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【お陰様で4万pv】ハズレスキルで"最弱"霊獣ダンゴムシを引いた俺、実は"最強"霊獣だった件〜戦争を止めろ!王都の次は世界を救え  作者: タルトタタン
第四章 ダニエル救出編

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15 遺書

 霊獣管理協会本部──

 手入れの行き届いた中庭に、涼やかな風が流れていた。回廊を歩いていたヤコブは、ふと足を止める。

 

 視線の先。

 場違いなほど華やかな衣をまとった男が、そこに立っていた。

 

「……ヤコブ。探したぞ」

 

「マルコ殿下……? なぜこのような場所に……」

思わず背筋が伸びる。

 

 第一王子が協会本部を訪れるなど、異例中の異例だった。

「どうかされましたか?」


マルコは柔らかな笑みを浮かべ、ゆっくりと歩み寄る。

「いやなに……君は随一の剣士だと聞いてね」

 その視線だけは笑っていない。

 

「明日、ぜひ私に剣の稽古をつけてくれないか?」

「……稽古、ですか」

ヤコブは一瞬だけ言葉を止める。

「王族直属の指南役がいらっしゃるはずですが……」

 

 マルコは小さく首を振った。

「いいや」

 

間を置いて、はっきりと言う。

「私は――ヤコブに頼みたい」

 

 穏やかな声音。

 

 ヤコブは静かに息を吸い、敬礼する。

「……承知いたしました」

 

「感謝する」

マルコは満足げに微笑む。

 

「では明日、夜。城内の訓練場で待っている」

 それだけ告げると、踵を返す。

衣が揺れ、風とともに中庭から消えていった。

 

 残されたヤコブは、しばらく動かなかった。

(……夜の城内で、王子自ら稽古……)

あり得ない話だ。

 

 月が昇りかけた空を見上げる。

(……何かあるな)

胸の奥に、確かな違和感が灯る。

 

 そして――

 

(……来たか)

 それは、ほとんど確信に近かった。

 


 数時間後。

 ヤコブの屋敷の扉が、静かに開く。

「……ただいま帰りました」

 

灯りの奥で、春香が振り向いた。

「ヤコブさん」

 

「二人は向かいましたか?」

「えぇ。朝に出発したわ」

 

 一瞬の沈黙。

 

「……そうですか」

それだけ言って、ヤコブは歩み寄る。

 

 そして――

 

 そっと、春香を抱き寄せた。強くはない。

 

 春香は一瞬だけ目を見開き、すぐにその背に手を回す。

「……どうしたの?」

「いえ」

 

 ヤコブは、わずかに笑う。

「少し、疲れただけです」

 

 春香は何も言わない。

ただ、少しだけ抱きしめる力を強めた。

 

 やがてヤコブは、ゆっくりと離れる。

 

「一度、書斎に寄ってから……本部に戻ります」

「……わかったわ」

 

 

 ヤコブの書斎。

 扉を閉めた瞬間、外の気配がすべて断ち切られる。

 

ヤコブは机の前に立ち、しばらく動かなかった。


 やがて、胸元に手を入れる。取り出したのは、一通の封筒。

 

 すでに書かれている手紙。

(……使わずに済めば、それが一番だ)

わずかに目を伏せる。

 

 そして、引き出しを開け――

奥へと、静かにしまった。

 

 封には、ただ一言。

 

 ――遺書。

 

 引き出しを閉める。小さな音が、やけに大きく響いた。

 

 ヤコブは目を閉じる。

(……さて)

 

 覚悟は、もう決まっている。

 

 

 扉へ向かい、歩き出す。その背に、躊躇はなかった。

 

 夜は、静かに深まっていく。

 



 

続く

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