【19話】隣にいてくれる大切な人
レティスが目を覚ますと、そこはいつものベットの上だった。
体を起こす。
隣にはティオールがいた。
「気が付いたんだね。おはようレティス」
ティオールが安堵したように微笑んだ。
「ディバイアスとスラストは、衛兵に身柄を引き渡した。漆黒の影と君に関わる記憶をすべて消した上でね。ラットンと同じさ」
ティオールがことの顛末をしてくれる。
レティスはその間、ずっとティオールを見つめていた。
瞳を大きく見開き、ふとんをギュッと掴んでいる。
「どうしたんだ? もしかして傷が痛むのか? おかしいな……回復魔法をかけたのだが」
「違うわ。……私、記憶を失っていた。でも、思い出したの」
大木の幹に体を打ちつけたときの衝撃で、レティスは書き換えられた記憶が戻っていた。
「私は小さい頃、いつも男の子と遊んでいたの。魔法がとっても上手な男の子よ。彼は優しくて思いやりがあった。私は彼のことが好きだった……恋していたの。将来は結婚したいって、ずっと思っていた。でもある日、私の家が盗賊に襲われてしまったの。両親は殺されて、私も重傷を負った。そのことで結局、男の子とは離れ離れになってしまった」
レティスの瞳から涙が流れる。
「やっと会えたね……ティオ」
「――!?」
ティオールが大きく瞳を見開く。
「シンシア……シンシアなのか!」
レティス――シンシアは大きく頷く。
「生きていたんだね!!」
ティオールが強く抱きしめる。
シンシアもまた強く抱きしめ返した。
「よかった! 本当によかった……!!」
ティオールの瞳から大粒の涙がこぼれていく。
「私、あなたにずっと伝えたかったことがある。大好きよ、ティオ」
「あぁ、俺もだ! 君のことを愛している!!」
十二年越しの再開。
涙を流す二人は、長い時間抱き合っていた。
******
それから一年後。
シンシアとティオールは、夫婦となった。
今もグドラの森で仲睦じく暮らしている。
ディバイアスの襲撃を最後に、もう追手はきていない。
だがらといって、もう終わりとはいえない。
帝国がシンシアの殺害を諦めたとは思えない。
襲撃を受ける可能性はまだ残っている。
でもシンシアは、大丈夫だと信じている。
世界で一番大好きな夫が側にいる。彼が必ず守ってくれると信じている。
だからシンシアは、安心して日々を暮らすことができていた。
「シンシア。今から湖へ行かないか? 今日の満月はとっても綺麗なんだ」
「うん!」
二人は手を繋いで、森の中を歩いていく。
その手は強く繋がれている。
そこには、二度と離れない、という二人の意志がこもっていた。
これにて完結です!
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それではまた、次回作でお会いしましょう!




