第5話 ゴルチェ村 1
優也とシアンは村に向かって歩いた。
村に着くまで優也は気になってることを聞くことにした。
まず、優也は亮について聞いてみた。自分と同じようにこの世界にやってきたのなら、近くの村に居ると思ったからだ。しかし、シアンはバッチャンという人物に頼まれてかれこれ一週間くらい村を出ていたらしく亮のことはわからないようだ。
次に優也は、崖の先にある屋敷について聞いてみた。
すると、シアンは怪訝そうな顔をしながら答えてくれた。
「あそこは、ガルディア様の正殿よ」
っと、優也は首を傾げる。ガルディア様……様ということは偉い人だろうか?
優也はそう思い聞いてみた。
「ガルディア様……誰?」
優也が聞くとシアンは目をパチクリとさせ、信じられないといった感じで叫んだ。
「はぁぁあ!? ガルディア様よ? ガルディア様!! あ、あんた誰はないでしょッ!! 誰は!!」
どうやらその人物を知らないのはこの世界ではとても可笑しなことのようだ。
優也はシアンの興奮した状態に少し怯えながらも、きっぱり言った。
「そ、そんなこと言っても知らないんだから仕方な……知らなくてすいませんッ!!」
優也はこの世界の住人じゃないんだから知らないのは当たり前だといった態度を取ろうとするも、シアンに睨まれ謝った。
情けないと言うなかれ、美人が怒ると怖いのだ。いや、本当に
シアンはそんな優也を見るとため息をつく。
「あんた冗談じゃなく本当に知らないの?」
シアンが聞くと優也はコクコクと何度も頷いた。
シアンは深くため息をつくとぶつぶつと呟く。
優也が耳をすますと本当信じらんないだの、いったいどこから来たのよっといった言葉が聞こえる。
しばらくすると、シアンは優也を見据えた。
「良い? 今からわたしがガルディア様の物語を話してあげるからよーく聞きなさいよッ!!」
ビシッと指を指して言うシアン。
もちろん優也は、え? そんなの頼んでない!! といった感じだ。
しかし、優也の様子なんかお構いなしにシアンは語り出した。
「今から八百年前……
この世界には三つの世界があった。
一つはわたしたちのいる、人間界。
もう一つは魔族と呼ばれる生き物が生存する、魔界。
そして、最後の一つ……天使や神々が生存する、神界。
そのうちの二つの世界、魔界と神界は正反対の存在のせいか争っていたの。
けど、魔界と神界の戦力は拮抗していたため、なかなか戦いが終わらない。
長い長い戦いの日々。ある日、その拮抗が崩れる事態が起きた。
魔界に圧倒的に魔力の高い者が産まれたのよ。
そいつは、成長すると魔界の王へと君臨し神界を滅ぼしたの」
そこまで言うとシアンは優也が理解しているかどうか確かめるため、語りを止めた。
優也はポカーンと口を開けたままでシアンをマジマジと見ている。
顔には、魔界、神界何それ?ファンタジック過ぎませんか?っと書かれていた。
シアンはしばらく優也の間抜け顔を見つめると、また語り始めた。
「神界を滅ぼした魔王は、今度は人間界に牙を向けたわ。
もちろん、神界が適わなかった魔王なんかにわたしたち人間が適うわけがない。
困った国王は情報をあつめ始めた。
国中の文献全てを引っ張り出し、預言者を城に迎え入れ、
どうにかして魔界の住人を退けられないか考えたの。
そして、ある日預言者が言ったわ。
『異界より現れしもの、その内に秘めたる力をよういて平和へと導くであろう』
国王はその預言を実行した。
特殊な魔法陣をほどこし、異界より勇者を呼び出すためたくさんの神官、魔法使いを城に招き入れたわ。
そして、その魔法陣で呼び出されたのが」
「ガルディア様ってわけか」
シアンの言葉に優也が呟く。
先が読めたのか優也の言葉に疑問はなかった。
「な、何よ!! やっぱり知ってるんじゃない」
シアンは優也の言葉に眉を寄せる。すると、優也は慌てたように言葉を続けた。
「いや、知らない。知らないって……さっきのはただそうなのかな? って思っただけで」
「本当に?」
「本当に!! 本当」
優也の言葉にシアンは疑いの眼差しを向ける。
そして、ため息をつくと前を見据えた。
「まぁ、いいわ。村にも着いたし、続きは後でいいわね」
「へ?」
優也は、シアンの言葉に間の抜けた声をあげシアンの目線を辿った。
そこには、のどかな雰囲気を漂う村があった。
木で出来た素朴な家々がポツンポツンと離れた所にいくつかたっており、村の中央付近には小さな井戸のようなものがある。
少し遠くを見ると一際大きな家に、柵が見えた。柵の中には動物のようなものがいるのが見える。
村の入り口らしきところには古ぼけた木の板が建っていた。
『ようこそ!!……の住まう……村へ』
古いせいか字がかすれているため最後まで読めなかった。
村に入って行くと優也とシアンを目ざとく見つけた中年の男性が話しかけてきた。手に桑を持っているところを見ると、今から畑仕事でもするのだろう。
「おお、シアンじゃねぇか。ジュラ婆さんのお使いは終わったのか?」
「あっ、ガトーおじさん。うん、今終わって帰るところだよ」
ガトーの言葉にシアンはにっこりと微笑み言った。その微笑みは大変可愛らしい。そう、可愛らしいのだが……優也は思う。
(俺と話す時と態度全く違くねぇ?)