①歴代最強の魔法使い
サラは最強だ。
魔法学校に入学した時は歴代最高の才能だと崇められていたし、実際彼女の持つ魔法は歴代最強だった。
しかし。
彼女は魔法学校を卒業するまで、僕と共に一番下のクラスに甘んじていた。
理由はひとつ。
彼女は、攻撃魔法は強いが、魔法のコントロールが圧倒的に下手だったからだ。
そんなサラを助けるのは、いつだって僕の役目だった。
魔法学校を卒業した後、僕達は冒険者になった。
この冒険者の主な仕事は、街の外に出て、生活に役立つ物を採ってくること。
また、採取をスムーズに行う為に、人類の生活区域の側に徘徊する魔物を退治すること。
あくまで主な仕事なので、仕事内容にも例外はあるのだが。
今から二十年前に魔王が現れて以来、世の中には魔王が作り出したという恐ろしい『魔物』が徘徊しており、街の外に出るだけでも危険が伴うようになってしまった。
まあ、今年で十五歳の僕は、魔王や魔物の存在しない世界なんて知らないが…。
僕達人間が魔物に対抗出来る唯一の手段が、魔法であった。
そのため、魔法学校を卒業した人間は、ほとんどが冒険者に就職する。
現在時刻、早朝6時半。
「じゃあ、行くか」
「了解。いつでも準備は出来ている」
今日も今日とて僕達は、冒険者として街の外に行く。
周りには大勢の冒険者が並んでいて、一時的に開かれた門から次から次へと外に出ていく。
その流れに沿って、僕達も門の外へ出る。
全員が門外へ出ると、門はしっかりと閉じられて、夕方の五時まで開く事はない。
門の外へと出た冒険者は、それぞれの依頼や任務へと向かっていく。
「サラ。はぐれないようにな」
「クロウこそ」
僕達は軽口を叩きながらも、決して警戒は緩めない。
ここは門の外。魔物が徘徊する場所だ。
「こっちの道に居る」
外に出るなり、サラは探知魔法を使って、対象の場所を特定した。
僕はサラと共に、対象の場所へと向かっていく。
周囲の冒険者の進む道とは明らかに違う、人気のない森を突き進む。
やがて少し開けた所に、『ドラゴン』という魔物が水浴びをしているのを見つけた。
数日前に冒険者を十人も食べて満足しているのか、実に機嫌良く悠々と水浴びをしている。
「さあサラ。いつもの通り好きに暴れてくれ」
「ありがとう」
サラは勢い良く飛び出して、手のひらから破壊魔法をドラゴンに放った。
その瞬間、僕は素早く杖を掲げ、破壊魔法へと魔法をぶつける。
魔法がドラゴンへとぶつかり、ドラゴンが爆発に巻き込まれる。
ドラゴンは、一気に消し炭になった。
僕はほっと息をつく。
よし、今日も僕の魔法は調子がいい。
攻撃魔法は強いが、魔法のコントロールが破壊的に下手なサラ。
彼女の能力を最大限に発揮するには、目標に確実に命中させる為の起動変更が必要だった。
サラの、強すぎるが破滅的な魔法のコントロールを補える魔法の習得。
その名も、制御魔法。
僕は魔法学校の三年間を、ただひたすら制御魔法の訓練に費やした。
それもあり、僕は卒業まで上位クラスには上がれなかったが、この選択を後悔した事は一度も無い。
先程の爆発音を聞きつけた魔物が、次から次へと押し寄せてくる。
サラはやってきた魔物に向けて、どんどん魔法を放つ。
爆発魔法、炎魔法、雷魔法。
僕は意識を集中させ、サラの放つ魔法全てに、ひたすら魔法をぶつけ続ける。
やがて周囲の魔物全てを倒しきると、サラはその場に座り込んだ。
サラは体力が無い。
大量の魔法を打てばそれだけで体力の限界を迎えてしまう。
「サラ」
僕は杖を懐にしまい、サラの元へと駆け寄る。
「とうばつ…かん、りょう…」
彼女の体を支えてやると、サラは少し目を開けて、力なく笑ってそう言った。
「ああ、お疲れ様」
僕の言葉に安心したのか、サラは目を閉じ、そのまま意識を飛ばした。
「サラ…」
疲れ果てたサラを背負い、元来た道を戻る。
僕は元々、彼女が冒険者になるのは反対だった。
それでも彼女は、自分の強い力を役立てたいと、冒険者となったのだ。
先程挙げた冒険者の活動には、例外がある。
例えば、我々のように強い力を持った魔法使いは『討伐専門冒険者』として魔物退治を専門とした活動を行っている。
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