は変わらなかった。年中冬らしい。
黙々と周辺のカニを狩りつつスキルを上げた。
それから半裸衣装がどうやら半裸ではない、という事に気付いた。
厚手の服と同じ程度の暖かさかそれ以上だ。
「・・・そういえば寒さMOD入れた時に設定でそうしてたような」
装備指定でMODメニューで設定できるのだ。
この防寒具合だと伝説級の防寒防水にしてるようだ。
いいぞ、過去のおっさんの俺。
設定した記憶がないけど。
なお寒さMODでは極低温の水に入ると30秒ほどで死ぬ。
・・・それは設定で即死は止めたかもしれない。
ガチすぎるとフィールドを旅するだけで精一杯になるので
雰囲気を楽しむ程度のヌルゲーにしたはずだ。
「ファストトラベルは禁止にしてたなあ」
行ったことのある場所に即移動をMODで禁止設定にしたのだ。
これは記憶が確かにある。
移動は馬車でゆらゆらとのんびり。
エロMOD以外の雰囲気MODを入れまくったのだ。
スケベ一辺倒よりも楽しい。
「MODメニューが開ければ、いろいろ楽なんだけど」
ゲームのようでゲームでない世界。
実際に生きる今となればヌルゲー設定にしたい。
とくにクリーチャー姦関係はオフりたい。
シャコの化け物みたいなのに寄生エロ卵されるとか
御免被りたい。
プレイスタイルも色々と模索した。
当初は炎とかの攻撃魔法を極める方向で考えてた。
昔クリアしたのは魔法使いプレイだったからだ。
が。マナ効率が厳しくて断念した。
一匹狩るとそれで息切れする。
2~3匹いると逃げ回りながら戦うことになる。
レベルが上がればマナを上昇させてだいぶ楽になるが
レベルの上げ方がわからない。
「アクションゲーの方のシステムだと司祭にレベルを上げてもらってたな」
街に行く必要があるかもしれない。
「魔法使いプレイの時はどうしてたっけ。
たしかマナ軽減のエンチャを装備に入れてたな」
エンチャントするにはその効果をもつ装備を手に入れて解析する必要がある。
このMODのコテージにはそういう装備が一切なかった。
こうなると高い金を出して街で商人から買うか、
敵から身ぐるみを剥いで奪うかだ。
周辺のカニなんぞが持ってるはずがない。
◇
「これに決めた!!」
色んな方法でカニを狩りまくった。
魔法使いプレイは諦めた。
時代はそう、召喚剣士だ!
魔法の剣を呼びだしてガチんこだ。
光の剣
追加MODの強力な剣だ。
オーラソードはその気になれば飛び道具も使える。
消費は85。
これを呼ぶだけで100あるマナがほぼ空になる。
40分呼べるので十分だ。
緊急時の回復魔法が使えるマナの回復を待ってからカニを狩る。
魔法の剣は召喚魔法の分類になる。
これがなんとスキルレベルが上がりやすいのだ。
攻撃魔法は実際に敵に当てる必要があるが
召喚魔法は会敵するとスキル経験が入るので
敵をひたすら探せば良い。
これは効率良かった。
召喚魔法を極めていけば当然魔物やらも呼び出せて
仲間の代わりになる。
貞操の危機も解決する。
今は召喚に必要な最低限のマナが足りないが、
比較的あがりやすい20レベルまでをマナ上昇に割り当てておけばかなり戦える召喚が使える。
なんとなればマナ上昇のある装備を身につければ良い。
レベルさえ上がれば解決だ。
あと武器弾きも練習した。
カニがハサミを振り上げる動作をした時から左手を払う。
ハサミを振り下ろす時に左手を払うと間に合わない。
うまく行くと重低音がして世界が超スローになる。
そこで剣を突き刺すと大体カニは即死する。
慣れてくると3,4匹まとめて対処できるようになった。
武器弾きすると何故か視点が3人称になって
周囲の様子が手に取るように分かる。
囲まれていても冷静に攻撃をかわしながら
致命打を与えるのだ。
普段みれない、今の自分の姿を眺めることができるのも良い。
スタイルの良い美少女が半裸の白い踊り子衣装をまとって剣を振るってる。
とても絵になる。
「今日も可愛かった。
――そろそろ街へ行こう」
司祭がいればレベルがあがるかもしれない。
強くなるには金が必要だ。
街には金を稼ぐ手段がある。
ポーションを作って売る錬金だ。
もう1つ代表的な金策もあるが。
「エンチャ付いたアイテム、結構高価なんだよね」
エンチャは解析といって最初に1つ元となるエンチャアイテムが必要なのだ。
ドロップ品もあるが、お店にランダムで並んだのを買うのが普通だ。
1度解析すれば後は効果が高いエンチャを自作できる。
魔石、ベースアイテム、エンチャ効果の3点セットだ。
金策としては『悪魔祓い』のエンチャ品が置いてたら全力確保しちゃうのが定番だ。
元ゲーだとこれを確保するのが序盤の目標だ。
「いまは錬金だね。レシピは解るけど、値段はわかんないか」
