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第10話・君の終わり

 戦闘は終わった、と思った。

 次の瞬間、わたしはバータディルマに俵のように抱えられ家の屋根の上にいた。声も上げず訳もわからないままでいると瓦礫が崩れる大きな音がした。


 ━━━何が?

 人間の視覚じゃ追えない速度で、アレンとバータディルマが移動していた。

 この人、人の形した別の生き物なのかではないか?

 と思わず顔を見上げた。

 ふと近くで血の匂いがして一瞬自分が怪我したのかと思ったが痛みが一切ない。


「大丈夫か?」

「は…ハイ……。!!」


 バータディルマの肩からゆっくり降ろされた時に見えた彼の左腕から出血をしていた。


「ば、バータディルマ…さん!」

「きみ、なんでワタシの名前を」

「怪我!」


 怪我をしていることを指摘するとチラッと視線を向けてから「あぁ平気だ」と言うバータディルマ。現実的じゃないことが起こりすぎてすっかり忘れていた。

 音もなくバータディルマの怪我は治っていく。

 バータディルマが持つもう一つの異能力「自己治癒」だ。

 二つ以上異能力を与えられた〈ガーディアンズ〉メンバーは【原作】での登場はたった4人しかいない。その中の1人がバータディルマだ。



「少々厄介ですので、本当に逃げてくださいね」

「あ、でもっ」

「ああなってしまえば人間には戻れません。…ヴァンパイアとはそういう存在です」

「それは…」


 見ればわかる。でもわたしは、アレンは一体どこから因子を持ち出したのか知らなければならない。何か、何か別の…〈ガーディアンズ〉には存在していなかった思惑が存在しているような気がするのだ。


 そうこうしている間にいつの間にか周囲は明るくなってきていた。


「日が昇って来たな」

「!」

「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎━━━!!!!」


 悲鳴のような、慟哭のような叫び声を上げるアレンはすでに言葉も忘れ、人間としての理性すらも存在していない様子だった。

 脚も腰も力が抜けていて立てない。鞭を打って立とうとするが、気配だけでバータディルマに気づかれたのか「動くな!」と言われてしまった。


 朝日にやって身体中を炙っていくアレンは今もなお苦しみに震える声を出す。そんな中でバチッと視線があった。


「ッ…」


 金縛りにあったように動けない。

 上を見上げるアレンは一歩、また一歩と己の肉体が燃やされているにも関わらず救いの手を求めるように彷徨い、手を伸ばす。

 少しずつ、少しずつ…アレンの肉体は灰へと変わっていく。


「ぁ……ァ。ゆ…ィア…ゆき………しぃァ…」


 微かに聞こえる涙に震える声に、わたしは切なさを覚えた。

 アレンのことは今も嫌いだ。けれどエリオットが関わらなければ、彼は普通の人間だった。どこにでもいる普通の優しい好青年だったんだ。こんな仕打ちを受けていい人間じゃない。

 と思う一方で、その道を選んだのはアレン自身で、こうなることも考えられたはずだと。それでもいいと納得した結果がコレなんだ。同情なんて、彼の本意じゃないんじゃないか?


 わからない。何が正しいんだろう。わたしは、いま………彼をどう受け止めればいいんだろう。


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