第40話:どことなく始まる戦いの火蓋
我が母ながら酷いことを言う。
要するに、脱げってことでしょ?!
「すみません、我が母が……」
「オマエんとこのオカン、味濃すぎだろ」
分かるーーーーー!!!
おかしいな。前世ではちゃんと美鈴ルートは攻略したはずなんだけど、母親がこんなにも味が濃いだなんて聞いてない。
もしかして母上も転生なさっている? 誰に? 誰やろうなぁ……。
「何故人前で肌着を脱がなきゃいけないんだ。ぼくはきみたちほど脂肪めいたものはないとは言え……」
「んだよ脂肪って。いつも搾ってるだろ普通」
やめてくれ。その攻撃はわたしにも効くぞ。
さらにまゆさんと尊花さんも、被弾しているように目をそらした。
まゆさんは確かにスゴイデカーイオパイをお持ちだけど、尊花さんは言うほどじゃない気がする。
確かに胸はあるなー、と思ってたけど言うほど大きくないというか……。
「ソ、ソダネー」
そっと周囲から離れながら、いそいそと上着を脱ぐ推し友。
今日はYシャツだった洋服がこぼれる。目にうつるのはきめ細やかで健康的な肌色。
肩の丸みが未成熟な幼さを感じるけれど、真逆に毛先の合間から見える首元。
お、おぅ……。めっちゃ、色っぽい。
胸の奥底で何かが疼く感覚がする。人類の三大欲求の1つが蠢いている予感。
い、いやいや。わたしそういう趣味はないんだ。そう、別に推しがどうこうとかじゃなくて、単純に女の子に発情するような趣味なんてない、はず。
「美鈴さん、脱がないの?」
「えっ?!」
振り向いた先にはまゆさんの半裸。半裸?!
いや、でっか。制服の上からでも十分にわかってたけど、これは予想以上に。やば……。
「なーに見てるの?」
「い、いやいやいやいやいや!!!! 見てませんって!!! 見てません!!!!」
「それはまゆさんの目を見ていってほしいなー」
はっ! 恐る恐る目を見る。
完全にヘンタイさんを見るときのじっとりとした疑いの目だった。
「あ、あはははは……。すみませんでした」
「いいんだよー。まゆさんは怒ってないから」
その割には視線が痛いんですけど!!
いや、これEぐらいありますよ。何がとは言わないけど、ブラジャーも大きい……。
わたしなんてスポーツブラがいいところなのに、ぐぬぬ……っ!
「で、どう思った?」
「へっ?!!!!」
「前もかわいい反応してたから、興味あるのかなーって」
「いや、そういうわけじゃないんですけど……」
尻すぼみに小さくなっていく声を誰が止められるだろうか。
照れてるとか、そういうことなんですよ!
女の子の大きなおっぱいに興味があるとかみんなそうでしょ?!
「触って――」
「ダ、ダメ!」
その声を上げたのは後ろで胸元を隠していた尊花さんだった。
瞳はダムのように溜め込んだ青がこぼれてしまいそうな……。
支度をしていた響さんと鈴鹿さんも思わず反応する。尊花さんは完全に注目の中心だった。
「あっ……」
「と、尊花さん?」
我に返ったように震えつつ周りを見る。
え、えっと……。この場合はどうやって反応したらいいんだろう。
「オマエ、いいもん持ってるな……」
「あ……」
はだけた先に見えるのは普段の制服から思いもよらない谷間。
え、尊花さんそんなに大きかったっけ?
「触ってもいいか?!」
「ダメですゆえ」
「なんで武士道?!」
鈴鹿さんがオーバーに反応してくれたから、なんとか空気感が取り戻ってきた。
流石陽キャだぁ。置いてけぼりのわたしなんかとは比較にならないほどの強者だ。
だがそれでも空気感が変わらない気がする。主に尊花さんとまゆさんの間の。
「尊花さん、やっぱり……」
「えへへ、負けないからねっ!」
「あうっ!」
え、何が起こった?!
何が起こったというか、左腕に尊花さんのむ、むむむむ胸が?!
柔らかいおっぱいにシャンプーと汗が混ざったような、魅惑で蠱惑的ないざない。
文字通り腕に胸を押し当てた尊花さんの攻撃がーーーー!!!!
「まゆさんもだよー」
「うはぅ!!!」
今度は右腕にまゆさんのぉおおおおお!!!!
ああああああ、なにこれ。
何この状況?! なんなのこの感情?!!!
「す、鈴鹿さん。響さん……!」
「お、おう……」
「これは……、救えないやつだねぇ」
「なんでぇ?!」
な、何が起きてるの(2度目)。
右腕にまゆさん、左腕に尊花さん。両手に花とはこのことだけど、それはそれとして、目の前で笑顔のにらみ合いをなさっていらっしゃる!!
け、喧嘩はしないでもらって……。やるなら、少なくとも真ん中のわたしを除いていただいて……。
「あら。あらあらあらあらあら……」
「お母さんも見てないで助けてくださいぃいいいい!!!!」
それから数分間、尊花さんとまゆさんのにらみ合いを見届けたあとで、わたしのくしゃみが終わりの鐘となった。
拘束は解けたけど、腕のぬくもりとか柔らかさが熱っぽく残る感じがして、未だにドキドキが止まらなかった。




