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『神の手違いが生んだ報われぬ者の転生録』  作者: Lark224a


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第98話 暴かずに救え。

みんなから与えられた時間は、体育祭が再開されるまでのおよそ90分。それほど余裕があるわけではなく、悠長に考えている暇もないため、俺はすぐに行動へと移ることにした。


まずは――二人の力を借りる。


俺は雪と咲にメールを送り、誰もいない教室を確保してそこへ呼び出した。ほどなくして二人は揃って現れ、俺はこれまでの経緯を簡潔に説明する。


「‥‥そういうことね。これは、思っていた以上に厄介な話だわ。」


咲は腕を組みながら静かに呟き、その隣で雪も難しい表情を浮かべる。


「だね。七瀬先輩が犯人だってことを一ノ瀬会長が知っちゃった時点で、それはもう個人の問題じゃ済まなくなる。下手をすれば家同士の争いに発展する可能性もあるし、かと言ってこのまま放置すれば、一ノ瀬会長の立場が完全に終わっちゃう。」


「そうね。つまりこの件を解決するには、七瀬先輩が犯人であることを表に出さないまま、一ノ瀬会長の無実だけを証明する必要があるということになるわ。」


咲の言葉は的確だった。


この事件は単純な“犯人探し”では終わらない。むしろ、犯人を明らかにしてしまった時点で問題が拡大するという、極めて厄介な構造をしている。


だからこそ、通常の解決方法は使えない。


だが――


「その条件を満たす方法は、一つしかない。」


俺は小さく息を吐きながら、二人へと視線を向ける。


「七瀬先輩に、自分の口で認めてもらうしかない。」


二人の視線が一斉にこちらへ向けられる。


「七瀬先輩が自分で事実を認めて、一ノ瀬会長と直接話をすることが出来れば、家を巻き込むことなく個人間で解決できるはずだし、二人の関係も修復できる可能性がある。」


それが、現実的に取り得る唯一の道だ。


しかし――


「理屈は分かるけど、それって相当難しいわよ。」


咲は即座にそう言い切った。


「自分の罪を認めるなんて、普通はしない。私が七瀬先輩の立場だったら、絶対に認めないし、謝ることもしないわ。」


その言葉には一切の迷いがなかった。


「まぁ、咲ちゃんなら‥‥そうだろうな。」


苦笑しながらも、俺はすぐに言葉を続ける。


「でも、もし七瀬先輩が自分のやったことに対して後悔とか、心苦しさを感じてるとしたらどうだ?昔は仲の良い友達だったんだろ?だったら――謝る可能性だってゼロじゃないはずだ。」


雪が小さく頷きながら口を挟む。


「うん。私もそう思う。気持ちが残ってるなら、動く可能性はあるよ。」


「だな。だからそこに賭けるしかない。」


俺は覚悟を決める。


「俺が直接、七瀬先輩のところに行って話をしてみる。二人は、俺が失敗した場合に備えて証拠を探しておいてほしい。」


その言葉に、咲は一瞬だけ目を細めたあと、静かに頷いた。


「分かったわ。相手は七瀬家の人間よ。何をしてくるか分からない以上、警戒だけは絶対に怠らないようにしなさい。」


「あぁ、分かってる。」


「私も了解だよ。生徒会長に気付かれないように、咲ちゃんと一緒に動くね。」


「あぁ、頼んだ。」


そうして役割を分担し、俺たちはそれぞれ動き出すことになった。


二人と別れたあと、俺は迷うことなく歩き出す。


向かう先は――


七瀬先輩のもとだ。

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