別行動
レデリックさんのイメージが良い人そうからやばい奴に変わった後、メイドさんに案内されて城の食堂で豪華な夕飯を食べた後、一人一人個人部屋に通された。こう思うと、俺達の世界とこちらの世界は時間が同じなんだな。向こうでも放課後だったし、ステータス云々の事があって時間もそこそこ経過しているから、こちらの世界の時間の経過を考えると元の世界でも夕食時だとしてもおかしくはなかった。
それはさておき、今日は休んで明日から勇者として戦闘訓練が始まるらしい。
しかし…それにしても俺は今後が不安だ。
このステータスじゃ多分戦闘としては俺は無力だろう、そうなると他に役に立つ方法を考えないといけないな。
火魔法を使ってみるか?いや、使ったことがないものを説明もなしに使うなんて危険だ。詳しく考えるのは明日の訓練をし始めてからだな。
とりあえず、今日は色々なことがあったから疲れたな。寝よう、ベッドは意外にもふかふかだ。
おやすみなさい。
……コン、コンコン
…扉を叩く音……。
んん、朝か?今何時なんだ?
部屋の窓を遮っていたカーテンの隙間から、陽の光が漏れて僅かに部屋を照らしている。思ったよりも熟睡してしまっていたらしい。
「はぁ~い」
「おはようございます、朝食の支度が出来ました。食堂にお越しください」
「わかりました。すぐ行きます」
俺がそう言うと扉の先にいたであろうメイドさんはいなくなったか、静かになった。足音が確認出来なかった、おそらく足音を最小限に歩く方法とかあるんだろうな。
そんな事を考えながら、俺はベッドから起き上がると昨日支給された服に着替えて部屋を出る。
昨日の夕飯を食べた食堂に行くと、まだ来てない人達がいて空いている席の方が目立つ。
朝食は少し硬いパンとスープと肉の照り焼きみたいなの。何の肉かはわからないが、美味しかった。
少ない感じだがこれから訓練だから食べ過ぎると動けなくなるから妥当だろう。
朝食を食べて少し休んだ後、城の警備をしている完全武装の騎士に連れられて城の訓練場に向かう。
その道中で、廊下でティアリスさんとレデリックさんが話している姿が見えた。
どうするか?俺は多分皆と同じ様な勇者ではないはずだ。ステータスカードを見てもそれは明らかだ。2人に詳しく話して今後の事を相談した方が良いのかもしれない。もしかしたら、勇者じゃないからこの城から出ていけとか言われるかもしれないけど、俺だけじゃこの状況では動けないし、目標とする指針がない。当たって砕けるしかない。
俺はそう決意をし、騎士に付いて歩く一団の最後尾から離れて2人の元へ行く。
「すみません」
「ん?あっ!おはようございます、勇者様」
「おはよう、今日からよろしくな」
声を掛けた俺に、朝日も凌ぐ微笑みをして挨拶をしてくれるティアリスさんと、片手を上げて気軽に挨拶をしてくれるレデリックさん。
「おはようございます。あの、その事で相談があるんですけど、とりあえず俺のステータスを見てもらっても良いですか?」
二人に挨拶を返しながら、俺はステータスカードをティアリスさんに差し出す。
「ステータスですか?何かわからない所がありました…えっ!平民!?どうしてッ?」
「どうしたんですか、ティアリス様?」
ティアリスさんが持っているステータスカードをレデリックさんが覗き込む。
「ん?職業が平民でスキルが火魔法Ⅰだけ?どういうことだ?」
「これは…どういうことなんでしょうか?」
「実は…」
困惑している2人に、俺は元の世界での環境や実力を細かく説明し、そして転移する時の事も説明した。
自覚があるとはいえ、昨日初めて会ったこの人達に自分の平々凡々な事を話すのは少し恥ずかしかったが、命には代えられない。
「魔法陣が一つに…」
「はい…。こういう事ってよくあるんですか」
「そう何回も聞いた事はないが、同じ魔法だとそういう事象があるとは聞いた事がある。特別に不思議な事ではないな、つまり君は勇者様方の転移に巻き込まれてしまったということか」
なるほど、頻繁には起きないけど珍しい現象という訳でもないって事か。
レデリックさんの言葉を聞いて、完全に巻き込まれてしまったのだと改めて理解する。
「どうしましょう…戦闘職じゃない人が戦闘訓練なんて危険です。私は戦闘訓練には参加しない事を勧めますが…レデリックはどう思う?」
「ステータスを見る限り、これでは厳しいですね」
やはりそうだよな。他の人達がどれほどのステータスかは分からないが、それでも皆に付いていけない実力なのは確かだろう。
ならば今俺がするべき事は…。
「じゃあ、一つ提案してもいいですか?」
俺は一つ考えていた事を伝える。
「この城、もしくはこの国の中で本が多い所があれば教えてください。まずは、そこでこの世界の色々な事を勉強して、それから訓練に参加したいです。もちろん、他の人達の邪魔はしないで、剣の扱い方などの基礎から始めるので」
俺がそう提案をすると、
「確かに、まずは知識。体力などの基礎的な動きや経験があった方が良いですね」
「そうだな、魔法の相性など座学も訓練に組み込むつもりでしたが、こうなっては君は別でした方がいいだろう」
二人は俺の提案を聞いて頷きながら答えてくれる。
「はい、そのようにお願いしたいです」
改めてお願いをしながら頭を下げると、
「では、城の図書室へは私が案内します。レデリック、他の勇者様達の事はよろしくお願いします」
「わかりました」
ティアリスさんが道案内をしてくれる事になり、レデリックさんはティアリスさんの指示を聞いて行ってしまった。
…こう思うと、王女様と二人っきりというのも不用心な気もするのだが…。それは大丈夫なんだろうか?
俺がそんな事を思っていると、
「それではえっと…」
ティアリスさんが、俺の事を見ながら少し困った表情をして言葉を詰まらせている。
「そういえば、自己紹介してないですね。俺は柊って言います。」
ステータスカードを見ているけど、やはりしっかりと言葉で自己紹介をするべきだと判断して、俺は名前をティアリスさんに伝える。
俺の名前を聞いたティアリスさんは少し安心した様子で、
「シュウさんですね。よろしくお願いします。私の事は…もうご存知ですよね?」
微笑み、少し冗談を言って悪戯っ子の様な笑みを俺に向けながら挨拶をしてくれる。
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
そんなティアリスさんの様子に、俺は王女様だけど親しみやすい人だなと思いながら挨拶を返した。
そんなこんなでお互い自己紹介し、彼女の案内の元図書室へと向かうために歩き始めた。
「…柊ちゃん、ティアリスさんとどこに行くのかしら?」
読んでくださった皆様、ありがとうございます!
評価や感想、ブックマークをしてくださると嬉しいです。
誤字脱字がありましたら、感想などで報告してくださると嬉しいです。
よろしくお願いします。




