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小野田の胸中 下
小野田は泣いた、男泣きに泣いた。
そして、涙で目を真っ赤に腫らした小野田は、ひどく後悔し、自分を責めた。
|(自分も一緒に出撃できていたなら・・・。)
そんな思いが何度も彼の脳裏をよぎった。
だが何を思おうと、神谷が帰ってくる事はない。
親友、神谷英司は死んだのだ。
その事をようやく自分の中で整理をつけた後、小野田は思った。
|(待ってろ、俺が絶対にお前の仇を討つ、必ず、必ずだ!)
その思いを胸に刻みつけた数日後、
米本土爆撃計画の話を受け、志願したのだ。
幸い、自分は以前九七式飛行艇を操縦した経験がある。
この手で操縦桿を握るのだ。あの日、握りたくても握れなかった分まで。
そう思い、何とか周りを説き伏せ、隊長機の主操縦士になった。
隣に尊敬する青木少佐まで居る、こんな幸せなことはない。
|(絶対に成功させてみせる!待ってろよ英司!)
見開かれた彼の双眸には、一切の迷いはなかった。
会合海域まで後、およそ半日である。
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