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王様! リリィちゃんに質問ですよ!

「それじゃあ食べようか! いただきます!」


「いただきます!」


「……いただき……ます?」


シーナが倒れてしまった後、僕とマオの二人で昼食作りを頑張った。

尤も……頑張ったとは言っても、シーナが完成間近まで作っていてくれたため、味を整えて盛り付けただけだが……。


そのシーナは、料理を盛り付けている最中に目を覚ました。

目を覚ましてからのシーナは果実云々も言わなくなっていて、とりあえずは落ち着いた様子を見せている。チラリ、チラリとリリィさんの方―――と言うより胸―――に目を向けてはいるが……大丈夫だろう。


もにゅもにゅと、三つの咀嚼音だけが響く中……僕が考えることは、どうやって彼女から真実を聞き出すか……だ。

当然だが、リリィさんはどうして友好的なのですか? などと直接聞くのは馬鹿のすることだろう……良し!


「リリィさん? お味はどうですか?」


先ずは軽い話しから初めて、少しずつ確信に迫ろう。


「もにゅもにゅ……美味しい……あと……リリィで良い……言葉も普通で良い」


リリィで良いと、出会ってからずっと言い続けているけど……そんなにも呼んで欲しいんだろうか? ……うん? そうか! これだ!


「じゃあ……リリィと呼ばせてもらうよ?」

相手から何かを得たいのならば、先ずは自分から何かを与える……交渉の基本だ。これで少しは情報が引き出し易く…………。


「うん! ……リリィ!」


花が咲くとは、今のリリィのような時に使う言葉だろう……リリィは、ふわりと笑顔を見せてくれた。なまじ今まで表情に出さない子だったため、その破壊力は凄まじい……。


僕の良心がもう良いだろう? この子は絶対に良い子だ……と、訴えてくる。

しかし……それでも! 僕はしっかりと見定めなければいけない。


「えっと……リリィ? 食べながらで悪いけど、リリィに聞きたいことが有るんだけど……良いかな?」


良心を家族を守るため! と言う気持ちで押さえ込み、質問出来るように聞いてみる……。


「何? ……何でも……聞いて良い。私は……リリィは何でも答える!」


……痛い……心が痛い。

この子を疑う自分が嫌になる。

表情もシーナのようにニコニコでは無いが、ふわふわと言うような笑顔で、雰囲気に至っては嬉しさが溢れてます! と言わんばかりである。


……頑張れ……僕の精神!


「じゃ、じゃあ……どうしてリリィは、こんな山の中にいたんだ?」


「依頼……受けた」


「依頼……ってことは、リリィは冒険者?」


冒険者ならまずいな。ギルドについては全く知らないが、組織的なことは何となく分かる。ならばリリィには報告の義務が有るはず。

今の迷宮の戦力で、冒険者に来られるのは得策では無い。迷宮については、秘密にしておいてもらえるようにお願いしておかなければ……。


「違う……リチャードからの依頼」


「リチャード?」


「!!?」


個人? とりあえず、ギルドが関わっていないことが分かっただけでも良いな。……リチャードと言う名前が出た時に、シーナが反応したようだが知り合いか? 後で聞いてみるか。


「リチャードは……貴族」


「貴族からの依頼? 依頼内容は……やっぱり教えられないか?」


依頼なわけだから、やはり守秘義務とかが有るだろう。


「別に良い……依頼は……山の魔物の殲滅」



「山の魔物の……殲滅?」


「うん……でも山は広いから……フルトホルンと

ラントペットを繋ぐ……山道の周辺……だけ」


山道の周辺か……つまり、リリィが魔物を殲滅したからこそ、魔物が迷宮に来なくなったのか。……うん? それよりも……。


「リリィが依頼を受けたのは分かったけど、他に依頼を受けた人はいないのか? 山は広いから、リリィだけじゃないだろう?」


「…………いない」


聞いてはいけないことだったのか? リリィの表情が悲しんでいるように見える……表情以上に分かり易い雰囲気は、更に深い悲しみを感じさせる。


「私が……純潔のリリィ……だから」


…………うん? 決意を感じさせる表情と声色で言われたが……だから何なのだろうか?

