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こっちのはけっこう近くまで来ている。距離にして二百メートルぐらい! しかも早い! 寒気が背筋を貫いて全身の毛が逆立った。
「早く車を出そう! 逃げよう!」
騒ぐ田中さんをよそに宇崎さんは拳銃を抜いた。
「何をしているんだ! 早く車に乗れ!」
「彼女がまだだ」
「さっきはたくさんの人を見捨てたろう! 今更、女の子の一人ぐらい……」
「うるさい! 黙ってろ!」
宇崎さんは田中さんに吠えて、化け物を迎え撃つために車道へ向かった。
「市民を危険にさらすなんて、あれでも警官か!」
田中さんは運転席へと素早く移動した。
「ちょっと、何やってんですか?」
「小野寺君も乗れ。あんなのに付き合ってる場合じゃない」
「でも車泥棒は犯罪でしょ? しかもパトカー。捕まったら重罪ですよ」
「ここで死ぬよりマシだ!」
田中さんの眼はマジだ。そりゃそうだろう。誰だって死にたくない。
この訳のわからない状況下で法律は俺たちを守ってはくれないんだ。
「どうするんだ? 乗らないのなら僕は行くぞ」
「ちょ、ちょっと」
くそっ! 三上、何やってんだよ。




