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追いはぎ

咲は曲の礼として金子を受け取ると、それを懐にしまいこむ。そのまま何事もなかったように屋敷を去っていく。去り際、八郎兵衛がいつもより渡す金子の量がかなり多いと不思議がっていた。

魔を祓ったから欲が薄くなったのだろうが、それを説く気はなかった。

あやかしなど普通の民は知らぬ方がよい。関わることなく生を全うできればそれが一番なのだ。

比叡山や武家に取りいる坊主のように教えを説くのは渡り巫女のすることではない。

 来た時と同じ道を再び歩く。

 来る時は野良仕事に精を出していた民も、鍬や鋤を担いで家へと向かう者が多くなっていた。

夕刻が近くなり、蝉の鳴き声に日暮が混じり始める。屋敷に一晩泊っていくことを勧められたが咲はそれを固辞した。

宿坊が近くにあるのでそこに泊る予定だったし、次の依頼も控えているから急ぐ必要が合った。

屋敷を出てだいぶ時が経つ。夕闇が東の空から広がり始め、周囲の草木が茜色から闇色に染まりつつある。田畑の香りが咲の鼻に届かなくなり、濃い緑の匂いが鼻腔を満たし始めた。

道が二つに分かれているところに差しかかる。一つは山の方へ、一つは海の方への道だったはず。

咲が鼻を鳴らして道を確かめていると、街道近くの木々から数人の男たちの気配がした。

足音からすると五人。いや六人か。

荒紐で作った帯に刀を差し、肩には棒や槍を担いでいる。そのうちの何振りかからはひどい錆びの臭いがしたことからすると、おそらくは落ち武者から狩ってきたものだろう。

「女だ、女だぞ」

「しかも別嬪だぜ」

「侍の一人もつれていやがらねえ、けへへ」

咲に対し下品な言葉を浴びせ、汗と泥と垢の臭いが混じった臭いを撒き散らしながら近付いてくる。

すでに村からは離れてしまっており、大声を出したとしても木々に吸い込まれ届く距離ではない。たとえ届いたとしても彼らは咲をさらって林の中に姿をくらませた後だろう。

「女、命が惜しければ身ぐるみ差し出せ」

「それにあの屋敷でもらった金子もな」

「お前さん自身も差し出してもらおうか、ぐへ」

彼らは血走った目で、口々に勝手な要求をしてくる。

男六人の欲望と暴力を前にして、咲は氷柱の如き声で呟いた。

「愚かな」

女一人にやられるとは想像もしていないのだろうが、女がわざわざ一人で旅をする理由を少しは考えてみなかったのか。


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