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117. F の不本意

晩餐の次の日、男衆は眠い目を擦りながら宿の食堂に行く。挨拶を交わし、先に待つリベルに簡単に経緯を話す。


「おはようございます。夕べは晩餐にご参加頂き、誠にありがとうございました。」


後ろから突然声がかかり、思わず刀に手がかかる。


「あぁ、失礼。驚かすつもりは無かったのですが……」


ヘラヘラと笑いながら声をかけて来たのは、外交担当だと言っていたアンジャだった。


「おや? 随分お疲れの様ですが、昨日は良く眠れませんでしたか??」


ニヤニヤと嫌らしい笑い方で聞いてくる。大方、食事に混ぜた催淫剤の話をしているのだろう。この男、外交担当だと言っていたが、こんなに表情に出て仕事になるのだろうか……


他人事ながら、そんなことを考え、不機嫌な顔であぁ、うん。と適当に返事をしていれば、懲りもせずまた茶会の誘いをしてきた。


「付き合うのは昨日の晩餐だけの約束だ。」


拒否をすれば、アンジャはとんでもない事を言い出した。


「フゥ。本来ならばお茶の席でお話するつもりだったのですが……お喜び下さい。フィルソン・ド・ウリーボ様! この度、この国の時期女王、アプール様の伴侶として選ばれました!!」


……この男は何を言っているのだ?? 心底めでたいといった顔で伝えられても、言われたことが突飛すぎで理解が追い付かない。


「アプール様とは夕べの母娘(おやこ)の母君の方でしたか? 確か、戌族の英雄殿と婚約していたのではなかったですか?」


リベルが助け船を出してくれた。


「それなのですが、今までアプール様の即位を反対していた各町村の代表者達が、フィルソン様と婚姻し、王として即位するならばと賛同を得られました。ハスキス様とは、ご本人にかけられた魔法を解除してからの話になるのですが、フィルソン様ならばすぐにでも婚姻出来ますし、失礼ながら身元確認をさせていただいた際、婚約者もいらっしゃらない。実直で、家柄も申し分なく、今は騎士隊の諜報部隊に所属されていて、仕事も優秀。身分も公爵家次男、教養も武力も申し分ない!!」


ハスキスとの話を聞いたときも思ったが、俺の意思はマルっと無視されるのだな。


「断る。」


朝から胸くそ悪い話を聞いた……。朝食を切り上げ、皆を促し部屋に戻る。さっさと本物の王族とイチカを探しに行こう。


「お待ち下さい!! この話、正式に帝国と北の国を通し、貴方の父親である宰相様に話をさせて頂きます。」


厄介な……他国とはいえ、王族が絡むと動きづらくなる……


「悪いが、我々は神託と北と東の国の依頼を受け、ある人物を探している最中だ。この国の王になるどころか、留まることも出来ない。他を当たってくれ。」


「そうはいきません。やっと各地域の長達の許可がおりたのです! 王になれるのですよ!? 何故拒否なさるのです?? とにかく、ウリーボ公からお返事が来るまでここに居ていただきます!!」


随分好き勝手言っていたが、王になどそう簡単になれるものではない。これ以上面倒な事に巻き込まれる前にさっさと地上に出てしまおう。


支度をし、宿を出る。チラッと見た限り、数人我々に付いてくる者がいる。見張りだろう。そのまま無視し、昨日来た道を辿り隠し扉迄きた。


「開けて貰えるか?」


門番だろう、兵士の格好をした地底人(ノーム)に言うも、


「あなた方を地上に返すなと指示が来ております。申し訳御座いませんが、案内が来るまでここでお待ち下さい。」


実力行使か。出入り口は幾つかあるのだろうが、どこに行っても多分止められるのは容易に想像できる。さて、どうしたものか……


と、パカパカと足音を響かせ、地上の馬より幾分背丈が低く、脚が太い馬が引く馬車が目の前に止まる。


「いやはや、ここに居ていただくとお伝えしたはずですが?」


不機嫌そうな顔をしたアンジャが下りて来た。まだここから出る策が無いので仕方なくアンジャの言うとおりに馬車に乗る。と、俺とリベルを乗せたとたんに馬車のドアを閉めた。


「おい、まだタイラ…………とノリアスが乗っていないだろうが!」


「申し訳ありませんが、この馬車は王族、貴族専用。従者はそれ専用の馬車に乗るのが通例かと。勿論、公爵家のご子息ならばご存知でしょう? 王となられるのです。従者との馴れ合いはここまでとして頂きます。」


何なのだコイツは……あまりの身勝手さにイライラと腹立たしさが沸々と沸き上がる。と、リベルが俺の服の裾を引っ張る。


「貴方も同席してらっしゃると言うことは、貴方も爵位をお持ちで?」


「もちろん!!」


満面の笑みでリベルに返事をする。


「昨日はそんなことを言っていなかった筈だか?」


「ええ、今朝、爵位を賜ったばかりですので!」


「どういうことかしら?」


「夕べ、皆様がお帰りになった後、アプール様始め、この国の重鎮になられる方々が会議を開きまして、フィルソン様を王に、それに伴い、それぞれの役割の取り決め等を行いました。そこで私は男爵の爵位を賜り、同時に北の国の国交大臣に任命されました!!」


頭が痛くなってきた……。元々、ノームの国があったのは知っている。そして、念願の王族の末裔が見つかったと浮き足立つのも分からないでもないが、なぜ俺が国王になることが前提で物事が進んでいるのか……


「さっきも言ったが、ここの王になる気はない! アプール様だったか? その方との婚姻もする気もない!! 勝手に話を進めるな!!」


「何故です?? 王になれるのですよ? この国のトップです。何でも思い通りになるんですよ?」


……コイツの王様のイメージって……


「いいか? 王とは国の全ての国民に対しての責任を負う覚悟がある者がなるものだ。旅の途中に立ち寄った貴族がおいそれとなるもんじゃない! それに、思い通りになる? そんな夢のような国などありはしない! 良く考えろ? 俺が王になったとして、思い通りになるのなら、一番にあんたの首を切ってやる! あんた達のお国ごっこに付き合う気はない! さっさと地上に戻せ!」


アンジャはここまで言って初めて危機感を持ったようだ。と言うよりも、自分の進退への影響を懸念したようだ。


「……申し訳ありません。私1人で判断出来かねますのでどうかもう1日だけお待ち頂きたい。」


今までとはうって変わった態度でアンジャが願い出る。


「……わかった。取りあえずあの母娘と重鎮やら達と良く話し合って、俺に関することは白紙にもどしてくれ。」


結局、今日は地下空洞を出ることは叶わず、不本意ながらもう1泊することになった。

読んで頂き、ありがとうございました。

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