3. 試し切り
強い武器を手に入れたら、とりあえず振りたくなるものです。
なんとかこの文字どおりの裸一貫をどうにかする必要はある。
……あるのだが。
まずは、自分が手にしたこの力を試したくて仕方がなかった。
鞘に収まったままでも伝わってくる圧倒的な存在感。
鞘や柄は決して華美ではない。
だが、見る者を魅了してやまない美しさがあった。
意を決して、剣をわずかに引き抜く。
滑らかに姿を現した刀身は、
真紅に輝いていた。
思わず感嘆の声が漏れる。
「……綺麗だ」
それは、不完全だからこそ究極の美を持つ女神像のように。
あるいは、幾万の人々が人生で一度は見たいと願う名画のように。
ただそこにあるだけで、
心を奪われる美しさだった。
どれほど見惚れていただろうか。
涙が出るほどの感動の末、
ようやく本来の目的を思い出した僕は、
目の前の木へと剣を振り下ろした。
もちろん人生で剣など振ったことはない。
剣道の授業すら受けたことはない。
だが――
なぜか、正しい振り方が自然と分かった。
剣は何の抵抗もなく振り抜かれ、
目の前の木はワンテンポ遅れて滑り落ちる。
……はずだった。
だが、その木は地面に落ちなかった。
切断された瞬間、
火に包まれたように燃え上がり――
一瞬で燃え尽きた。
灰すら残さずに。
「……おいおい」
レーヴァテイン。
ラグナロクにおいて世界を焼いたとされる神の剣。
人の手に余るとは、
まさにこういうことを言うのかもしれない。
驚きが多すぎて感覚が麻痺してきたが、
木が燃え尽きた瞬間、
剣から身体へ何かが流れ込んでくるのを感じた。
おそらく、
燃えた木からエネルギーを吸収したのだろう。
僕は振り返り、
空から舞い落ちる木の葉へと剣を突き出した。
ひらひらと落ちる葉の中心を、
寸分違わず貫く。
「……なんだこれ、強すぎるだろ」
熱は持ち主に伝わらない。
切れないものはなく、触れたものを燃やし尽くす。
持ち主の身体能力を強化し、剣術まで補助する。
さらにエネルギー吸収で回復機能付き。
――盛りすぎでは?
そして、まだある。
僕は一度剣を鞘に収め、
少し離れた木の幹に立てかけた。
そして心の中で念じる。
次の瞬間。
剣は僕の手の中に戻っていた。
「……マジか」
さらに剣を身体へ押し当てると、
そのまま吸い込まれるように消えた。
「これが“リンク”ってやつか……」
身体に収納できるのは便利だが、
僕はあえて鞘の肩紐を使い、
背中に剣を背負うことにした。
全裸で何も持っていないよりは、
剣を持っている方が若干文明的な気がしたからである。
……いや。
全裸で神剣を背負った変態であることに、
変わりはないのだが。
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ここまでお読みいただきありがとうございました。
性能は完璧でも、装備欄にはまだ重大な空きがあります。
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