18 救えない距離
エトの表情が、ふっと緩む。
「……良かった……!」
「無事で……今、助けますから!」
柵に手をかける。
「どこから入れば――」
「エト」
低い声。遮るように、ダニエルが言う。
「……後ろの霊獣使いも聞け」
空気が変わる。
そのとき――
雲の切れ間から、月明かりが差し込んだ。
わずかな光が、鉄柵の隙間をすり抜け、
闇に沈んでいた地下牢の奥を、淡く照らす。
その光の中で――
初めて、ダニエルの顔が見えた。
やつれた頬。
だが、その目だけは――
まっすぐだった。
「お前たちは――帰れ」
「……は?」
エトが顔を上げる。
「何言って――」
「マルコ殿下だ」
短く、断ち切るように。
「農業村襲撃も、隕石事件も……全部、あいつが絡んでる」
リクの息が止まる。
「……それは」
エトが言葉を選ぶ。
「助けた後に――」
「エト!!」
初めて聞く、強い声だった。エトの動きが止まる。
「聞け」
低く、押し殺した声。
「……鍵は壊された」
「え……?」
「鍵穴ごと、金属で塞がれてる」
「だから――」
「外からは、開けられない」
「そんな……」
エトの手が、ゆっくりと柵を掴む。
「で、でも……!」
「今からでも仲間を呼べば――」
「無理だ」
「……俺は、ここで殺される」
静かだった。
あまりにも、あっさりと。
「見張りのコウモリが昨日から消えてる」
「……嫌な予感しかしねぇ」
その言葉に、重みが乗る。
「だから――」
「お前たちは戻れ」
「この情報を、本部に伝えろ。それが一番、価値がある」
「ふざけないでください!!」
エトが柵を叩く。
ガンッ!!
「くそっ……!!」
もう一度。
ガンッ!!
びくともしない。
「エト!」
「無理だ!」
「この城壁は――壊せねぇ!」
「……っ」
エトの拳が震える。
「そんな……」
――その時。
ぴょん、と。
ダンさんが前に出た。
小さな体で、柵の周囲をじっと観察する。
じっと、見つめる。
「……なぁ」
ぽつり、と呟く。
「これ」
「おいら、外せるかも」
「……え?」
エトが振り向く。
続く




