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鳥籠の冒険譚  作者: ゆめすむ堂よっし
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鳥籠へようこそ

「フフ、これであなたは私のものよ」


 神崎桜は物陰から深海優一を覗き見てほくそ笑んだ。彼女はたった今結界の術式を完成させたのだ。高校に入ってからたまたま三年間同じクラスの彼を、桜はずっと見ていた。いつもぼんやりとして何を考えているかわからない深海に、桜は何故だかわからないがずっと惹かれていた。しかしほかの男子生徒とつるむこともなく独りで静かに過ごす彼は、どかこ近寄りがたい雰囲気を放ち、結局桜は一度も深海に話しかけることなく高校三年の夏休みを終えようとしていた。


 夏休みも残りわずかとなった時、桜はついに腹を決めた。深海優一を誘拐し、監禁すること。桜にはその力があった。彼女は魔術師の血を引いていた。





 深海が異変に気付いたのは、自分の部屋で起床しリビングへ降りて行った時のことだ。母親におはようと声をかけたが返事がない。もっと言えば彼がリビングに入ってきたことにさえ気付いていないようだった。おかしいなと思い、母親の肩を叩こうとすると彼の手は母親をすり抜けた。そこで深海は今何かおかしなことが自分の身に起きていると自覚した。


 深海が自分の部屋に戻るとベットにお嬢様風の恰好の女の子が腰かけていた。同じクラスの神崎桜という女生徒だ。訳が分からず頭を抱えていると、桜は不意に話しかけてきた。


「優一君、おはよう。かなり奇妙な状況に巻き込まれたはずなのに、思ったより落ち着いているのね。そういうところも素敵よ」


 深海はやれやれという感じで頭を掻いた。


「何故君がそれを知っているんだ。そして何故君は僕と話ができる? 訳を知っているなら教えてくれないかな」


 桜はクスクス笑って深海を眺めていた。


「きっと私達特別な関係なんだわ、なんてね」


 おどけている桜に深海が冷ややかな目を向けていると彼女は続けた。


「種明かしをすると、あなたをこの空間に引き込んだのが私だからよ。驚いたかしら」


 桜は如何にも楽し気に声を弾ませる。深海はため息をついた。自分が神崎桜によって何かとても面倒なことに巻き込まれたことだけは理解したからだ。


「一体何が目的なんだ。なんで僕がこんなことに巻き込まれなきゃならない」


 冗談じゃない。僕のささやかな生活を乱すな。だんだん腹が立ってきた深海はやや苛立ちのこもった眼差しを桜に向けた。すると桜は深海に向き直って言った。


「どうしてあなたが巻き込まれたかって? 理由は一つよ。深海優一、あなたは私のさみしさをその身を持って埋めなければならない」


 毅然とした態度で言い放つ桜を見て深海はさっきよりさらに深いため息をついた。――やれやれ。どうかしている。


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