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第69話:つまらないものですが……

5章です。夏休みの後半

尊花のターンです

「すぅ……はぁ…………」


 数日前。とにかくいろいろあった。

 いろいろあって、尊花さんともまゆさんともぶつかって、なんとか和解という道を選ぶことができて、わたしはホッとしている。

 やっぱり、仲良きことが一番である。それを証明できてよかったから。


 とは言え、だ。

 謝罪というものは、真摯な態度から行われる。

 あんな電話1回ぽっちでわたしの謝罪を受け取ってもらったとは思えない。


 ということで、今日は以前教えてもらった経路を辿って、尊花さんの家にやってくることにした。

 一般的な普通の民家だ。だがここに天使が住んでいると考えると、ある種の神殿のような荘厳な佇まいを感じさせる。

 おぉ、神よ……。あなたは最高だ。

 こんな神殿に今からピンポンすることをお許しになられるだろうか?


『いいよー』

「ちょっと黙っててもらえますか?」


 何故か邪神が反応した。なんで?


『いやいや、呼んだのはキミでしょー?』

「なんですか。最近静かだなぁ、と思ってたのに」

『カミサマが恋しくなった?』

「なるわけないじゃないですか」


 至極真っ当に、怒りも喜びも交えず、ただただ平坦な声を口にした。

 この神が来たら、大抵厄介なことになるというか、接してると面倒くさいんだよなぁ。


『でも最近キミ1人で居ることもないから、寂しくてカミサマの方から来ちゃった!』

「帰って」

『ひどー』


 それだけのことをアンタがやってるんだろうが!!

 まぁ、ほぼ無干渉だし、ソシャゲのデータを引き継いでくれたことには感謝してるけど。


『ま、カミサマもいいものを見させてもらったから、お礼を言いにね?』

「…………先日のこと?」

『もっちろーん! 落ち着くところに落ち着いて何よりだねー』


 心にも思ってないことを。

 でも落ち着いてホッとした、と言うのは間違いなかった。

 簡単なことではないのは分かっていた。自分の過去を晒して、受け入れてもらうのは。

 その上でこれからもよろしく、と言われたのであれば、握手して応じるしかない。

 尊花さんとまゆさんには、一生尽くしても足りないぐらいかもしれない。


『キミがどちらを選ぶのか、はたまたどちらも選ばないかも楽しみにしているからねー』

「うぐっ……」

『まさか保留にしようだなんて、思ってないよね?』


 そんなこと、するつもりはない。

 ちゃんと考えて、考え抜いて、尊花さんかまゆさん、どちらの告白を受け入れるかは決めるつもりだ。

 それが何年、何十年経とうと。生きている限り必ず。


『キミは変なところで真面目だからねー。気楽に生きなよー!』

「あ、消えた」


 人の家の前でカミサマと話すことになるとは思わなかった。

 また無責任な呪詛を吐き散らしまくって、消えていったけど。

 まぁ、声をかけてくれるのは、嬉しくないこともないわけだが。


「そんなことより。よし!」


 覚悟を決めて、インターホンのボタンを押下する。

 ピンポーン、と家の中で来客を告げる音色が響く。

 ドタドタと、廊下を走る音。それから重厚なドアが開けば、比較的ラフな格好の尊花さんがそこにいた。


「お、おまたせ! どうしたの急に?!」

「えへへ、ちょっと近くに寄ったので……」


 嘘である。ガッツリお土産も用意しました。

 それより、尊花さんが、か、かわいい!!

 普段しっかりオシャレしてきている私服とは違って、部屋着はTシャツと短パン。まるでわたしと同じコーデだ!

 でも黒い髪のショートボブはしっかりと手入れされている。動く度にふわふわ踊る毛先に、キュンッ! と胸が苦しんでしまうなぁ!


 でもTシャツはなんというか、アニメのシャツだ。以前ライブに行ったアニメのシャツ。

 意外、というか。わたし実は尊花さんの趣味とか知らないのでは?

 ゲームでもなにか隠している感じはあったけど、もしかしてオタクのご趣味がお有りで?!!!


「と、とりあえず中に入って! 暑かったでしょ?」

「は、はい! お邪魔しまっす!!!!」


 正直に告げます。「めちゃめちゃ」が5、6回続くぐらいには緊張してます!!!!

 最推しの家。ゲーム本編でもお目にかかることがなかった禁断のコリジョンの先……!

 あぁ、今、その敷地を1歩2歩と進んでいく。


 んー、香しい他所の家の匂い。

 尊花さんはこの家でいろんなことを学んできたんだろうなぁ。

 考えれば考えるほど、しみじみとする……。


「あら?」

「あ、お母さん」

「お母様?!!!!」


 そりゃ家に入ったら母君がいらっしゃいますよね?!!!!

 血筋を感じる艶やかな黒い髪のロングヘア。THE・主婦というファッションでわたしをお出迎えしてくれたのは、尊花さんのお母様だった。


「あらあら、お友だち?」

「あっ、はい! 相沢美鈴と言います!!」

「美鈴ちゃんね。……どこかで見た覚えが?」


 え、わたしは別にお母様とお会いした記憶はないのですが。

 というか、ゲーム内でも出てくることなかったですよ?

 ガチの初見キャラ。尊花さんの面影があるから、とてつもない美人さんで腰抜かしそうだけど。


「お母さん!」

「あらあら……」

「美鈴ちゃんはこっちね!」

「は、はい……」


 テンパってる尊花さん、かわいい。

 外では真面目ぶってるけど、家ではちょっとだらしない尊花さんを想像したら……。

 むふふ、萌え。


 っと、そうだ。お母様が居るなら、これを渡さなきゃ。

 先ほど駅のお店で買ってきたお土産の紙袋をお渡しする。


「これ、つまらないものですが……」

「あら、いいの?」

「はい、娘さんの尊花さんに粗相をしたので、そのお詫びに……」

「美鈴ちゃん?!」


 中はちょっと有名で美味しいと評判の窯出しプリン。

 ここのプリンは喫茶店のような濃厚な卵味が好きで、たまに贅沢する時に買ってたんだよねぇ。

 わたしも食べたいけど、ここは必死に我慢。

 ひとつ会釈をしてから、わたしはリビングへと歩いていった。


「粗相って、尊花ちゃん何されたの?」

「な、なにも?! も、もう……美鈴ちゃんってばー!」

「……なるほどねぇ」


 なんか不穏極まりない「なるほどねぇ」が聞こえた気がしたけど、多分気のせい。

 心を強く持て相沢美鈴。わたしは顔だけはいいんだから!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 今回はオフモードな尊花ちゃんという珍しいものを見れましたね。粗相をしてしまったので、と菓子折りを持ってくる美少女・・・。これは、尊花ちゃん後で根掘り葉掘りお母さんに聞かれ…
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