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9-1・登校日の朝

〈バグの処理に失敗をした。

 現実世界に流出したバクを処理してもらいたい〉


 変な夢を見た。喋る光がわけの解らないことを言ってるの。「報酬を渡す為に顔を出す」とか言ってたクセして全然来ないし・・・どういうつもりなんだろ?「早く来い」って思ってるから夢で見たのかな?

 枕元に置いてあるスマホを手に取って今の時間を確認する。まだもう一熟睡できる時間だ。


「ミコト殿、眠れないのか?」


 ベッドの横に敷かれた布団で寝ていたツィホーさんが、僕の動きに反応をして話しかけてくる。


「家で『ミコト殿』はやめてくださいね。

 お父さんとお母さんが聞いたらビックリしちゃうよ」


 今日は僕がツィホーさんを担当する日。異世界の装備と服は脱いでもらって、体格が似ている藤原くんの服を借りているんだけど、見た目が日本人ではないので目立ってしまう。お父さんとお母さんは、僕に外国人の知り合いがいると思って驚いていた。まぁ、「別の世界の知り合い」なんて言ったら驚くなんて次元じゃ済まないだろうけどさ。


「いつまでいるんだろ?」


 異世界に行った翌日、皆で集まって反省会をした。真田さんが御手洗いに行った隙に、異世界転移前に課せられたミッション「真田さんを名前で呼ぶ」がクリアされなかったってことで、藤原くんからゲンコツを喰らい、陽ちゃんの理屈と武藤さんの脅しでガン詰めされた。その反省会も込みだったの?


 それぞれが叶える願いについては、陽ちゃんが「志望校合格」で、武藤さんは「世界征服」もしくは「お金持ちで格好いい彼氏が欲しい」。武藤さんのお願い、「彼氏」はともかく「世界征服」は叶わないよね。藤原くんは「願いは自力で叶えた方が楽しい」って理由で依頼する願いは無し。代わりに「俺の歩く道が犬の糞で汚れているのは許せない」から「日本中の野糞を出し主に強制返却する」だってさ。藤原くんが潔癖症ってのは以外と思ったけど、真田さん曰く「ふーみんらしい」だそうです。


 僕のお願いは「真田さんと同じ大学に合格」。ちょっと狡い気がするけど「凄い力が欲しい」とか「天才になりたい」みたく自分全否定みたいな超狡いお願いじゃないし、受験勉強はちゃんとしたんだから、ちょっとくらいのご褒美はもらっても良いよね?ちなみに、恥ずかしいので皆の前では「まだ決めてない」と言っておいた。


「ツィホーさん、異世界にちゃんと帰ってくれるのかな?」


 喋る光が顔を出した時にツィホーさんを引き取ってくれるかな?ダメって言われたら、僕が「ツィホーさんを異世界に戻してください」ってお願いしなきゃかな?


「真田さん・・・どんなお願いするんだろ?」

 

 真田さんは「お願いはひみつ」だってさ。少し・・・いや、かなり気になる。「世界平和」とか「温暖化現象の阻止」なんて立派なお願いしたらどうしよう。超個人的な願いを叶えたい僕が恥ずかしくなってしまう。


 真田さんが好き。こんなに好きって思える子は二度と現れないって思える。


「ミレン・・・結局、何者だったんだろ?」


 櫻花(おー)ちゃんのことを「諦めるのか?」って言われた。

 おーちゃんに向けていた「好き」は、真田さんに向けている「好き」よりも弱かった?そんなことはないと思う。なら、おーちゃんを嫌いになったわけじゃないのに真田さんのことが好きなのは、やっぱり、おーちゃんを諦めたからなのかな?おーちゃんより真田さんの方が手が届きそうだから、真田さんを好きになったのかな?


「わけがわかんない」


 そんなことないって思いたい。でも、ミレンに指摘された時、「絶対に違う!」って言い切れる自信が無かった。僕自身のことなのに説明できない。


「ダメダメ・・・他のこと考えなきゃ」


 この難題を考えると眠れなくなっちゃう。昨日も一昨日も寝つきが悪かった。目を閉じて、できるだけ別のことを考える。


「トモは元気になったかな?」


 異世界に行った翌日、智人(トモ)のお見舞いに行ったら、穏やかな顔で寝ていた。きっと、異世界でいつもの調子を取り戻しているんだろうけど、調べる手段が無い。


「こっちも考え出したら寝られなくなっちゃうんだよな~」


 真田さん&櫻花(おー)ちゃん案件とは違って悶々と考えることは無いんだけど、トモ案件の場合は、やり残した悔しさが多すぎてイライラとしちゃう。


・

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「やばい!寝過ごした!!」


 土日を挟んだ明々後日が卒業式本番なんだけど、今日は予行演習の為に学校に集まらなきゃならない。遅刻をするような寝坊ではないけど、朝ごはんを食べる時間は無さそうだ。


「ツィホーさん!起きて!行くよっ!」

「俺もか?」

「そーゆー設定なの!」


 どう見ても高校生には見えないんだけど、親には「親と喧嘩して家出をしたクラスメイト」って説明してある。


「図書館や公園で時間を潰してればいいからさ。

 とりあえず、一緒に家を出てくれないと困るの」


 着替えて、お母さんから「遅くまで起きてるからだ」と小言を言われつつ、「お母さんの自転車を借りる」と伝えて玄関を出る。お母さんに借りた自転車はツィホーさん用ね。


「この細い二輪車に乗るのか?」

「乗って交互にペダルを踏むの!

 馬に乗れるんだから、自転車くらい大丈夫でしょ!」


 フラフラと頼りなく自転車に乗るツィホーさんを従えて学校へと向かう。

 学校まであと10分くらいのところでスマホがLINE通知を鳴らしたので、信号待ちのタイミングで確認したら、陽ちゃんから「急いで学校に集合」とメッセージが入っていた。陽ちゃん、今日は登校日だよ。言われなくても、学校に向かっています。


「急ぐのはちょっと無理かな?」


 ツィホーさん、行き先さえハッキリさせてくれれば解散して良いのに、一緒に学校に行きたいんだってさ。おかげで僕は自転車のスピードを上げることができないんだよね。


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 早璃の願いは「尊人くんと同じ大学に合格」。凄い願いにも興味があるけど、根がリアリストなので持て余す願いを叶えようとは思わない。

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