純潔だと、一人で戦わないといけないんだろうか?


「リリィ? 良く分からないんだけど……純潔のリリィの何が駄目なんだ?」


「えっ? ……純潔のリリィは……敵味方問わず……殺す……狂戦士だから」


「……そうなのか?」


「……皆……言ってる」


「皆……じゃなくて、リリィに聞きたい。リリィは味方を殺しているのか?」


「そんなこと……しない」


「じゃあ……違うんだろう? なら問題無いじゃないか」


異名が有るぐらいだから、リリィの噂も流れているんだろう。

その噂が変に伝わって、純潔のリリィは狂戦士……などとなっているんだろうな。

だが……リリィが狂戦士と呼ばれていることはともかく、リリィだけしか依頼を受けていないと言うことは嬉しい情報だ。


リリィ以外に依頼を受けていない……つまり、リリィさえ黙っていたならば、迷宮の存在は知られずに済むだろう。


「…………」


「どうしたんだ?」


「あり……がとう」


礼を言われたが……何にだ?


「私が……純潔のリリィが……狂戦士じゃ無いって……」


あぁ……なるほど。この子は話せる相手がいなかったのか。

恐らく、仲良くしたいと思っても、狂戦士としての風評が強くて誰も近付いてくれなかったのだろう。

表情に出難いのも、その風評に拍車を掛けていたに違いない。無表情に戦場に……屍の傍にいるリリィを想像してみる……話したことの無い人間なら、絶対に狂戦士の印象を強めてしまうだろう。それほどまでに、知らない人間に対しては、風評と表情は主張してしまう。


だから……僕たちを助けてくれた時、礼を言う僕とシーナに嬉しそうに……でも恥ずかしそうにしていたんだろう。人からの感謝や好意に慣れていないんだ……この子は。




もう良いだろう。

この子――リリィは迷宮に無害な子だろう……これ以上質問を続けても、良い子……以外の印象は持てそうに無い。

友好的な理由を……聞いても、仲良くなりたいからと言うことだろう。

迷宮はまだ眠っているようだから、迷宮には後で教えよう。


「ご馳走様でした!」


「ご馳走様……でした?」


「ご馳走様でした……」


……リリィへの質問の最中から、シーナの様子が可笑しいな?


「シーナ? どうした?」


「えっ? あっ……えっと……大丈夫ですよ?」


大丈夫には見えない。何か有ったのか聞きたいが、シーナがこう言っている以上は聞いても無駄だろう。

なら……今はリリィへのお願いを優先しよう。


「リリィ……お願いが有るんだけど……聞いてくれないか?」


「もちろん……聞く」


「僕たちの住む迷宮のことは、誰にも話さないで欲しいんだ」


「……分かった……約束する」


「ありがとう」


大丈夫だとは思っていたけど、しっかりと約束してくれて良かった。


「……代わり……と言うわけじゃないけど……私もお願い……有る」


リリィから? 何だろうか? よっぽどのことじゃ無い限りは聞いてあげたいが……。


「もちろん良い……けど、僕たちに出来ることが前提だ。マオもシーナも良いよな?」


「はい! シーナスペシャルのおかわりでも良いですよ!」


「……!」


まだ固い気はするが、元に戻ったシーナと、律儀に僕の隣でじっとしていてくれたマオにも、確認を取る……二人とも頷いてくれた。


「……大丈夫。貴方たちにしか出来ない……こと」



「僕たちにしか出来ないこと……って、たかが知れてると思うけどなぁ」


「お兄さん! やっぱりシーナスペシャルですよ!」


「……!」


何だろうな? 出来そうならば頑張りたいけど……。


「私も……ここに……住まわせて欲しい……」




言われたお願いは……『今直ぐには絶対に叶えてはいけない』ものだった。

……どうしたものかな。







迷宮情報 21日目

全く変化無し  

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