番外編短編・ちょうどいい障害者
新卒で人事部で働いていた。特に大手じゃない香料メーカーだったけれど、業績も安定しているし、環境もホワイトだ。
「部長、この障害者雇用のパート希望の男性、なんで落としちゃったんですかね。簿記一級の資格も持っているし、発達の特性も本人なりに努力して改善しているっていうのに。なんでです?」
それが疑問だった。趣味は数学というのはいかがなものだが、面接のときは子供の頃から一寸法師法師というあだ名で呼ばれていたエピソードを語り、案外感じが良かった。年齢もそこまでおじさんでもないし、他の応募者と比べて一番条件がいいのに。きっと採用されたら経理部で即戦力になってくれそうだと思う。
一方、部長は苦い顔。新卒の軽度知的障害者か身体障害者を採用したいと堂々と差別発言をしてくるではないか。
「だってこの一寸法師くんさぁ、ちょいどいい障害者じゃないんだもの。障害者の割にオーバースペックすぎる。俺からしたら障害あるのにハイスペなんて拗らせてそうだし、採用したくない」
「えー、そうですかねぇ?」
「それに経理部には須山さんいるじゃん。何回も簿記二級受けても受かんないあの人」
その話を聞いてハッとした。須山さんは良く言えばベテラン社員。悪く言えばお局さん。新卒採用の社員もいじめたトラブルメーカー。経理部のお荷物。呪物かもしれない。
他にも離婚したばかりの人もいるし、確かにあのお局集団の中、ハイスペックな障害者なんていたら、生贄になってしまう。ありありと想像できた。一寸法師くんが須山さん達にいじめられている光景が。
「そっかぁ。一寸法師くんは落とした方がいいってことか……」
「こんなこと言いたくないけどさぁ、低いスペックそうな障害者雇用の人がいると、けっこう他の社員のやる気出たりするんだよな。もちろん、何も問題起こさないで勤怠も安定している障害者だけど、人って下を見ると安心する生き物だしね」
そんな話を聞いてしまい、ますます笑えない。実際、前に勤めてくれた知的障害者の社員、ちょうどよかった。うっすら下に見られつつ、みんなから愛されていた。
「障害者雇用でハイスペなのも考えものですねぇ」
「そうだな。しかし障害者雇用の雇用率どうしようか。本当頭が痛い……」
結局、上司のいう通り障害者雇用の雇用率が達成できそうにない。仕方ないから、密かに障害者手帳を持っている人がいたら名乗り出てくださいと社内メールを作った。
まるで隠れキリシタンを探している宣教師になった気分だ。信徒発見しないかなぁ。私は踏み絵で迫害したりしないから、早く見つかって欲しい。やっぱり社員で隠れて手帳を持っている人が人事部的には一番ちょうどいいしね。
ご覧いただきありがとうございます。全編完結です。
書いていくうちに一寸法師くんが可愛くて仕方なくなってしまい、番外編もいつもより多めに書いてしまいました。
次は一切刺激がないライト文芸×ご飯×日常ものの予定です。本作とは方向性が全く違いますがよろしくお願いします。またモキュメンタリーも書けたらいいなと思います。




