君の名は
次の日から再び死神なりきり眼鏡を着用する生活が始まった。
どうやったら運命が変えられるかは皆目見当が付かないが流石に死神に聞くわけにもいかないので、いろいろと試してみるしかないだろう。前回の様に話を聞くだけで運命が変わるかもしれないし、何かしらの注意喚起が出来るかもしれない。そのためにはまず黄色い炎を灯した人を探し出さなくてはいけない訳で、聡介は今まで以上に行動範囲を広げ歩き回った。しかし前回同様探そうと思っても中々緑以外の炎とは遭遇出来ず時間だけが過ぎていってしまい、たまに紫音から催促の電話が掛かって来るが実際に出会えていないのだから嘘の報告も出来ないでいた。
朝晩が大分涼しく感じられるようになってきたある日のこと、また一日何の収穫もないまま終わってしまうことにより一層疲れを覚えながら訪問先から駅に向かう聡介はふと誰かに呼び止められたような気がした。辺りを見回してみたが人影はない、、、しかし耳を澄ましてみるとやはり何か聞こえる。
「誰か、誰か俺を見つけて、、、」
あぁ、また聞こえてしまった系か?
微かに聞こえるその声が大きくなる方向へと進んで行くと、それはどうやらビルとビルの間にある狭いスペースから聞こえている様だった。どうしようかと迷ったが聞こえてしまったその声を無視することも出来ず、再度周囲を確認し誰もいないことを確認してからその隙間に滑り込むように入って行った。
その先で聡介を待っていたのは想像していた通り霊魂であった。以前遭遇した村上勝の霊魂よりも亡くなってから時間が経ってしまっているのか既に胸の所まで消えかかってしまっている。
「おじさん、俺のこと見えるの?」
お前もか!確かにその霊魂はまだ幼さの残る高校生くらいに見受けられる。
とりあえずその呼び方の件は諦めることとしその霊魂から事情を聞くことにした。紫音にすぐ連絡をしても良かったのだが、もし彼がこの世に何かやり残したことがあるのだったら少しでもそれを成し遂げる手伝いをしてやりたい、そう思ったからだった。
「大丈夫、俺には君が見えるし君の声も聞こえる。君は、、、もう死んでしまっているって分かってる?」
「うん、死神って名乗った奴が俺は死んだんだって言っていた。霊界って所に連れて行くって言われたんだけどまだやらなきゃいけないことがあったんでそいつがどこかに電話してる間に逃げたんだ、、、、そして見つからないようにいろんな所に隠れてたんだけどそのうちここから動けなくなっちゃって。」
「君はいつからここにいるの?」
「、、、分からない、最初は朝が来る回数を数えていたんだけど、、、」
「そうか、亡くなった場所は分かる?」
「、、、分からない、ここから近かった気もするけど。」
「やらなければいけないことっていうのは?俺に出来ることあったら手伝うよ。」
「あいつに一言謝りたくて、、、」
「あいつというのは?」
「、、、それが思い出せないんだよ、、、顔は浮かぶのに。」
「う~ん、、、じゃあ君の名前は?」
「それは流石に、、、、あれ?、、、、俺は?誰?」
亡くなってから時間が経ってしまっているせいか、かなり記憶がなくなってしまっているようであった。残念ながら現時点の情報だけでは何をやって良いのかも分からない。
「まぁ、焦らずにゆっくり思い出してみて、俺の方でもいろいろと調べられるだけ調べてみる。
だから他の所に行かないでね、、、ってここから動けないって言ってたか。」
当人にはゆっくりと言ってはみたが、どれくらい時間が残っているか、、、先日の紫音の話では最悪は悪霊になって人に悪さをするようになってしまうらしい。明日の同じ時間にまた来ると伝えその場を引き上げた聡介は家に戻るなり、彼と会った場所の周囲で起こった事故・事件について検索を始めた。




