【16話】彼の心のありか
ティオールと距離をとりつつ、レティスとフィードはあとを追っていく。
「念のために確認しておきたいのだが、そなたはティオールのことを好いているということでよいのだな?」
レティスは顔を真っ赤にした。
こうも直球に言われると、なんとも恥ずかしい。
うまく答えられなくなる。
「わかりやすい反応をするではないか」
フィードがニヤリと笑う。
「いつから好きになったのだ?」
フィードが意地悪をしてきた。
尾行に付き合わされている仕返し、とでも言わんばかりだ。
「そんなのどうでもいいでしょ! この話はもう終わりよ!」
強引に話を終わらせる。
そんな恥ずかしいこと、フィードには絶対に話せなかった。
ティオールの向かう先はグドラの森だった。
どんどん奥へと進んでいく。
(まさかこの森の奥に、美しい女性が住んでいたりして……)
「ねぇ、フィード。この森の奥に女の人が住んでいたりしない?」
「聞いたことはないな。この森で暮らしているのはそなたとティオールだけだぞ」
「それならよかった――あ、ここが目的地みたいね」
開けた場所へ出たところで、ティオールが足をとめた。
レティスとフィードは大木の陰に隠れながら、ティオールをじっと見つめる。
「あれは……墓のようだな?」
そこには大きな石碑が建っていた。
名前も彫ってある。
ティオールは石碑の前にカーネーションを置いた。
瞳をつぶって、両手を合わせる。
口元は微笑んでいる。
でもそこには、悲しさと寂しが入り混じっていた。
「どうやらティオールは、墓参りにきていたようだな。よかったなレティス。女に会いにきたのではなかったぞ」
「……ううん。ティオールは女の人に会いにきたのよ」
「……なにを言っているのだ?」
「フィード。帰りましょう」
静かに呟いたレティスの顔には、陰りがさしていた。
レティスは石碑に刻まれた名前を見てしまったのだ。
そこには十二年前に殺されてしまったティオールの幼馴染――シンシアの名前が刻まれていた。
ティオールのあんな顔は初めて見た。
彼の心は今も、十二年前にある。
シンシアを亡くしてしまった日から、ずっとそうなのだろう。
今は亡き幼馴染のことを忘れられず、想い続けている。
ティオールには既に好きな相手がいた。
レティスが好意を伝えても、それは決して届くことはない。
それはまぎれもなく、失恋だった。




