1-1・統和の英雄~覚醒
2カ月半くらいで完結します。
高校3年生の2月末。
僕達が千幸高校で行うべきイベントは、来週の卒業式のみ。1月中旬の一次試験(大学入学共通テスト)と、つい先日(2月下旬)の二次試験を終えて、今は合格発表を待つ時期。
18歳になって、17歳だった頃と何が違うのか解らないけど、なんとな~く大人になった気分を味わって・・・あと1ヶ月で、同世代の大半が、大学生や専門学生、または社会人になって新しい生活に飛び込んでいく。・・・そんな時期。
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いつも通りの朝、いつも通りの風景を眺めながら登校をする。
30mくらい前では、片思いの相手・織田櫻花が、友達の土方さんと一緒に歩いている。
いつも通りに“美波中学校”の正門を通過。
「ん?」
いつもと何かが違う。ピリピリとしたプレッシャーが肌に突き刺さる。校庭で喧騒が発生している。いくつかの悲鳴が聞こえる。
「誰かが喧嘩でもしてる?」
僕は平和主義。暴力は苦手。少しくらい嫌なことをされても、気にせず笑って受け流す。中学生にもなって力や威嚇でしか存在感を示せない人を愚かだと思っている。
だから、下らない喧嘩なんて見て見ぬふりをするつもりだった。
「なんだ、あの人?」
校庭で暴れている人、周りの生徒達よりも頭2つ分くらい背が高くて、学校の服を着ていない。変質者が乱入している?学校内の小競り合いじゃなくてニュース案件か?
「イヤだなぁ~。あんな大人にはなりたくない」
校舎から佐藤先生と渡辺先生と小林先生と高橋先生が駆け出してきて、乱入者を囲んで対応をする。
「オマエ等デハナイ 邪魔ダ」
乱入者は変な日本語を喋りながら両腕を振り上げた。その両腕に長さ50㎝くらいの鉤爪が出現する。
「えっ!?」
あまりにも唐突な出来事だった。傍観している生徒達だけでなく、当事者の佐藤先生達も「何が起きているのか?」を理解できずに、乱入者が振り上げた腕を見つめている。
「に、人間では太刀打ち出来ない」
僕は恐怖で全身を震わせる。直感で理解した。あの乱入者は人間ではなく人の形をした怪物だ。眼を大きく広げ、日常ではない光景を見て息を飲む。
次の瞬間、怪物が腕を振り回し、鉤爪の攻撃を受けた佐藤先生達が血しぶきをあげながら弾き飛ばされる。
「ひぃぃぃぃっっっっ!!」 「きゃぁぁぁっっっっ!!」
周りにいた生徒達が一斉に悲鳴を上げた。いつもはイキって周りにイチャモンばかり付けている不良生徒達は青ざめている。日常に突然発生した非日常を冷静に受け止められる者など一人もいない。
「運命ノ子ハ 何処ダ」
先生達を退けた怪物は、ゆっくりと歩きながら首を左右に動かして、何かを探している。
怪物の進行方向にいた生徒達は、悲鳴をあげながら蜘蛛の子を散らすように逃げていく。その中には櫻花ちゃんの姿もある。
「居タ・・・運命ノ子」
怪物が人間ではありえない跳躍をして、おーちゃんの目の前に着地をする。おーちゃんは慌てて後退で距離を空けようとしたけど、転倒をしてしまう。
「おーちゃんっ!」
おーちゃんの友達の土方さんが、悲鳴に似た声でおーちゃんの名を叫んだ。
「ぬぉぉぉぉっっっ!!」
学校で一番強い(と噂される)鈴木先生が、竹刀を握り締めて校舎から飛び出してきた。
「織田っ!今のうちに逃げろっっ!!」
鈴木先生が怪物の背後に突進をして、振り上げた竹刀を怪物の頭に力一杯叩き付ける。だけど怪物には全く効果が無い。
「邪魔ヲスルナ」
鉤爪の一振りを受けた鈴木先生が弾き飛ばされる。鈴木先生の手から離れた竹刀が、僕の目の前に転がった。
櫻花ちゃんは動けない。顔面蒼白で腰を抜かしたまま、眼には涙を浮かべている。
「運命ノ子ヲ 抹殺スル」
怪物がおーちゃんの方に向き直って、鋭い鉤爪を振り上げた。
「いやぁぁぁっっっっっっ!!!」
おーちゃんが悲鳴を上げる!このままでは、おーちゃんの未来が奪われる!そう思った瞬間、僕の中で何かが切れていた!
