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田中さんの言うように道の脇には車から降りた人たちが頭を抱えて座り込んでいたり、家族で円になって抱き合っていたり、中には人目を気にせず泣いている大人や歩いて山中へ向かう人たちも見える。
化け物から逃げようという仕草はどこにもなかった。
「事故でも起きて通行できなくなったか?」
渋滞の最後尾につくと、すぐさま大人や老人たちが怖い顔で近付いてきて窓をバンバンと叩き始めた。
「どうしました?」
宇崎さんがパトカーから降りると「どうしました? じゃねぇっ! 何が起きているんだ! 早くなんとかしろっ!」と詰め寄られる。
腹が立った。
この事態は宇崎さんのせいじゃないし、警察官が一人でなんとかできる問題でもない。
そんなの俺にだってわかるのに、どうして俺より年上のこの人たちは宇崎さんに責任を押し付けようとするんだろう?
「卑怯者」
三上がつぶやいた。
「俺たちも降りよう。車は動きそうにない」
田中さんに言われて俺と三上もパトカーから降りた。すると三上の血まみれの姿に詰め寄っていた人たちもひるんだらしく、その機会を見逃さずに適当に周りをなだめた宇崎さんはトンネルの方へと歩き出した。
短い時間でも一緒に過ごした仲間意識って奴かな、俺たちもそれについて行った。
「なんなんだ、これは?」
「もう終わりだ。逃げようがない」
「どうなったんだよ。この世の終わりか?」
すれ違う人たちからは負の言葉しか出なかった。
この陰気な紫の空にいやにマッチする。




