死神のささやき
死神が発する「死」というフレーズはまさにリアル以外の何物でもない。
ただこの辺を散歩していただけだと開き直ろうかとも思ったが恐らくはずっと前からつけられていたのだろう、ここで辺にごまかしても良い方向には行かないと考え素直に答える。
「残念ながら何も見つかってませんよ、、、死にたくはないんですが幼い命を見殺しにするのも嫌なんですよね。」
何かを考えているのかしばらく何も言わずに聡介の顔をその冷たい目で見ている日野だった。
聡介には耐えられない沈黙であったが何も切り出せないでいると「フッ」と笑い日野の方から沈黙を破ってきた。
「自らの危険を省みず他人を助ける、そんなことはしない人の生死についてもっとドライな人間かと思っていましたよ。
あ、監視対象となったのでいろいろとあなたの過去も調査させてもらいました。」
「まぁ、ちょっと前までは自分でもそう思ってましたけどね。何ででしょう、、、」
「安藤紫音に脅されて仕方なく協力しているという訳でもないんですね?」
あぁ、今回に関してはそう言う言い逃れ方法もあったかと今更になって気が付いたがもう遅かった。
「それでは死んで頂くしかありませんね。」
ある程度は覚悟はしていたが実際そう言われるとやはり身構えてしまう。
目を瞑って全身に力を入れその時をゆっくりと待つが何かされる気配がない、実はもう既に刑は執行されていて目を開けるとそこに自分が倒れているのかもしれない。恐る恐る片目を開けてるがそこには先ほどまでと同じように冷たい目をした日野が立っているだけであった。
「一つ取引をしませんか?」
「え?」
「御堂巌の居場所が分かったら、安藤紫音たちより先に私に教えてくれませんか?
もしそうして頂けるのであれば今までのこと含めあなたのやったことは無かったことにして、今後霊界は一切あなたに干渉しないとお約束しますよ。」
「何故そんなことを?」
「御堂巌のやっていることは許されることではないんです、仮にも上級死神であった人物が故意に人の運命を変えるなんて、、、、
これまでにどれだけその規律違反に手を染めていたのかも分かりませんし、今後もそれをやり続けるかもしれない。
あなたのようなそこまでの影響力がない一般人を始末するより巨悪を潰したい、私はそう思っています。
「しかし、、、」
「ついこの間知り合った人間のために自分の命を賭けるんですか?元々死ぬ運命だった人間ですよ?あなたのせいではない!
御堂巌の居場所を私に教えてご自分の残りの寿命を全うする。どう考えてもそちらの方が得策に思えますが。」
先ほど死を意識したばかりということもあり聡介の心はグラグラと揺らいでいる。
「たださっきも言ったように何も見つかっていなんですよ。」
「ふむ、、、場所だけにこだわらず、物であったり、会話であったり何でも良いので思い出してみてください。ここで開かれたゲートはあなたと関係していたと記録が残っていました。事故現場から遠く、時間も大分経過していたことを考慮すると何かしらの仕掛けなり連絡手段があったんだと思います。ゲートについてもそうですが過去の遺物を使っている可能性も否定できません。いくら御堂巌と言えど四六時中あなたの様子を見ておく訳にはいかないので。」
「はぁ、、、」
「私も霊界に戻ってもう少し調べてみますが、何か思い出したらこの番号に連絡をください。」
どこからか現れた紙にはこれまでのように見慣れない電話番号が記載されていた。
「あなたが約束を守ってくれるという保証は?御堂巌共々亡き者にされるということは、、、」
「そこは信じて頂くしかないですね、私は安藤紫音と違って嘘が嫌いなんですよ。」
確かにメンテナンスだと眼鏡を取り上げられ死にかけたこともある、しかしだからと言ってこの男の言うことを信じてしまって良いのだろうか。
色々な考えが頭の中を駆け回り混乱する聡介に対して日野はポンと手を肩に置いてつぶやく。
「まずは御堂巌の居場所あるいは連絡手段を思い出してください、あなたにしか出来ないのですから。期待していますよ。」
実態がなく触れられた感触はないはずなのに、手を乗せられたところは酷く冷たいように感じた。




