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「卑怯者」
三上がつぶやいた言葉が心に深く突き刺さる。その通りだ。俺は卑怯者だ。あの中に俺の家族はいないから危険に身を投じることなんて出来ない。怖いんだよ。
「来る! 来るぞ!」
田中さんが指す方を見ると胴体からキラキラと虹色の光を放つ化け物が触手で地面を蹴りながらこちらへ向かって来ていた。
宇崎さんはハンドルを切りながら車をバックさせ、方向転換すると来た道を戻る。
「どこへ行くんですか?」
「石川県へ行こう。それなら街の中心から離れながら向かうことが出来る」
ここと同じようなことになってなきゃいいけど。
それにしてもあの化け物スゲー数だった。
十や二十じゃなかったぞ。どっから湧いて出たんだよ。