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「でもそれじゃ例え今の状況から抜け出せても私はこの苦しさを一生背負っていかなきゃならないじゃないですか」
「背負ってけよ」
言ってやると三上はまた目に涙をためた。
「でも背負うのは苦しみじゃない。親の想いだ。親の子を想う気持ち。俺もまだわかんないけど、それはきっと三上の親を想う気持ちと同じ重さだと思う。今回、お前と出会って俺もそれに気づかされた。一緒に背負おうぜ」
三上が泣き出して、慰めるために立ち上がった。これからどうなるのかはわからないけど、俺たちは人間だ。
最後まで心ある人間であるべきだ。
「ん? 地面が震えてないか?」
宇崎さんが言うと同時に俺も足の裏に違和感を得た。
三上も同様のようで赤い目で足元を見る。
震えている。
かすかに振動している。
「本当だ。震えて……」
ドンと縦に激しい突き上げがあって数センチ浮き上がる。
時間が随分とゆっくりになって周りを見てみると車も人も軽々と跳ね上がっていた。
と地面に着地した瞬間、時間の流れが元に戻って今よりもっと凄まじい震動が起こった。