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103. F とノーム

恐ろしい程の落雷を放った後、何故か顔色が悪くなったタイラ様が、急いで馬から降りて茂みに走って行った。


状況を察したリベルが水を用意して少し離れたところで待つ。俺とノリアスは魔物の処置をする。何体か死んでしまったものは、魔素となってサラサラとノリアスの持つ刀に集まっていく。生きている魔物を一ヶ所に集め、リベルから借りた鞭で括る。その作業をしながら、聞きたかった事をノリアスに聞いてみる。


「お前のその刀は何で出来ているんだ? 刀が魔素を吸収しているように見えるが??」


「これ? 僕が生まれ変わる前に、僕の歯と、狩った魔物に生えてた角を元にして作った奴。体が大きい時に合わせて作ったもんだから、今の僕にはちょっと使いづらいんだけどね……刀が吸収した魔素やスキルは、握って選別してから僕自信が吸収してる。」


なるほど。刀にストックして必要な分だけ吸収するのか……確かに、そこらの魔族に比べたら格段に頭は良いのだろう。


と、リベルが焦ったようにタイラ様の名を呼んでいる。振り替えればタイラ様が倒れていた。


水のおかわりを渡そうと、目を離した一瞬に倒れたそうだ。ノリアスが弾かれたように走って行き、タイラ様の腹にダイブした。その衝撃で、変な鳴き声を洩らしながら目を覚ましたようだ。全く脅かさないでほしい……。


タイラ様の体調が整うと、先ほどの話せる狼と話がしたいと言い出した。拘束してあるので問題はないと思うが、一応、タイラ様の後ろで警戒しておく。


ヒュッっと耳の横を風の音が通り抜けた。反射的に刀を引き抜き警戒する。狼は短い矢が3本刺さり、苦しんでいるところをみると毒でも塗ってあったのだろう、そのまま死んでノリアスの刀に吸収されている。


タイラ様は呆然とその様子を見ていたので、情報源が絶たれてショックを受けているのかと思ったのだが、うぉっ、絞まった! と呟いていたから、心配はなさそうだ。


問題は、先程からこちらを小馬鹿……挑発するように動くサル!! 安い挑発とは分かって居るものの、何故かイライラが止まらない。珍しくリベルもイラだっているようだ。


サルに導かれるように、3人ともがタイラ様を置いて向かっていく、後もう少し! というところでサルが突然消え、タイラ様の後ろに仮面を付けた男と共に現れた。ヤバい! タイラ様が!! と焦ったものの、男はタイラ様をチラッと見ただけで消えてしまった。なんだったんだろう……。


気を取り直して!! とタイラ様が魔物を見るが、残りは雑魚ばかりだったようで、魔素となってノリアスに吸収された後だった。


ガッカリするタイラ様を連れ、旅を再開する。国境の山脈の麓にたどり着くも、関所から大分ずれていたらしく、それらしい物は見つからない。山脈沿いに歩くと、壁に沿うように立ち、こちらをじっと見つめる全身黒で固めた人が2人いる。何者だ……?


近づくと、タイラ様が突然ぐぐっと前のめりになる。驚いて思わず襟首を引っ張ると、上目遣いで涙を貯めて、優しくしろと訴えられた。……別の女性(ひと)に言われたかった……。


タイラ様は黒塗りの2人に今、気づいたのか……。どうやらそんなに視力が良くないらしい……


更に近づき、黒塗りの人物とやり取りしたら、驚くべき事態となる。この王国内に地底人(ノーム)達が国を作ったと言い出した。


初耳である。リベルを伺えば、同じように眉間に皺を寄せこちらを見る。やはり聞いてないようだ。


門番の男とやり取りするも、埒が空かないので、取りあえずオヤジ殿に『カピクール領内にて、ノーム達に建国の疑いあり。位置は………。詳細を確認次第、連絡する。』と一報を送る。


この門番、政治には疎いのか、騒げば騒ぐほど問題が悪化することに気づいていないようだ。国を名乗るのなら、俺の身分を明かした時点でそれ相応の対応を必要とするはずなのだが……


と、地鳴りと共に、いかにも長老といった風体の者が出てきた。門番も長老! と呼んでいたので少しは話が通じるかと期待した。


うん、その期待は見事に裏切られた。が、代わりに話の分かる奴が出てきたので良しとしよう。詳しく聞けば、ノーム達はこの地に住んで大分経つらしい。場所で言えば、カピクール領と山脈を挟んだ丑のスタイン領を合わせた、広大な地下空洞。


地下の天井を支えるように、いくつかの柱があり、それを区切りに村等を形成している。それぞれの村や街の代表が話し合い、物事を決めるのだが、やはり争いになるらしく、まとめ役を探していたところ、ノームの王家に伝わる短剣を持つ母娘(おやこ)が地上で発見され、その二人を担ぎ出し、王家の復興を進めているらしい。


門番とは喧嘩腰のやり取りで要領を得なかったが、キチンと帝国や国には話を通し、根回しも済んでいたそうだ。


ただ、肝心な王家の母娘が難題を突き付けてきたために復興が遅れているそう。そんな話をし、ウリーボ領での商売の足掛かりとしての伝を頼まれた。話しは聞いたし、納得もしたので、長居は無用とばかりに席を立ったとき、声がかかる。


「そなたがフィルソンかえ? 亥の印持ち? どれ……」


扇子で顔を隠し、派手な色のドレスを着た女と、俺の顔をニヤニヤと見つめ、肩を丸出しにしたドレスを着た女が俺の首筋にある印を覗き込む。


別に印を隠しているわけではないが、扇子の先で服を避けてまで確認する2人に嫌悪感を覚え、直ぐ様離れる。


「ほほ、そんなに恥ずかしがらんでも。アンジャ、皆様を丁重におもてなしなさい。」


そういうと、2人はニヤニヤしたまま去っていった。


「……失礼しました……。あの方達が短剣を持っていた母娘です。申し訳ありませんが、こちらに一泊して頂くわけにはいきませんか? もちろん、宿も食事もご用意致します!」


どうするかと他の3人を見れば、リベルは地底人が持ってきた宝石に目を輝かせ、ノリアスはソファーをベッド代わりにして爆睡。タイラ様は? と見渡せば、ノームの子供達と遊んで……いや、遊ばれていた。


ゲッソリしているところを見ると、大分お疲れのようだ。あの母娘は何か企んでいるようで嫌だが、アンジャの提案に乗ることにした。

読んで頂き、ありがとうございました。

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