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バイト先のおやつを期待して道に出て走っていると、交通量が急に増えてきた。
しかもほとんどが俺とは逆の進行方向。
つまり郊外へ向っている様子。
俺も休日を満喫したいもんだ、と考えていると一台の車が俺の車線に入ってきて猛スピードで逆走してきた。
慌ててそれを避け、ふらつきながら道の端に原付を止めるとそれを皮切りに他の車たちも次々と車線を無視して逆走し始める。
いや、これっておかしいよ。絶対に変だよな。
車に乗っている人たちの顔を見てみる。
誰もが一様に焦りと不安と、そして恐怖を張り付けていた。
ただ事でない様子に呆気にとられながら原付を押しながら歩道を歩いていると前の角から真っ赤な服を着込んだ女の子が現れて前のめりに倒れて膝をついた。
進行方向だったから近づいて「大丈夫?」と声をかけた時に気がついた。
その女の子の服の赤はおそらく血の赤だ。その血の赤で服はぐっしょりと濡れている。
「どうした? どっかケガしてんの?」
原付のスタンドを立てて、女の子に声をかける。女の子は流した涙と鼻水を隠そうともせずに顔をあげた。高校生ぐらいだろうか。
「警察は? 警察はどこですか?」
そう言って女の子は嗚咽を漏らして声をあげて泣き出す。