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第41話:悪い顔4人VS赤髪不良

 そんなこんなで浴衣に着替えたわけだが。

 我が母ながら、浴衣を代わる代わる機敏に試着させてた姿に恐ろしさを感じていた。

 この前のお出かけの件も考えていたけれど、お母さんって結構洋服関連強いな?

 仕事とか聞いたことなかったけど、服飾関連なのだろうか。今度聞いてみようかな……。


「やっぱり美鈴さんは水色だよねー」

「うんうん! 清涼感が出てて、一気にアイドルらしくなったなー!」

「そ、そうですか? えへへ……」


 まぁ着慣れてないから、文字通り浴衣に着させられている感じがものすごいのですが。

 わたしが着ているのは白と水色のグラデーションが鮮やかな浴衣。アジサイがモチーフで、ぱぁーっと花咲く花々は浴衣素人のわたしでも夏だなぁ、という気持ちを思い出させてくれる。

 要するに……。


「かわいいなー……、私の推し」

「ふえっ?!」


 こういう風に推しにべた褒めされるわけで。


「そ、そそそ!! そんなことないですよ! 尊花さんの方こそ、すっごくかわいいです!! わたしの5000兆倍ぐらい!!!!!!」

「そーかなー? 嬉しい!」


 ぐぅうううううううう!!!!!

 今日もわたしの最推しはかわいいなぁ畜生!

 尊花さんのテーマはひまわり。地味な黒いショートボブとは裏腹に黄色を基調とした華やかな浴衣。尊花さんの笑顔を象徴するかのような元気の出る色で、普段からネガティブなわたしもこれにはにっこり微笑んでしまう。

 これはもはや犯罪ではないだろうか。宇宙最強かわいい罪によって終身幸福刑ってことで!

 一生幸せになれちくしょうめ!!!


「ふたりとも、まゆさんの浴衣はどうかなー?」

「もちろんかわいいですよ!!! 最高!!!! 素敵!!!!!!」

「まゆちゃんもかわいいよー!」

「ありがとー!!」


 ライトブラウンの髪の毛が素敵なまゆさんの浴衣は藍色で少し落ち着いたイメージ。

 こちらもアジサイをモチーフとしているのだろう。イメージではこう、フリフリふわふわのよく言えば量産型女子が着る服が似合うと思っていたけれどそれは違ったらしい。

 正しくは、なにを着ても可愛らしく整ってしまう美の化身だ。


「まゆちゃんはすごいのよー? 何を着てもまゆちゃん色に染まっちゃうんだからー」

「すごいですよね、咲耶さん!」

「そんなに褒めても何も出ないよー!」


 かわいさが出ているが???

 それとも、まだまだ可愛いところがわんさか出てくるとでも?!