まずは錬金屋で高値で売れる薬を確認した方がよさそう。
素材は限られてる。
ガラス棚に色々あるけど、元がMOD飾り用なので量がそんなにない。
あと街に行ったら甘いもの食べたい。
「ホットチョコあるかなあ」
MODで入れたよ。そういう雰囲気用のMOD大事。
◇
改めて部屋を物色した。
キラキラの金貨が入った袋とか魔石入った宝石箱とかあった。
魔石は最高級が15個であとは普通魔石とか極小魔石とかがゴロゴロ。
そう多くないけどMODの雰囲気背景で転がってた奴だから仕方ない。
魔石は大量使うけどドロップも頻繁だし心配はない。
15もあればちょっと足りないなーって時の予備には良いだろう。
「MODの宝石系アクセサリ、もっと入れておけば良かったなあ」
宝石箱にネックレスとか指輪等は入ってたけど、魔力なしの背景品だ。
このセーブデータの感じだと装備や衣装関係のMODを入れてなかったようだ。
踊り子衣装以外の装備品は下着x3とパジャマx2だ。
ほんと何も入ってないね。武器すらも無かった。
錬金の素材、大量の本。
呪文書は元ゲーだと習得時に消えるのだけど、残ってる。
高値で売れるんだよね。重いけど持って行こうかな。
(・・・本は、売っては駄目です)
なんか魔法書は売りづらい。心に囁かれた気がする。
止めておこう。
あとあるアイテムは――。
「はは。さすがにアレは高値で売れるかもだけど、持っていくのはないね」
エロMOD関係アイテムを2つ部屋でみつけちゃいました。
(・・・)
ひとーつ!
引き出しの奥に自立する突起物。ごりっぱです。
転がしてもダルマのように自立してくれる素敵アイテム。
吸盤みたいに壁にも柱にもくっつくね。魔法だね。
乾いた笑いがでるわ、こんなん。
(・・・)
元ゲームプレイ時ではどのセーブデータでもいっぱいお世話になりましたなあ。
汎用エロMODでなくてモーションが段階で変化して使い勝手が良いんだ、これ。
なんだ、使い勝手って。ははは・・・。
いやー、流石にこれ使うのは無いですねえ。ありませんね。
最初見つけた時びっくりしちゃったよ。ないです。
(~~~!!)
心の中の誰かが凄い動揺してる気がする。
めっちゃポカ!ポカ!って叩かれた感がある。
見なかった事にしたげようね!
このアイテムのエロMOD導入したのはごめんね!
自分に謝っちゃうね!
うら若い美少女が持つアイテムじゃないからね!
ふたーつ!
「うん。あと、これかー。こっちはなあ」
もう1つのアイテム。
「――定番だからなあ。彼、元気かな。
それにしても、これは、なんというか・・・」
エロMODアイテムではあるけど、異質な品だ。
ガラス棚の奥に触手入りの瓶が1つ。
すごい存在感がある。中の触手は脈動して生きてる。
生きてる。
そう、みんな大好き触手エロMODだ。
蓋あけると瓶からうねうねが出て触手プレイできる素敵アイテム。
汎用エロMODは導入まで大量の関連MODを入れる必要がある。
このエロMODはこれ単体でも触手プレイできるのでビギナーにも安心。
そう、先の自立突起物とこの触手は紳士達が最初にお世話になるMODなのだ。導入が簡単なのだ。
「後輩のクニヒロくん(仮名)が学生の時に作ったんだよな。懐かしい」
ラベルには謎の文字が書かれてる。
ゲームであればコンソールコマンドで打ち込むチートコードだ。
◆
『ooAasenende_1.setPerkSkill <文字化け> true』
◆
このチートコードは『加護』をアクティブにするコードかな。
文字化けのとこは元ゲームでも16進数のコードを打ち込むので文字化けしてなくても判らなかっただろう。
ooAasenende_1はMOD作者が適当つけたような文字列だな。
aaa000000とかMOD競合防止で付けちゃうような人いるから、それだな。
まあいいか、とガラス棚の奥へ戻す。
なんとなくおっさんだった頃の魂が入ってる気もするし。
若い娘の姿であまり触れるべきもんでもないだろう。
それに魂を瓶詰めの中に隠すって魔女っぽいからね!
◇
「街はどこだったかな」
半年前のノートを開いて地図を見る。
うろ覚えの地図によるとすぐ近くに街があるらしい。
それと、MODで追加したボスキャラも近場に。
ゲームと違って地図は見れない。
「魔法を全部覚えてるデータで良かった」
便利魔法の『遥道』を使うとすっと行くべき道が光る。
『遥道!』
光る糸玉が走っていく格好良いエフェクトだ。
この魔法のいいところはフィールドでは街道沿いを使って
迷宮では行ける道を示してくれるところだ。
安全なルートで無理なく導いてくれる。
「街道沿いなら追加ボスも居ないだろう」
レベル1じゃ無理な相手だ。
ボスのレベルは最低でも60あるから。