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初代勇者を腕にー改稿版ー  作者: 雪羅


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20/20

sideリリアーナ・シャル・ティオレット

初めて見た時、瀕死の男の子は息も絶え絶えだった。表情は苦痛に歪み、瞳には絶望。右腕も欠損していた。

昔、私がいた戦場で見た人々と同じ様子だった。ただ彼らと違う事は、男の子のいる場所が体を癒すには良い泉だという事。

今私が回復魔法を使っても、おそらく彼の体には毒になってしまう。もう何年も私は人を助ける魔法なんて使っていない、加減も忘れてしまった。

神の見習いとして昇華してしまった私の力は、加減を誤ると大変な事になる。

時間は掛かるが、今は泉に浸かって体を癒してもらうしかない。

私は一言だけ男の子に泉に留まる様に伝えて、部屋へと戻った。

次に会った時には、男の子の体の怪我は治っていた。と言っても、単純な怪我だけが治っていて欠損してしまっている右腕は傷口が塞がっている状態で治っていた。

男の子の様子は、困惑している感じ。当たり前よね、こんな洞窟に一人で住んでいる人なんて怪しいに決まっている。

でも、それは私だって同じ。

悪意がないのは、様子を見れば分かる。それでも、私は男の子が怪しい者なのか調べるために密かにスキルを使用して男の子を見る。

――ッ!?。

私は今まで何度もこのスキルを使用して、男女問わず子供から老人まで見てきた。人だけでなく、魔族だって。

でも、初めて彼の様な魂を見た。

子どもの様に無垢ではない、大人の様に濁ってもいない。

決して美しく綺麗な魂ではない…と言える。

しかし、どこまでも透けている魂の色をしていた。

真っ直ぐで、どんなにその魂に影が生まれてもそれを受け入れて、しかし自分を偽る事無くいようとする。

私にはそのように感じた。

…私の魂は、白銀に輝いている。曇りは無く、眩い輝きが自分の目に映る。

その輝きは、数多の魔族を斬り伏せても澱む事は無かった。自分が守ってきた人達に恐怖の瞳を向けられても、その輝きは鈍る事はしなかった。まるで、私は魔族を殺しても、親しい人達に畏怖の視線を向けられても何も感じない様に、その魂に変化は無かった。

私は自分自身が怖くなった。世界を護った勇者は魔族だろうと人だろうと、敵だろうと味方だろうと何も自分に影響を及ぼさないのだろうかと。

不変、それが私の魂なのか。

人の身でありながら、魂はそれから逸脱していた。

だからこそ、私は神の見習いの申し入れを受け入れた。

神もまた、その存在は不変だ。

神が変わったとしても、それが世界に及ぼす影響は変わらない。

神は、ただのこの世界を維持するためにいるだけでしかない。

不変の私には、座するべき場所なのだろう。

しかしそこもまた、私には居心地が悪かった。ただ人の営みを傍観するだけが、勇者として生きてきた私には耐えられなかった。直接ではなくても、私は誰かの助けになりたかった。

そんな中途半端な私には、彼の魂はとても歪に…しかしとても羨ましいモノに映った。

曇っているのに透けている、眩くはなく微かな輝きとも言えない灯の様な光、その何とも言葉に言い表せない魂の在り方に私は――……。




だからか、私は彼の事が心配になってしまった。

これから先、どのような選択をしても彼は未来には苦難が降りかかってくる。

もしかしたら、最悪の結果を招いてしまうかもしれない。

そう考えると私は今までと違う、本能的に彼の側にいたいと思ってしまった。

今までの自分からは考えられない、感情的な衝動。

勇者としての私の時でも、彼と出逢うまでの私では考えられない衝動に、困惑と同時に高揚してしまった。

相反すると言っていい曇りと透明、そんな魂の在り方をしている彼と一緒にいたい。

もしかしたら、彼を知る事で私の魂も変化をするのではないかと。

私はそうして、シュウと共に旅に出る事に決めた。


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