 なんという魔性の女。いや! 人を魅了する女神とは、まさにこのことか。


「オマエら、褒めあってるのはいいがアタシの話ちゃんと聞いてるのか?」

「まぁ十中八九聞いてるわけないだろうねぇ」

「響のねーさんに言われるのだけは一番腹立つ……」


 またやってるこの人たち。まぁいいけど。

 というか、鈴鹿さんも何食べたらこんなにスラッとした体型になるんだ。

 本人の性格が一番邪魔しているけれど、それ抜きで言えばすごくモデル。

 浴衣だって、一番クールに着こなしているんじゃないだろうか。


 響さんは、その……。うん。なんか子供用の着てない? フリフリのやつ。


「なぁんでこのぼくは、おこちゃまが着そうなフリフリが付いてるタイプの浴衣なんだい?!」

「響ちゃん、かわいいわよ!」

「……やっぱり当日は私服で行く」

「ごめんねぇ、美鈴ちゃんのお下がりしかなくって……」


 つまり、昔はわたし(憑依前)もアレを着ていたってことか。

 ……多分似合うな、うん。見た目はかわいいもんわたし。


「そーんーなーことより!!!! アタシ!! アタシの話を聞けーーーーー!!!!」

「あー、はいはい。義弟に告白する話だろう?」


 あ、そういう話ですか。

 言われた途端、髪と浴衣の色と同じように顔も赤色に染まっていく。

 初心い……。わたしにもこんな照れるような青春がありましたねぇ。お姉さん思わずニンマリ。


「なんだ、そんなので告白できると思っているのか?」

「そのための作戦会議だろ……」


 思わず尊花さん、まゆさんと視線が合う。

 普段はあんなにもブイブイグイグイ言わせている人間がこんなにも弱々しくなってたら、そりゃあそそるというものだろう。


「万葉さんは果報者だねー」

「ねー! 鈴鹿ちゃんかわいいー」

「お姉さんもついニヤケちゃいますよ」


 ふふふ、ぐふふ……ゲフンゲフン。

 さて、おちょくるのはここまでにして、真面目な話をそろそろしなくては。


「というかオマエら、アタシが万葉のこと好きとか聞いてないだろ……」

「態度で分かったよー? あ、なんか視線が熱っぽいなー、って」

「そうそう。鈴鹿ちゃんわかりやすかったよ」


 陽キャが怖い。すぐに人の視線に気づく。敏感すぎるだろ。


「で、えっと。尊花さんとまゆさん、それから響さんは協力してくださいますか?」

「もちろん! 友だちだからね!」

「いいよー! 珍しいところも見れるし!」


 2人は正直ノッてくるだろうなーとは思ってた。

 だって陽キャってとにかくノリがいいし。それ抜きにしても知り合いの告白ぐらいだったら、二つ返事で協力してくれそうな気がする。いい人たちだから。


「面倒くさい」


 そしてこのモノグサが面倒くさがるのも分かっていた。


「ノリ悪ぃなぁ、櫻井さんちのお姉さまは!」

「うるさい。そういうのは創作の世界でお腹いっぱいだ」

「よく言うぜ。小説で新人賞を取ったのだって、あれ恋愛小説だろ?」

「うぐ……」


 そういえばそうだったっけ。

 響さんは若干17歳でとある出版社の新人賞を受賞したほどの天才だ。

 タイトルは『私の恋人は転生者です』。異世界転生ものだけど、転生した人は主人公のヒロインではなくヒーローの方。現地の主人公と転生者のヒーローが周辺の人々を巻き込んだ異世界ラブラブ日常もの、だとか聞いた。

 ただ、その後の2巻は出ていない。

 理由は響ルートで登場するが、要するにスランプ。

 脱するために義弟の万葉さんとなんやかんやしながら、やがて恋人となる話だった。


「まゆさんも読んだことあるよー! 面白かった!」

「私も読みましたよ! 主人公と恋人がゆるーくながーい日々を過ごしていくのが本当に好きでした」

「あ、ありがとう……」


 あ、照れてる。


「そんな? 新人賞を取った、恋愛小説家なら? ファンの期待には答えなきゃなぁー?」

「……こいつ、言わせておけば」


 ともすれば、鈴鹿さんの煽り文句でこめかみに青筋を立てている。

 さすが鈴鹿さん。腐っても不良だ。こういう煽りは大得意ってことか。

 息を荒々しく吐いたあと、シワが寄ってた眉間を伸ばすように指を添える。相当面倒くさがってるみたいだけど、これはプライドの勝利みたいだ。


「分かった。考えてやらないこともない」

「響さん!」「流石響のねーさん!」

「ただし!!! やるからには、最強の告白プランを考える。覚悟しておけ」


 小さい指が鈴鹿さんの顔を指差す。

 まるで子供と大人みたい。かわいい。


「望むところよ! ありがとな!」

「おう」


 こうしてみると、響さんと鈴鹿さんのカップリングも悪くないのでは?

 まぁ仲がいいというよりも、犬猿の仲というべき関係性なのかな。ごちそうさまです。


「で、きみは万葉のどこを好きになったんだ?」

「はえ?!」

「それ私も気になるなー! 告白プランの参考になるかもだし!」

「"最強の" 告白プランだ!」

「そこツッコむところかよ。というか、オマエら顔が怖い……」

「まゆさんも気になるんだよー」

「お姉さんに言ってみてください……」

「こ、こっちに来るなぁあああああああああ!!!!」


 この後、めちゃくちゃ惚気を聞かされた。

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