「間に合うかっ!!?」
考えている余裕など無い!櫻花ちゃんを助けなきゃ!落ちていた竹刀を拾って、怪物に向かって突っ走る!
「やめろぉぉぉっっっっっっっ!!!」
間一髪!僕の振り下ろした竹刀が怪物の背に炸裂!怪物が仰け反って 蹌踉けた隙に、おーちゃんの腕を引っ張って立たせる!
「尊人っ!」
おーちゃんを背で庇うようにして数歩後退して、怪物との間合いを空けた!
「怪我は無い!?」
おーちゃんは安堵した表情で僕を見つめる。
「う・・・うん・・・・・・・・ありがとう」
夢中で動いてしまったけど、少し冷静に戻ると怖くて仕方がない。僕は暴力が嫌い。今まで生きてきて、喧嘩なんて一度もしたことない。あんな怪物を相手にして、どう戦えば良いのか解らない。でも、おーちゃんの危機を見過ごして平気でいられるほど腰抜けではない。
「・・・下がっていて!」
「大丈夫なの、尊人?」
先生達は血を流して倒れている。生徒達は怪物から距離を開けたままで、寄って来るつもりは無さそうだ。誰も頼れそうにない。
「な、なんとかする」
おーちゃんから手を離し、勇気を振り絞って怪物を睨み付ける!
「自分を信じたまえ!!」
僕に向けられた大声が聞こえる。
「・・・え?」
振り返ったら、正門前に赤い特攻服を着た人が立っていて僕を見つめていた。
「君の勇気がスイッチとなって、君の中に秘められた力が解放された!」
「秘めた力?」
「君が思うまま、闘志の赴くままに攻撃の意思を発するのだ!」
「・・・は、はい!」
アドバイスを受け入れた途端に、体の内側に溢れ出すほどの力を感じる!言われた通りに自分を信じて竹刀を構える!
「退ケ 部外者」
僕を睨み付ける怪物の目が青白く輝いた。
「ガォォォォッッッッ!」
怪物が怒りを露わにして飛び掛かってくる。
「僕は・・・部外者なんかじゃないっ!!」
おーちゃんにとっての“部外者”にはなりたくない。気勢を上げて怪物に突進をする!
何故だろう?怪物が隙だらけに見える。怪物が振るう鉤爪を楽々と回避できる。アドバイスのおかげで少し冷静になれたからかな?
「フゥン! タァァッ! ハァァッ!」
僕が放った竹刀の3打が怪物にクリーンヒット!数歩後退する怪物!僕は素早く間合いを詰め、更なる連打を叩き込んだ!
「ギャオォォォォォォォッッッ!!!」
苦し紛れに口を大きく開けて嘶く怪物!僕は渾身の力を込めて怪物の口に竹刀の刺突の一撃を突っ込んだ!
「ガァァァ・・・ァァ・・・ァ・・・」
剣先が怪物の頭を貫通!不気味に輝いていた眼が光を失う!
「オマエの敗因はただ一つ・・・おーちゃんに危害を加えようとしたこと!
野蛮な怪物には似合いの最期だ!」
怪物は脱力して、その場にグッタリと崩れ落ちた!
「まだ・・・終わってない」
怪物は仕留めた。だが、まだ周囲の緊張感は解けない。
僕にアドバイスをくれた赤い特攻服の人からの強大なプレッシャーを感じる。




