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第39話:元アイドルの家にお邪魔します

「おぉ……。意外と普通の家なんだな、元アイドルの家ってのは」


 鈴鹿さんがなんか言ってるけど、それは棚の上に上げることにした。

 時間は少し過ぎて尊花さんと約束していた週末の日曜日になっていた。

 内容が内容だけに、ゆるふわ美少女であるまゆさんはもちろんのことながら、黙っていれば普通に美人の鈴鹿さん。それから子供の浴衣がちょうど似合いそうだなぁと響さんもお招きした。

 万葉さんの前ではちょっといいところ見せたいだろうしね、ふふふ。


「そんなものだろ。それより早く中に入らせたまえ。暑くてしんどい」


 普段から引きこもっている響さんなら、今日の謎に暑い太陽はきついことだろう。


「運動してねぇからだろ! もっと陽に浴びろよ!」

「キミみたいな野蛮人とは違うのだよ」

「んだと?!」


 ははは、本当に仲悪いなこの人たち……。

 まゆさんも尊花さんも困ってるし、そろそろ中にはいるか。

 鍵を開けて、クーラーの効いた室内へと入ってくる。

 おぉ、冷たい風。それも人が入ればちょうどよくなるぐらいの室温。流石だぜ、ママン(転生後)。


「おじゃましまーす」

「いらっしゃいませ。リビングが空いていますよ」


 足早に靴を脱ぎ捨てると、響さんが真っ先にリビングに入っていく。

 なんという素早さ。明日は筋肉痛になっているのかもしれない。


「咲耶さん、お邪魔します」

「うん、いらっしゃい! そちらの方がまゆさん?」

「え? は、はい! お邪魔させていただきます……」

「尊花さんからたくさん話は聞いていたわ。ささ、どーぞ」


 そういえばまゆさんとは初対面だったっけ。

 ガチガチに緊張しているまゆさん、なんか新鮮でかわいい。


「キレイだねー、美鈴さんのお母様」

「でしょう!」

「……なんで尊花さんが自慢げなんですか」

「え?! な、なんでだろうねー、あはは」


 妙に含みを持った笑い方をするじゃないかぁ、このこの~!

 まぁ我が母(1年経ってもまだ慣れない)は外から見たらだいぶ美人だろう。


 身長は低いけど、地毛である明るいピンクの髪を綺麗に伸ばし、薄毛や白髪にも負けないさらさらヘア。

 顔だって絶え間ない努力のせいか、シワは少ないしまだまだ若いと自称するのもムリはなかった。

 流石元アイドルの家系。遺伝してきたわたしはこんなにもぶちゃいくなのに。およよ。


「ねぇ。前から聞きたかったことがあるんだけど……」

「ん? なんですか?」

「美鈴さんって、アイドルだったの?」


 ま、まぁ、その質問が来るとは思ってた。

 初お出かけの時だって妙に人の視線はあったし、学内でもわたしが聞かないようにしてるだけで噂はあったと思う。

 まゆさんなら、大丈夫か。


「まぁ……。なんと言いますか……。そうでした」

「すごーい! だからそんなに可愛かったんだねー」

「ほへ?!」


 逸らしてた顔をまゆさんに文字通り持ち上げられる。

 うわ、手あったか。ふにふにしてるし……。と言うか目線! 目線があまり合わないまゆさんの顔へ強引に!

 顔よい……。目元意外とパッチリしてるし、肌キレー。透き通る白、というか……。うわ、かわよ……。


「あ、あの。まゆさん?」

「言われてみれば顔小さいし、肌だって色白。ぷにぷに……」


 ああーーーーーーー!!! 見つめ合ってる!! めっちゃ見つめ合ってる!!!!

 やばい、心臓が早鐘を打ち始めた。顔の色だってヒートアップしていくし。

 な、何なのこの感情?! なんか……。なんかっ!!


「は、はいストーーーップ!!! それ以上はハレンチです!」

「あっ……。あー! ご、ごめんね美鈴さーん!」

「い、いえ……。役得でした……」


 その場で腰を抜かしてスルスルとお尻がついてしまった。

 顔がいい女に、顔がいいと褒められる。それなんて百合ゲーだよ……。

 それともわたしは乙女ゲーに来ていた? 何を言っているの、わたしは。

 混乱して、思うような考えがまとまらない。


「もう、まゆちゃんダメだよ! 美鈴ちゃんは人に耐性ないんだから」

「うっ!」

「そうだねー。ごめんね、美鈴さん……」

「ぐっ……。い、いいんです、よ……」


 正気に戻った。そうだよなー。わたし対人耐性ゼロなんですよねー。およよ……。


「おーい、いつまで廊下で立ち止まってるんだー? こっちは涼しいぞー!」

「あっ! ごめんねー、今そっち行くよー」

「い、行きましょうか」


 なんというか。わたしってたまにギャルゲーの世界に来たんだって実感をなくすんだけど、なんでなんだろうなぁ……。

 リビングに入った瞬間の冷気と、ソファーでくつろぐ響さんと鈴鹿さんを見て、なんとか現実世界に戻ってきた。

 そうだ、これはギャルゲーの世界なんだ!

 そう言い聞かせなきゃ、友だちをそういう目で見てしまう。


「……美少女が5人。これは着付け甲斐がありますね」

「あの、お母さん?」


 わたしたちがリビングに入った瞬間だった。

 カーテンが自動で閉まっていく! あれ?! うちそんな機能ありましたっけ?!

 あ、そういえば最近合言葉でカーテンの開け閉めができる機械を買ってたっけ。じゃなくって!

 そこにいるのは一種の魔王のオーラ。

 え、ラスボスってお母さん(元アイドルの母)だったりします?!


 心なしか響さんも鈴鹿さんも恐怖で顔がひきつってる……。


「今から皆さんには浴衣を着付けさせていただきます……!」


 その目は、欲望の色で光っていた。

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